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白とクロの計算式(3)

 後日


 ウィン…ウィン…


「ほぇ~~~っ こんなに小さいのが魔物をなぁ」

「どういう原理で動いとるんだ まったく見当もつかん」

「やっぱり2人にも分からないですか」

「武器・防具・刃物なら知らないことはないつもりだがな、鍛治士1本でやってきたオレたちにとっちゃ、この手のカラクリは専門外だ。 さっぱり分からん」

「それに小さすぎて魔法陣を刻むのが不可能だろ。

 その白くて四角いのもどんな構造したらこんなの作れるんだ…?」



 ロボットと白いキューブを交互に見て頭から煙を上げる師匠たち。

 鋳物と錬金術という関連性を見出してくれた彼らなら何か分かるかもと聞いたはいいものの、長い時間かけて出たのは常識的に考えて製造できるはずがないという事実だけ。


「ま、待てよ…?」

「どうしたカイデン」

「ボウズ、コイツの動力源をもっかい見せてくれ」

「電池ですか? いいですけど」


 言われるがままロボットから電池を取り外して渡すと、カイデンさんは電池を上から下から見つめて、数秒後にカッと目を見開いてガタガタと震え出す。


「ウソだろ…?」

「ど、どうしたよカイデン」

「間違いねぇ…こいつは魔晶石だ!」

「嘘だろ! 魔晶石ってあの魔晶石か!?」

「あの…話の流れからして、なんかすごい素材ですよね…」



 魔晶石というのは早い話が魔力の超絶高密度の結晶体で、魔力の特別濃い場所で長年かけて形成されるらしい。

 鍾乳石とかダイヤモンドみたいなことなのかな?



 通常、電池のような電源的役割を担うのは魔物から採れる魔石だ。

 魔物は人間と身体構造が違い、生命の維持にすら大量の魔力を必要とし、厳しい自然界を生き残ろうと思えば人間のように自然回復ではとても間に合わない。

 そこで体内に長い時間をかけて魔力を貯めるための器官を作る、それが魔石だ。


 魔石は電池のように魔力を貯めたり使ったり、杖の材料や魔法を放つための媒介に使用したりなど、ありとあらゆる用途に使うことができる。


 そして魔晶石は魔石からすれば狼と神狼(フェンリル)くらいの上位互換で、永久機関に匹敵するとも言われているんだとか。


「あれ? でも電池切れしたって聞いたような…」

「そりゃこんな小さいのが空飛びながら魔物をブチ抜く火力と百発百中の正確性を出そうと思ったら魔石じゃ足りんだろうなぁ!」

「魔力切れ寸前のお前から出たんだからそれでも長く保った方だ、魔晶石様に感謝しろよっ!」


 そう言ってそれぞれチョップとデコピンを僕にお見舞いする。


「ゴフッ イタッ」


 ゴッホン…

「これはまずいことを知っちまったなぁ…」

「あぁ。 まさか原理は分からんままだが、魔晶石が人の手で作れてしまうとなると…」

「やっぱり狙われちゃいます…?」

「「 狙われちゃうな 」」

「母さんに報告してこないと!!」



 急いで家へ引き返すべく、工房の外へ向けて駆け出したその時だった。



「クロス!」


 今の声はアルフ兄の?


 ゼェ…ハァ…

「クロス! クロスはいる!?」

「アルフ兄、どうしたんですか?」

「たいへんだ、魔物がでた!

 しかもかなり大量にいるらしい」


「「「 っ! 」」」


「まさかこないだの撃ち漏らしか」

「あり得るな、この村は馬車で2時間の距離だ。

 ハグレがこっちに流れてきても全然不思議じゃねぇ」


「母さんはなんと?」

「今日は月末だからね、誰の声も聞こえてないんだ」


 あちゃぁ…

「月末の決算処理でしたっけ 母さんからすればそこらの魔物より優先事項、きっとテコでも動きませんね」

「領主様がいるじゃねぇか」

「父さんは森の調査だと言って朝から逃げて行きました。 不機嫌な母さんにビビって。

 近くにはいると思うんですが、どこに行ったかまでは…」

「おいおい、それって…」

「はい…方法が1つしか無くなりました」



 僕を含め、全員の視線が一箇所に集まる。

 謎の人形から我が家のゴキブリ処刑人へとランクアップしたばかりの小さなロボット

 話には聞いたけれど、本当に強いのかな…?











「畑に近付けるな!」

「苗は絶対に守れ!」


「くそっ あっち行け!」

「やめろ来るなぁ!」




 向かった先は村の畑。

 なにやら村の人たちがナタや斧、ナイフを持って畑の内外でたくさんいる何かを追い回しているのが分かる。




「な、なんだありゃあ!」

「あの形…イナゴか!」


 イナゴって佃煮のあれ? 作物を食い荒らすっていうあの?

 にしてもおかしいでしょ! だって…


「イナゴってあんなに大きいものでしたっけ?」

「さぁ…流石に見たことないよ」


 イナゴって大きくても4センチくらいだったはず。

 どう見てもあのイナゴ、20センチはあるぞ!


「オレ達も加勢するぞ。」

「おう!」


 大きめのナイフを構え、村人達に混ざっていくドワーフ兄弟。






「クロス、頼むよ」

「あっ はい!」


 ロボットに魔晶石電池を装填し、パーにした手の上に置く。


「おねがい! 村のみんなと畑を守って!」


 ウィン…ウィン…

 タタタッ ピョインッ!


 僕の手の上を駆け下り、足から炎を噴いて飛んでいく白い戦士。


 ピュンッ


「なんだ!? イナゴが弾けた!?」


 ピュンッ


「イテテテテテ! どわっ!」


 ピュンッ


「クッソ! 大人しくしやがれ! わぁっ!?」


 ピュンッ


「ヒィィィィっ お助けぇ! …へ?」


 ピュンッ


「コイツめっ! 作物の仇ぃ…っていない!? なんで?」



 ピュンッピュンッピュンッ

 ピュンッピュンッピュンッ

 ピュンッピュンッピュンッ

 ピュンッピュンッピュンッ

 ピュンッピュンッピュンッ

 ピュンッピュンッピュンッ



 空を駆け身を翻し、数多無数とも言える標的をただ正確無比に、ただ冷酷無慈悲に殲滅していく。



「僕たちも手伝いましょう!」

「待った。 それは賛成できない」

「え、でも…」

「あれ」



 アルフ兄の指差しに促されてロボットの手が行き届いていない方の畑に注目する。



 ドガッ!

「ガハッ」


 ガブっ

「イデデデデデデデデデデ!」


 虫にだって口はあるし、脚力は体長の数十倍のジャンプ力を誇る。

 その虫がそれだけ大きな魔物と化せば、噛みつく力は増し、人間1人くらい軽々蹴飛ばせるようになるのだ。



「狼煙をあげて来たから父さんはすぐに戻ってくる。

 討伐は父さんとクロスのロボットに任せて、ボク達で村の人たちを畑から避難させて、戦いやすくしながら手当てに回った方がいいと思う。」

「そうですね やりましょう」



 村の大人が総出で動いており、そこにロボットが加勢したことで効率は上がっているが、怪我人はもちろん畑の内外を逃げ回っていることで被害は出続けている。


 まだ人にもロボットにも見つかっていない巨大イナゴは今のうちにと言わんばかりに餌を食い荒らし、他の畑へとその足を伸ばし続けている。

 全部倒すまでにこの村の畑が残っているかどうか…



「大丈夫ですか」

「クロスエイド坊ちゃん…面目ねぇ、足をかじられただけです」

「これ、飲んでください。」

「ありがとさんです。 それじゃ早速。」


 回復薬を口にし、苦痛に歪んだ顔が穏やかになる。


「傷も痛みも綺麗さっぱり無くなっちった…」

「よかったです。」

「坊ちゃん、さっきから空中からイナゴに魔法を放っているあの小さいのはなんですか?

 妖精にしては姿がくっきり見えすぎているような…」

「あ~、あれは妖精では無いけど僕の頼れる相棒です。」



 白い小さなロボットは顔色ひとつ変えることなく淡々と作業を進める。


 時折、イナゴに襲われるがそんなもの予測済みと言わんばかりに銃を持っていない方の手で掴んで、ゼロ距離でズドン!

 炭と化した亡骸は、いらね!っと言いたげにポイっ



「みんな! ここはあのチビ介に任せて畑から出るんだ!」

「オレらが居たら足手纏いになっちまう! 急げ!」


 師匠達も僕たちの意図を察して、避難を手伝ってくれている。

 ドワーフ特有のよく通る低音によって、わらわらと村の人たちが畑から離れていく。


 その間も人間に襲い掛かろうとする個体は上空からの一撃によって黒コゲにされ、ついに畑の中にはイナゴと上空にいるロボットだけとなった。


 キィーーン!

『…~~ーー~~…』

「!!」


 頭の中の声がまた新しいことを教えてくれる。


 細かいことはどうだっていい、とにかくやらないと!


「 必殺コマンド発動! 無限光弾幕(インフィニティ・レイ) 」


 命令を受けたロボットの目が金色に光り、天高く銃を掲げてエネルギーを溜める。


「なんだあれ…」

「あれが小僧の作ったカラクリの全力だってのか…!」


 銃身の先にビー玉大→拳大→スイカ大…と魔力の球を生成し、次第にバランスボール大になるとロボットは引き金を引き、後ろに下がる。


 金色の魔力球から無数の光の筋が放たれ、次の瞬間には畑全体から血飛沫があがる。


 その勢いは止まることはなく、畑の外に逃げようとする個体や、畑からは出たがある程度までの距離の個体を殲滅し尽くしていく。


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