奇跡の練成、手のひらサイズの希望(2)
またまた戻って子供たちは…
ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…
顔を青くし、肩で息をするソラ。
「ソラ姉、顔色が悪いですけど大丈夫ですか」
「だ、だいじょーぶ。 ちょっと疲れただけで…」
その小さな手は震え、そして力なくしゃがみ込んでしまう。
「ソラ姉!」
「どうしたんだよ!」
「なんか…急に…力が…」
「魔力が切れたんですね、いつもの何倍も魔法を使ってるから無理もないですよ。」
作業を始めて約1時間ぶっ通し。
小学生の魔力量ではここまでが限界か…
「ソラ姉は少し休んでください。 ここからは僕とキッド兄でなんとかしますから」
魔力用の回復薬とかがあればどうにかなるかもしれないけど、村に魔法使いが少な過ぎるせいかレシピを聞いた事がない。
「どうするんだよ、オレの魔法じゃあ…」
キッド兄の雷魔法を使うことで電気エネルギーから熱エネルギーに変換して熱くすることはできるけど、冷やすことはできない。
「ダァ~もうっ! 冷やさずに持ってけばいいんじゃね?」
「飲む元気がある人ならそれでもいいでしょうけど、意識の無い人にはただの熱湯です。
治療するどころか全身大火傷して命を縮めてしまうことになってしまいます。」
「うっ…そうだ! ソラ姉みたく氷魔法を使える人を探してくれば!」
「信用に足る人物がいるならともかく、僕の掛け算式の付与魔法が外部に漏れるのは避けたいんです。」
「そ、そうだった」
「ソラ姉が倒れた今…氷魔法以外に何か方法は…」
冷蔵庫やエアコンみたいに冷やす方法はあるにはあるんだろうけど、どうやってやるのか、何が必要なのかも分からない
待てよ?
レンガは粘土から水を『分離』した物
回復薬は薬草と水を『混合』した物
それに対して水はお湯になろうと氷になろうとH2Oで同じ物。
違いは水が『熱』をどれだけ持っているかだけ。
「そうか!」
もし、錬金術で『熱』の出し入れができるなら…いや
「やるしかない…!」
「やるって、何をだよ!?」
熱々の鍋の前に戻り、手をかざす。
「錬成!」
鍋を中心に魔法陣が現れ、プシューーっと湯気が工房中を包み込む。
「どわっ!?」
真っ白な湯気が視界から抜けていく。
熱々で触ることもできなかった鍋の中を慎重に覗くと…
カキカキパッキーン!
そこにあったのは回復薬と同じ色の氷塊だった。
「「 あ… 」」
「「 冷えすぎたぁーー! 」」
冷やす時とは違い、なんとか解氷することはできた。
ふーん…
「なるほど、『熱』を分離しちゃうってずいぶんと思いきったことを思いついたね」
「いやぁ~、やった本人が1番驚いてます…」
「錬金術で氷魔法の代用ができたのはすごいと思うけど、クロスはもう少し加減を覚えたほうが良さそうだね」
「ぜ、善処します…」
「そうは言うけどアルフ兄、クロスはずっと加減してるわ」
「そうだぜ、付与魔法の加減をだけどな」
付与の練習を陰ながらやっている中で、通常のたし算式付与魔法よりも、かけ算式で付与をした時の方が魔力の消費が少なくて、付与に加減がしやすいことがわかった。
他にも便利なところがいくつかあるのと、回復薬は正しく手順を踏めば魔法なんて使えなくても作成でき、錬金術は補助的にしか使っていない。
だからソラ姉より魔力に余裕があるという至って単純なカラクリだ。
「ただし、気を抜くととんでもないのができるんだけれどねっ」
そう言うソラ姉に促されてアルフ兄が机の端へ追いやられた木箱に目を向ける。
その中にも回復薬が入っており、その付与加減はというと
[ 回復薬 (付与:効率上昇×5) ]
「ちょっとくしゃみした拍子に出ちゃったみたい」
「分かるぜぇクロス。 オレもトイレに行く夢を見た後は布団が大惨事になってるからな」
「あぅぅ…」
「うん、付与を鼻水とかおねしょと一緒にするのはやめようか」
ところ変わってエレンこと、騎士団長エレオノーラが守る北の陣営も、ジリジリと魔物に消耗を迫られながらもその陣を断固守り抜いていた。
「もうじき交代の時間だ! お前たちは一度下がって次の者たちに代われ!」
「そんなこと言われても、こんの! どうやって下がれってんだ!」
「こうするんだ!」
エレオノーラの魔力の高まりに呼応してメラメラと燃え盛る剣を高く天に掲げ、限界まで力を溜める。
「おいおい嘘だろ!?」
「力業すぎるって!」
「みんな伏せろぉ!」
「爆炎斬!」
シルバスと対をなす彼女のふたつ名は『紅蓮』。
真面目な性格と裏腹に、燃え盛る闘志と時折のぞかせる戦闘狂なパワーisパワーの闘い方はどんなピンチも火力押しで焼き斬ってしまわねば気が済まないのだ。
かつて肩を並べて競い合っていた男は『銀月』
当時の性格こそ真逆で、こっちの方が戦闘狂に思えたが実際には『月弧』というパリィ技を駆使し、小回りが効く戦闘スタイルで戦況の変化に強かったとされている。
「よし…みんな下がれ!」
ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…
(さすがに多すぎる…このままでは…)
「相変わらず無茶苦茶な戦い方してるな」
「シルバス!」
妻であるフローラに会ったことから薄々分かってはいたものの、実際に会うのとは話は別。
懐かしい声と顔に心の鎧が一気に崩れ落ちる。
「今さら何をしにきた、ここは騎士ではないお前のいるべき場所では…」
「ここは村から1番近い街だ、買い物くらいしに来るしこういう事態なら手を貸すくらいはする。
それよりほら、休憩無しでぶっ通しなんだろ」
「他に必要な者達がいるはずだ、私はまだ要らん。」
差し出された回復薬に見向きもしない。
が、それを見て相変わらずだとシルバスは鼻で笑う。
「悪いがお前が限界かそうでないかくらい、見てれば分かる。
それともアレか?」
「ん?」
ニタァ…!
「目の前で先を越されていくのを指を咥えて見ていたいのかなぁ?」
チッ!
「そんな訳があるか! さっさと寄越せ!」
キュポンッ グビッグビッグビッ…! プハァっ!
「この回復薬…そこらのソレじゃないな」
「さぁ、どうだかな」
「お前には問い詰めることがたくさんあるが…それは後だ。
まずはこの街を守り抜く! 手を貸せシルバス!」
「しょーがねぇなぁ、死ぬなよ!」




