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マッサージでの常連さんから沢山の魚を貰った。

食堂で肉料理を出す事が多かったので、何気なく魚が食べたいと言ったのを覚えていてくれたようで沢山いただいた。

特にアゥリス。

卸業者並みである。


さてどうしたものか。

食堂で売るなら材料費はタダになるので儲けは大きいのだが、せっかくの好意をお金にするのは忍びない。

忍びないので有難く頂こう。

ただ1人で食べきるには量が多い.....か。

ふむ、今後のことを考えて御裾分けという名の賄賂として配る選択もある。

引き受ける子供が粗相をした際のお目こぼしを期待しての投資。

アリだな。事前の根回しは大事。


そうと決まれば料理開始。

まずは頂いた魚を全部捌いていく。

全体的に大きな魚が中心で手間ではあるが、何時ぞやのウナギワニに比べれば楽なものだ。

背身、腹身、アラと部位ごとに切り分ける。

まずは味見。軽く焼いて一口食べる。

うむ美味い。青魚のような癖はあるが何をしても美味しくなるいい魚だ。


味見の確認が終わったので、まずは旨味が強くクセが少ない背身を使っていこう。

一口大の薄切りにしてザルへと移す。

そして軽く塩を振り水分が出るまで待つ。

身の表面に水分が浮き出てきたら用意していた酢で洗い大きめの壺へ入れていく。

ある程度入ったら味付けした酢を入れて酢漬けにしていく。

こうすれば3日は余裕で保存が効くし漬かり具合のグラデーションも楽しめる。

今日から少しづつ食べ進めても3日は余裕で持つだろうと思っていた。

しかし結果として2日には全部無くなった。

予想よりも減りが早すぎる。

まさかとは思い、空の壺を置いて見張っていると盗み食いをしようとした連中を現行犯で捕まえた。

情けはかけない。ボスへと引き渡す。

食堂に置いておいたのがダメだったか。でも部屋に置くと匂いがなぁ。かといって収納袋に入れると味が馴染まないし、難しいところである。


酢漬けの次は煮付けを作る。

まずは脂抜きをするための湯を沸かす。

その間に煮付け用の調味液を作っておく。

甘みの強い酒を煮詰め、獣人ではポピュラーなジャッタという発酵調味料を入れる。

まぁ、醤油と魚醤を合わせたようなものだ。これを合わせて調味液の完成。


そして丁度湯が沸けた。

これに酢漬けにしなかった背身と腹身の一部をいれて脂抜きをする。

これをすることで生臭さと保存が効きやすくなる。

脂抜きをした魚に先程作った調味液の中に入れて、臭み消しとして香味野菜も一緒に入れる。

こちらで言うところのネギ、生姜、山椒の実である。

一度沸して、火を弱めてじっくり煮込んでいく。

堪らない香りが漂ってくる。

その香りに釣られてチラホラと顔を出す輩が現れる。

初めは特に気にはしなかったが、次の仕込みでその場を離れたのが不味かった。

戻ってくると鍋の蓋が開けられており、慌てて鍋を見ると香味野菜だけがなくなっていた........狙いは魚ではなかったようではあるが、それにしてもわざわざ香味野菜だけを取っていくとは相当の変わりものである。

まぁ気持ちは分かるけどね。良いよね。


だからと言って許可なく持っていくのは許せない。

取っ捕まえてボスへと突き出してやろうと思ったが、その中にボスもいた。

それなら.........仕方ないか。

完成まで待てとは伝えた。

それにしても反省の弁を述べるならまだしも、美味しかったから別途で欲しいと追加要求してくるは......まぁ、多少は恩は売れたと思おう。それに美味しいと言われて悪い気はしない。

だからというわけではないが香味野菜を追加でたっぷりと入れておく。


そんな騒動はあったが何とか煮付けは完成。

このまま翌日あたりまで待てば味が沁みて最高の出来になるだろう。

そうなるはずだったが魚が減っている。

とうとう魚に手を出す馬鹿が現れた。

確かに浅めに沁みた煮付けも美味しいというのも分かるがダメだ。

容認できない。

あにさん、あねさんを招集して協力を要請する。

そしてスピード捕縛。

軽い折檻と説教をしてボスへと引き渡した。

美味しかった、という味の感想を言って開き直る様には呆れてしまった。

それを聞いて先程つまみ食いしたボスまで欲しがっている始末である。

せめて反省した振りぐらいはしてくれないか。


予定よりもたくさん作ることにした。


少し煮切りの調味液が余ったので、犯人探しや見張りに協力してもらったあにさん、あねさん達にお礼を作ることにする。

全員お酒好きらしいのでそれにあうものにしよう。


アラを使う。

鉄板の火を灯して充分に熱して油を引いて、軽く粉をまぶしたアラを焼いていく。

程よく火が通れば調味液を振りかけ、鉄鍋をアラに押し付けて一気にプレス。

力を込めてそのまま焼いていけば骨が薄いせんべいのようになる。

骨せんべいである。

試しに一口食べる。

パリパリと予想に反しての軽い食感と程よい塩加減。

焦げたジャッタの香りが良い仕事をしている。

想像よりもいい出来だったので自分用に確保しつつ、お礼として配る。

酒が無限に進むと大変喜んでくれた。


さてメインだ。

本来は賄賂として配る予定だったメインなのだが、摘まみ食いが多いから配ったと言ってもいいのではないだろうか........まぁ、作るは作るんだけどね。


グゥと腹が鳴る。

結構長くやっていたのでお腹が空いた。

今すぐ食べたい。

多少雑多に作るがこんなにいい魚だ。適当に作っても最高になる。

残った魚の身に酒、ジャッタ、みじん切りにした香味野菜で下味をつけて粉を入れる。

多少粘りが出る位に混ぜ合わせたら下準備完了。

熱した油へ泳がすように滑り込ませて揚げていく。

ジュワっと食欲の上がる音が食欲への期待度が加速度的に上昇させる。

だけど我慢。

ここからは見極めが大事。長年の経験で火の通りを完璧に見極める。


ここだ。


素早く引き上げて油を切る。

竜田揚げの完成である。

軽く一口。

ザクリとした歯触り、身のフワリとした食感。

空腹に任せたとは思えないほど完璧である。

流石である。最高である。天才だと自惚れてもいいかもしれない。

無限に食べれそうである。

自分で褒る。

気が付けば口を開けて待っているわらび餅にも分け与える。

今回の盗み食い騒動で頑張ってくれた影の功労者である。

食べる資格は充分にあるだろう。

2人で食べ進める。

美味い。

やっぱり美味い。

食べ進めると一つの欲が沸き上がる。


ただ。

あえて一つ。

あえて、一つ文句の様なモノを言わせてもらえるなら。



ご飯が欲しい。



それだけが惜しい。

そんな事を考えながら食べているとワラワラと呼んでもいないのに人が集まってくる。

あげないぞ。

これはもらい物だ。

追い払おうとしてそれが本末転倒をしている事にすぐに気が付いた。

渋々ではあるが、摘まみ食いをしなかった人を優先的に賄賂を贈る。

子供の粗相はどうか寛容に、と伝えての御裾分け。


今後もご迷惑おかけしますけども、よろしくお願いいたします。


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