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幕間 切っ掛け

◇◆◇魔王連合 『孤毒』魔王の城


今回の定例会議は『孤毒』魔王の城。

廊下に少し調子を外したようなハイヒールの音が響く。

そして音が扉の前で止まると。扉が盛大に開け放たれた。


「さぁ! 始めるわよ! おっとと」


履きなれていない高いハイヒールを履いていたせいか、扉を開けた勢いに負けてよろめいてしまう。

しかし気合と根性と体幹の力を使って体勢を整え、何食わぬ顔をする。


「ッカ!! 遅いんだよ。相も変わらず」

「いつもの予定時刻には間に合ってるじゃない! 頭まで『狂乱』になったの?」

「ッハ!! 時間じゃねぇよ。時期の話しだ。一辺にややこしいことが起こってんだろうが、情勢が変わってんだよ。緊急で開催しろって何度も提案して使者まで出しただろうが。いつもどおりにやってんじゃねぇって言ってんだよ」

「ごめん!!!」

「ッカ!! 素直か。さっさと始めろ」


高いハイヒールを鳴らし、中央の椅子にドカリと座る。


「では始める前にー!! 点呼ォー!! 『狂乱』」

「ッカ!! あほくせ」


そう言い手を挙げる。


「次! 『蝕淫』!!」

「はぁーい」


元気よく返事をして手を挙げる。

その時に色々なものが大きく揺れ、見えてはいけないものが見えそうになる。


「揺らすなぁ!! ふざけた服を着るな! バーカ!」

「はぁーい」

「ッチ。次! 『蘇生』」

「........」

「『蘇生』!!」

「........」


『蘇生』魔王は座りながら死んでいた。

とても穏やかな表情であった。

死因は一目瞭然。胸に刺さった短槍だ。

この短槍は『泡爆』魔王から交渉により貸し出されているオリジナルの魔王殺しである。

それを見た『孤毒』が大きな溜息をついて『蘇生』へと近づく。

そして、『蘇生』魔王の前に立つとハイヒールを脱いで机の上に飛び乗った。


「おらぁ!!!」


乱暴に短槍を引き抜く。

そして渾身の力で『蘇生』魔王の顔面へ蹴りを炸裂させた。

首が大きく捻じれて伸びきり、反動で顔が戻ったタイミングで髪を乱暴に掴んで耳元で叫ぶ。


「『蘇生』!!!」


その声で気が付いたかのように寝ぼけた返事をする。


「.......んぁ。あぁ。はい」

「よし!!!」


『蘇生』の返事を確認して槍を放り投げて床へ降りる。

そして脱いだハイヒールを履きなおして元の席へ戻る。

しかし履きなれていないせいで盛大に足を捻り、少し涙目になりながらも頑張って歩いて席へと戻った。


「『孤毒』は強い子ー泣かない子ー」

「うっさい!! 泣いてないわ! バカなこと言ってるとあんたのおっぱい捥ぎ取るわよ」

「やーん」


胸を押さえて、楽しそうに身をよじる。


「何でそんなに上機嫌なのよ!」


異常なほど上機嫌である。人属領で相当楽しんだことが伺える。


「まぁいいわ。んで、誰もが気付いてると思うけど『凝固』はどこ? とうとうボケて招集を忘れたのかしら」

「現状は生死不明だけど多分死んでるわよー」

「.....どういうこと?」

「ッハ!! そのまんまだ。裏取りはまだだが見るも無残だ」

「そう、分かった! 詳しくは後で聞くとして、ひとまずは全員そろってるのは確認した!! 定例会議を開始する!! 言いたい事がある人や報告がある人は適当に言う事!! 『狂乱』仕切りなさい!」


ビシッと指をさして指名する。


「ッカ!! いつも通りじゃねぇか。まぁ、手っ取り早くこっちが掴んでる情報を話す。補足する情報があればその都度挙手して言え」


・・・

・・


会議は雑談が多く脱線しがちではあったが有益な情報も含まれており、相対的には有意義であった。


「主催者の私として気になるのは『凝固』魔王についてと、『静謐』魔王の躍進、湖沼の攻略と解放、あとは魔王を討伐した人間の存在が気になるぐらいだわね」

「えー、私のペットが半分以上いなくなった話とかはー?」

「どうせアンタが摘まみ食いしたんでしょう」

「ぼくが今まで何してたとかはー?」

「死んでた」

「「せいかーい」」


イェーイとハイタッチをする。

『孤毒』魔王がそれを見て、呆れたような顔をしながら鼻で笑う。


「ねぇー『蘇生』。前に言ってた気になる人間についてだけど私に譲ってくれない?」

「えー」

「この短槍があれば死ぬのに不自由はないでしょ?」

「んー」

「それともやりすぎて自分では死ねなくなってきてる? さっき死んでた時も『狂乱』に手伝ってもらってたもんねー」

「んー」

「もしそうなら私の所の選りすぐりのペットを幾つか貸し出すわ。だから、ね?」


思いのほか好条件で少し悩む。


「お気に入り?」

「最高の」

「じゃあそのペットで僕が死ねなくなるまでと言う事と........『泡爆』の交渉で何を得たのか教えてくれたらいいかな。僕のがバレてるのフェアじゃない」

「あー、そうきちゃうかー.......」


艶めかしいしぐさで考える。


「いいわよ!」

「いいんだ」

「貰ったのは情報よ。人探しのね。ずっと前から探してたの。その情報」


意外な返答に雑談として聞き流していた魔王達が反応する。


「誰か探してるの?」

「ッハ!! 言えば協力してやるぞ」

「ふふっ。困ったらお願いするわね」

「意外といえば意外だったね。まぁ、教えてくれたし約束だから良いよ。譲る」

「ん。みんなーありがと」


艶のある流し目で魔王達に感謝を述べる。

魔王達は一斉に目を逸らした。


「あ! はいはーい。『凝固』魔王について裏が取れたわよー。私のペットが頑張ったみたい!」


胸元から何かを取り出しポイっと中央へ放り投げる。

すると映像が映し出された。

城と魔人がサイコロ状に切り刻まれて山になってる。見るも無残で凄惨な光景である。

その山の頂上で見覚えのある姿が映し出された。


「当のご本人は魔石ごと権能を抜かれてるみたいだから死んでるで間違いないわね。残念ねぇ」

「うわぁ。えっぐぅ。ん? なんかこれ前にも見た気がする」

「ッカ!! あったな。多分こんなこと出来るのはアイツらだけだろう」

「.......狙い何だろうね。『凝固』から話が無かったって事は事前の忠告や警告なしで襲われたんだろうし。穏健だからよっぽどのことはしてないだろうし。何か急遽ほしいモノでもあったのかな」

「ッハ!! だとするなら『泡爆』魔王から貰ってた勇者の一部が最有力候補だろうな。それ以外は見当がつかねぇ」

「んー。確かに。休戦状態でも『泡爆』は何かしらの厄種を持ってくるわね。まぁ『凝固』については大体分かったわ。一応『泡爆』関係で手に入れた物には気を付ける方向で! 殺されても最低限の情報は残しておきなさい!」 


一同は軽い返事で同意する。

『孤毒』魔王が次の話題を出そうとするが、何の話題だったか忘れてしまい。気まずい沈黙が流れる。


「『狂乱』他に挙げた話題についての見識答えて!」

「ッハ!! 個人的な意見としてだが『静謐』魔王と魔王を討伐した人間については後回しでいい。『静謐』の方は大暴れしてたが、最近は大人しくなっている。まぁ、あれ以上やれば周りの魔王が一斉に叩き出すから、そうならねぇようにギリギリを見極めているあたり大馬鹿じゃねぇな。まぁ、気に入らねぇなら叩いても良いレベルだ。好きにしたらいい。次に人間が魔王討伐した事についてだが.........知らね。そもそも討伐された奴は誰だ? 幕下も幕下だろう。相性の問題もあるだろうし、距離も遠い。気になる奴がいたら対処しろ。俺はしねぇ」

「やっぱりね! 私もそう思ってた!!」


そう思ってなさそうな反応に『狂乱』は苦笑する。


「ッカ!! 同意見で嬉しいよ。それよりも一番厄介なのが湖沼の攻略と解放だ。人属領ではほぼ不可能だと思われてた湖沼の攻略。それどころか解放までされている。アイツらが仕掛けた撒き餌だとしてもやりすぎだ。アイツらでも対処できないナニかが起こってると思ってる」


今までにない真剣な表情で語る。

その件にいかに本気であるかが伺える。


「.......どうする? お世話になってるし人属領へ侵攻侵略するなら手を貸すよ。僕一人だけだけど」

「はぁーい。行くなら私も同行するー」

「人属領には気になる事もあるし、現地で自由行動取って良いなら私も行くわよ」

「ッカ!! ピクニックか。まぁ、礼は言っとくよ。ありがとうよ。ただ、今回の狙いは人属領じゃねぇ。ここでしかできない手を打たせてもらう」

「何するのよ」

「ッハ!! せっかく(クサビ)(カナメ)もないんだ。元ある形へ切り取らせてもらう」


◇◆◇アベル


見渡す限りの地平線。

そこには一切のものが無い。

ただひたすらに果てなく空と地が広がっており、地面は切り取った石材のように滑らかで整地されたかのような場所。


銷魂の聖域


そこに一際目立って荒れている場所があった。

何かが争った場所である事がすぐにわかる。

そこに2人の男女が立っていた。

それはアベルとモーラルだった。


「ここだ! クソがここだったんだ。間に合わなかった!」

「だから休憩は小まめに取ろうって言ったのに」


何よりも警戒していた。

微かな異常にでも気が付けるように気を張っていたというのに、気が付けば眠っており眠っている間に終わっていた。モーラルよって起されるまで気が付かなかった。

確かに睡眠時間は短かったが、よりによってこんなところで限界が来るとは。


「クッソがぁ!!!!」


感情をあらわにし、身に着けていた魔道具を全て起動させて全力で地面を殴った。


「物に当たるのはよくない」

「当たる!! 見ろ!!」


促され、殴った地面を見る。

地面は一目見て分かるほどにへこんでひび割れがおきている。


「すごいね」

「比較して見てみろ!! これを見比べて同じことが言えるのか!!」


荒れた様と見比べるなら一目瞭然ではあるが、これが異常なのである。

一体何をどうすればこうなるのか。


「それでも凄いよ。傷をつけるだけでも充分すごい」

「そんなわけないだろうが!! 何が足りない。どうすればいい? 知れば知るほど距離が遠くなっていく。もっと別種の切っ掛けが」


ブツブツと呟き、辺りの情報収集へとシフトしていく。

激情ではあるが今できる事をしようと切り替えられるのは彼の強みである。


ただ.......


男の背中を見る目がスッと細くなる。


今回はダメ。あれに関して触れてはいけない。

争っていたのは理外の者。

ここへ現れる前に感知できたからこそ彼を眠らせる事が出来た。

そして逆探知されないようにこちらの一切の探知を切断して事の顛末が終わるまで伏して待った。

どれ程経っただろうか。

終わりを告げるような大きな音が耳に届いた。

探知スキルを少しづつ使い何の気配もなく安全だと確信を得てから彼を起こした。


「破片も回収しておくか。この後の事を考えると」


破片の回収をこちらも手伝う。

しかし予想外だったのこの荒れた惨状だ。

理外の者たちのことだ争っていた痕跡すら残さず消し去ったモノだと思っていたのだが。


予定外。予想外。そう言った事が起きたのだろう。

そしてそれに対して対処しきれていないと言う事は余程の事が起きている。

嫌な感じだ。早めにここから立ち去りたい。


「調べるにしても一度戻った方が良いかも」

「そうだな。急いできたから何も持ってきていない。必要な機材を魔王城から持ってくるか」

「......凄いことしてるんだからもう少し嬉しそうにすればいいのに」

「何の話だ?」


聖域を見張るため彼は魔王を討伐した。

単独での魔王討伐。

相手が末席での弱い魔王ではあり相性が良かったと言えども魔王だ。

人属領であれば賞賛と栄光は望むがままだろう。

それなのに全く嬉しそうではない。


「魔王を倒せたんだから胸を張っていいと思うよ」


言っておいてアレだがあなたは満足はしないのだろう。

あなたがそれが本当に望むものではないから。

そして望んでいるのはそんな些細な事ではなから。


「くだらん。それで目的が果たせるならいくらでも胸を張るさ。それでアイツの敗北に塗れた顔と悲鳴が聞けるならな!!」


歯を食いしばり笑っているかのような憤怒の顔をする。

いつもこうだ。

本来であるなら彼は努めて反応が淡白なのだ。

魔道具を作っている時も魔王を倒した時も、反応は非常に淡白だった。

ここまで感情を剝き出しにするのは何時だって、とある人物の事だけ。


「.......機材を取りに行くぞ」

「了解」


でも、なんだかんだと言って私に対しても感情をぶつけてくれるのは喜ぶべきだろう。

そんな嬉しさと、この場から離れる喜びで見落としてしまっていた。

勘づかれないように感知系のスキルを使わなかったのも痛手だっただろう。


「ん? なんだこれは?」


大きなひび割れに紛れていたもの。

細かな石と色が保護色となり遠目では気が付けなかった。


アベルが拾い取ったそれは黒い塊だった。

小さな通信機のように見えた。そしてそれは何か刃物ような傷痕が付けられていた。



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