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入学式 前

「これは一体どういうおつもりですか!?学園長!!」


朝の学園長室に鳴り響く凛とした透き通った声。腰まで届く光沢のある綺麗な黒髪。スラリとした体型はモデルでも通用しそうである。蒼真学園の制服に身を包み、右腕には『会長』と書かれた腕章を着けていた。


蒼真学園生徒会会長――夜桜神無。


神無はこの蒼真学園の学園長である津九宮七夕に一人の男子生徒のプロフィールを見せながら、


「何故、心装武装を発動出来ない男子生徒の入学を認めたのですか!!」


神無の後ろには神無よりも体型の良い女子生徒と、笑顔を絶やさない男子生徒の二人が立っていた。


「これは私も神無……いえ、夜桜会長と同意見です。こんな異例事態…バレたら『局』の方が黙ってません」


神無に続いて口を出したのは後ろの女子生徒であった。セミロングの黒髪を後に束ねており、神無が着ている制服より、スカートが長く右腕には『風紀』と書かれた腕章を着けていた。


風紀委員会委員長――伊勢塚真琴。


「そうですね。これは少し学園長と言えども…遊び過ぎでは?」


次に口を開けたのはニコニコと微笑んでいる男子生徒であった。身長は少し低めで、茶髪に眼鏡をかけている。同じく、この男子生徒も『風紀』と書かれた腕章を着けていた。


風紀委員会副委員長――千ヶ崎幸汰。


彼ら三人の言葉を聞き、津九宮七夕は男子生徒のプロフィールを見ながらクスリと笑う。

紅茶を飲みながら町が一望出来る窓に目をやる。


黒の可愛らしいドレスを着こなしている姿は最早、西洋人形を思わせる。髪型は左右で括っているので所謂ツインテールというやつだ。年齢身長共に12歳ほどにしか見えない彼女だが、立派な大人である。


蒼真学園学園長――津九宮七夕。


実力、魔力、心装武装共に最高クラスの力をもっており、日本の現最高戦力『十二心将』の一員でもあった人物だ。

そんな人物が何故、能力も何もない少年を受け入れたのか神無達には分からなかった。


「……理由…ですか?」


七夕は笑いながら神無達三人を見る。


「彼を入学させた理由は三つほどあります」


窓を開けて外の空気を取り込む。


「まず一つ目は私の親友に頼まれたからです。この子を強くしてほしい…と」


「…親友ですか…?」


神無は不審に思いつつも七夕の話に耳を傾ける。


「はい。『十二心将』の第四席を連なる人物です」


その言葉にこの場にいた全員が驚いた。日本の最高戦力…しかもその四席からのお願い、神無達は改めて少年のプロフィールを見る…すると、


「……水無月……」


少年の名字は水無月。そして十二心将の第四席の人物の名字も…、


「…水無月翠蓮…あの『斉天大聖』との関係者ですか?」


「ええ。家族だそうです」


七夕が放った言葉は先程の驚きとは比べ物にはならなかった。


斉天大聖――水無月翠蓮。


その昔、心装武装を使わず魔力を込めた拳や蹴りだけで幻獣を薙ぎ払っていた事から『武神』と呼ばれていたのだが、彼女の心装武装を使った戦い方からさらに呼ばれ方が変わった。

『斉天大聖』。

武を極め、さらにある形状の心装武装からそう呼ばれた。伸縮自在の金色の棒。

『金天如意棒』。

繊細かつ豪快なその戦い方は正に斉天大聖そのものだと言われ、そう呼ばれるようになった。

その実力は第一席にも劣らないと言われるほどの実力者で、『局』の上層部からの信頼は厚く、世界からもひと目置かれている人物である。


「…これはまた、斉天大聖なんてビックネームが出てくるなんて、何者なんだろうね~この子」


アハハと幸汰は笑いながら聞いているが、正直笑い事で済まされる程の話では無い。真琴が笑っている幸汰の頭を叩く。神無はそれでも!と食い下がらない。


「だとしても!!心装武装を使えなかったら意味がありません!!斉天大聖は自分の身内を見殺しにするつもりですか!?」


「二つ目の理由はそこです」


「……えっ?」


「彼…水無月風音は心装武装を全く使用できない…という訳では無いのです」


七夕の言葉に困惑する。プロフィールでは現に発現不可能と書かれているのだ。


「彼は心装武装の使い方を忘れてしまっているだけで、本来なら使える筈なのですが…色々トラブルがあったそうで…」


だからと七夕は言葉を区切り、ニッコリとした笑顔で、


「殺すつもりで育ててほしい…と言ってました。私相手に殺すつもりでやっていいとは…斉天も無茶言いますね」


その笑顔は七夕本心の笑顔である。この笑顔に神無達三人は嫌な汗をかく。

このゴスロリ学園長…生粋のSである。しかもドがつくほど…。

三人はこればっかりは例の男子生徒に対して同情を得てしまう。


「そして最後に…これが一番の理由ですね」


これ以上に何かあるのだろうか?さっき聞いた理由だけでもそうとう驚いた。さっき以上の理由なんてどんなものか想像がつかない。


七夕はたっぷり間を開けた後、先程の笑顔を越えるくらいの笑顔で言葉を発した。


「だって面白そうじゃないですか♪彼♪」


三人の中の時間が止まった。面白そうだから?しかも一番の理由がそれ?ある意味驚いた。前の二つの理由より驚いた。

本当は心装武装が使える、斉天大聖の関係者。この二つの驚きが一瞬にして霧散した。


「……はぁ……分かりました。学園長の事だから何か考えがあっての事だと思います。……そう思いたいです!」


神無はため息をつき、七夕に背を向ける。


「それでは私達は入学式の準備があるので失礼します。朝早くから申し訳ありませんでした。…それでは」


「失礼しました」


「失礼しました~」


神無、真琴、幸汰の三人は学園長室から出る。学園長室に一人残った七夕。彼女は開けた窓から新入生が入ってくるのを確認していた。その中に件の少年を発見する。


「…フフ……楽しみにしています、水無月風音君。是非貴方には『此方側の人材』として頑張っていただきたいのですよ…。…ああ、これを言ったら理由が四つでしたね…」


まだカップに残っている紅茶を飲み、昔を思い出すように上を見上げ、


「…早く起こしてください、悪竜。でないと…彼…大変な事になりますよ…」


七夕は引き出しから水無月風音の『本物のプロフィール』を取り出す。

そこには偽物には書かれていない内容がチラホラ見られた。




心装武装

『千の魔術を操る悪』――゛アジ・ダハーカ゛

『???』――不明


魔力値

゛アジ・ダハーカ゛使用中は測定不能。それ以外はDランク。




「…フフ…本当に楽しみです」


七夕は本物のプロフィールを引き出しに戻し、自分も入学式の時に挨拶を行うのでその準備を行っていた。



時計の時針は午前9時を示す。






どうだってしょうか?

誤字脱字、おかしい所がありましたらご指摘お願いします_(..)_

感想もお待ちしております。


また読んでくれたら嬉しいです。

それでは_(..)_

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