何気ない朝の日常
楽しんでもらえると嬉しいです。
では、どうぞ♪
夢を見た、また同じ夢だ。ボロボロに崩れていく街の中で、銀髪の少女がこちらに優しく微笑んでくる。そして…銀髪の少女は姿を消す。少しずつ、少しずつ、儚く消えていく。
その夢を何度見ただろう?その少女を何度見ただろう?その儚い微笑みを何度見ただろう?
俺、水無月風音はある日を境にこの夢を、毎晩見るようになった。最初は漫画の読み過ぎや、ゲームのやり過ぎだと思ったのだが、やけにリアルだし、その夢を鮮明に覚えているからまた、どうも言えない状態になる。
記憶に無いし、会ったこともない。だけど、何故か妙に気になる。
――本当は知っている筈じゃないのか?
――あり得ない。
――本当に?
――本当に。
自分が自分に問うなんて、頭でも壊れたか?と思う俺。けどまぁ、毎晩のようにこんな夢を見てたらそう思っても不思議じゃない。
それに、今日はいつもより夢がリアルだった。銀髪の少女がこちらに何かを訴えかけていたが、何を言っているのか分からなかった。
睡魔の重みも段々強くなっていき、瞼はそれに抗えず、静かに世界を暗転させた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
――フム、毎晩のように見せているのに全く気付く気配がしないな、このガキは…。
――……まぁいい。どうせ事態はすぐに動く。
――昔の記憶を忘れてしまったと同時に私の事まで忘れてしまったか…。
――早く思い出せよ、水無月風音。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
朝起きて、朝食の準備と身支度を整える。
朝食は食パンの上にバターとベーコン。目玉焼きにトマトときゅうりとキャベツの簡単なサラダ。それとフルーツジュース。
何処にでもある、ありふれた家庭の朝の食事だ。
風音はそれを二人分用意する。自分の分と妹の分だ。
「おい、詩音。朝飯できたぞー、降りてこーい」
風音は二階にいる妹―詩音を呼びに階段付近まで来た。が、いくら経っても降りてこず、返事も返ってこない。
まだ寝てるのかアイツ…。
仕方なく風音は二階に行こうと階段を上ろうとするのだが、上からドタバタと音が聞こえてきて…止んだ。
「……?」
風音は不審に思い階段を上がる。すると、
「グッーーード…モーー二ィーング!!風音お兄ちゃ~ん!!」
茶髪を右だけに括っている、所謂サイドテールという髪型で身長低めの小柄な少女―詩音が、風音に向かって突っ込んできた。ドロップキックで…。
「グハァ!!」
そのまま風音は階段から落下し、原因である詩音は壁を使い体勢を整え階段に着地する。
ドンッという鈍い音を立てて床に転がりまくる風音。詩音は階段を降り、風音の顔を除き込む。
「いや~驚かせようと思ってドロップキックをしてみたものも…いいリアクションだよ、お兄ちゃん♪」
「…ふざけんな…何で、朝から…ドロップキックなんて受けなきゃいけないんだ…」
痛みを堪えながらも立ち上がる風音。詩音はエヘヘと笑いながら、
「だって今日はお兄ちゃんの入学式だよ!お兄ちゃんも今日から高校一年生。新たな門出なんだから、祝わないと勿体ないよ~」
「お前の頭の中はお花畑か!!どこの世界にドロップキックで祝う奴がいるんだ!!世界広しと言えど、ドロップキックで祝う奴なんていねぇぞ!!」
「え~でも、世の中の男の人ってこういうのは『ご褒美です。ありがとうございます!』…って感じじゃないの?」
「そんなマニアックな変態を世の中の男性の基準にするな。世の中の真っ当な男性に謝れ」
「まぁまぁ、いいじゃん。それよりも早く朝御飯食べよう♪」
朝からエンジンフルスロットルの妹のテンションについていけずため息を漏らす風音。
時計の時針は午前7時30分を示す。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
朝食を食べ終え風音は食器を洗い、詩音はテレビのニュースを眺めていた。
ニュースの内容は天気の事から各学校の入学式。新たな社会人達の声を聞く等、春にぴったりなニュースばかりだった。
その中でも特に学校の特集として報道していたニュースがあった。
『対幻獣討伐者育成専門学校』。
毎年のようにテレビでは報道されている学校だ。それほどまでに世間からの感心も高く、そして『期待』されている。
そして、今度俺が入学する学校でもある。俺が通うのは東京にある『蒼真学園』という所だ。他にも北は北海道から南は福岡まで、計6つの専門学校がある。
「みてみて~お兄ちゃん。お兄ちゃんの学校映ってるよ~」
「分かってるよ、つーかお前の学校でもあるだろ?ここ」
この蒼真学園は高等部と中等部に分かれている。詩音は蒼真学園中等部の三年生だ。『俺とは違い』元々この学校に通っていた。
「…というか、お兄ちゃん…ぶっちゃけどうなの?『心装武装』――ブレイブハーツの方は。大丈夫なの?」
「……あー……まぁ……」
風音は洗い物を止め、歯切れが悪くなる。その様子に詩音はため息をつきながら、
「お兄ちゃん……、流石に高等部の方は心装武装使えないと危ないよ…。魔法はまだしも、心装武装を使った授業だって普通にあるんだよ?…お姉ちゃん直伝の体術だけじゃ心持たないよ」
詩音は兄を心配するような目で見てくる。風音は何も言えない。詩音の言っていることは事実であり、決してふざけてなんかいない。
「というか…お兄ちゃん…何で受かったの?」
「…たまたま…心装武装が発動した…から」
風音はギクリと思いつつも、『嘘』で誤魔化そうとしていた。
本当は心装武装なんて発動していない。
そもそも心装武装――ブレイブハーツというものはある敵を倒すために作られた技術である。そのある敵というのが『幻獣』。世界を脅かす『異世界』からの来訪者だ。何故、『幻獣』というのが現れたのか、全く分かっていない。『幻獣』が出現するときは空間に亀裂が走り、その隙間からやって来る。だが、此方から出向いた例は一つもない。その為、『異世界』というのがどういうものなのかも殆ど分かっていない…らしい。表向きはそういう風になっている。実際に『幻獣』が現れた理由は不明だが、『異世界』に行けないということはないのだ。事実何人かが、此方の世界からあちらの世界へと行っている。その一人が俺達の姉である人物、水無月翠蓮。姉さんの話によると『異世界』に行ったらしいのだが…詳しくは教えてもらっていない。
兎に角、今日から俺が行く蒼真学園は幻獣を討伐するために必要な力や知識を身に付ける場で、幻獣に唯一対抗できる武器、心装武装を使えるのは当然なのだが…。
心装武装を使用できる方法は二通りある。
まず一つ目は適性検査で適正あり、と認められた人物に薬を投与し、心の武器である心装武装を発現させる方法。
二つ目は、自分自身で自ら発現させる方法。此方は非常に稀少で、『天然物』と言われており、その力は他の心装武装を大きく上回る。
だが、薬で発現させた心装武装とは言え、使用者の鍛練や扱い方によってはその力を大きく発揮し、『天然物』にも劣らない心装武装が出来上がる。
俺は自分自身で発現させていないので、『天然物』ではないのだが、適性検査では『適正あり』と出たのだ。にも関わらず、心装武装が一度も発現していない。適正ありと言われたので、心装武装が発現しないわけが無いのだが…、本当に発現しない。
本来ならこの時点で蒼真学園の入学は認められない。なんせ命が掛かる学園生活でもあるのだ、学園側も認めるわけが無いのだが…。
「(何で受かったのか…俺が知りてぇよ…)」
入学試験当日、試験会場。試験に失敗し、帰ろうとしたところを呼び止めた人物がいた。
黒い髪のゴスロリ少女。最初はなんでこんな子供がいるのか疑問に思ったのだが、そのゴスロリ少女の一言でそんな疑問は吹き飛んだ。
『おめでとう。貴方は無事、この蒼真学園の入学試験を通過しました。このパンフレットは入学式に使うので必ず持ってきて下さい。制服や教科書等の学園に必要な物は後日、貴方の家にお送りいたします。それでは…またお会いしましょう…、水無月風音君』
パンフレットを渡して、一通りの説明をした後、ゴスロリ少女は踵を返して帰っていった。その時は、頭の中で整理が出来ず混乱したが、後でよく考えてみると、一体何だったのか…今でもよく分からない。学園の必需品はゴスロリ少女が言った通り家に送ってきた。
そんなことを思ってると、時刻は8時30分を示していた。
「…そろそろ時間か…」
入学式は9時30分からなので、まだ充分に間に合う時間帯だ。中等部の方も入学式は同じ時間に行われる。
「詩音、そろそろ行くぞ」
「…了解~」
洗い物を済ませて朝の家事を一通り終わらせる。鞄を持ち、玄関へと移動する。
「そういや…詩音…、お前これからどうするんだ?」
「えっ?何が?」
「いや…高等部の方って全寮制だろ?俺はもう休みの日以外は家に帰ってこないし、詩音…お前家事とかどうすんだ?」
目の前の妹様は家事がからっきしダメである。殆ど家にいるときは俺がやってたから、正直心配で心配で仕方ない。
「あ、それね~大丈夫だよ。お姉ちゃんが今日から帰ってくるって。だから心配しなくても全然OKだよ♪」
「姉さんが?…知らなかった…」
「あれ?お兄ちゃんにも連絡行ってると思うけど…」
詩音はあれれ?という風に首を傾げる。風音は何となく何故自分に連絡が来なかったのか想像がついた。
「…姉さん…機械音痴だからな…たまたま詩音に連絡が行って、俺に送る筈だったメールは多分…間違ってゴミ箱にとかでも行ったんじゃないのか?」
「……あーあり得る…」
「あの人料理は上手なんだけど…機械を使うのがちょっとな…。詩音、それくらいお前も出来るだろ?姉さんの手伝いは率先してやれよ…。…家が壊れたくなかったら…」
「それは誓うよお兄ちゃん。私もまだホームレスにはなりたくないよ」
ビシッと敬礼をする詩音。姉の翠蓮は頼れる姉なのか、頼れないのかよく分からない。
だが、これだけは言える。
水無月翠蓮は『戦闘』においては風音と詩音が知るなかで一番に頼れる人物である。
尊敬しているし信頼もしている。
そんな姉が帰ってくるのだ、風音は喋りたいことが沢山あったのだが、生憎と今日から寮生活なので姉には会えない。
次の休みの日に会いに行くか。
風音はそう思い、詩音と一緒に家を出た。
どうだったでしょうか?
誤字脱字、おかしい所がありましたらご指摘お願いします。
感想等もお待ちしております。
作者はガラスのハートなのであまりキツいコメントは無しでお願いします__




