悪竜の少女と心壊した少年
はじめまして、バリバリ初心者の春夏秋冬です。
こちらの小説家になろう様では初めての投稿になります。
本当、初心者なので暖かい目で見守ってくれると助かります。
これからよろしくお願いします__
「…お父さん…お母さん…?」
一人の少年が横たわっている男性と女性を見つめて自分の父親と母親だという事に気付く。必死で揺さぶっても全く起きる気配が無い。それに、とても冷たく感じる。
「…ねぇ。何してるの?お父さん、お母さん…」
「その者達はもう起きんぞ」
えっ?と少年は後ろを振り返る。そこには、綺麗な銀髪を腰まで伸ばしており、黒のワンピース一枚と簡単な格好をした一人の幼い少女が立っていた。
「…きみは?」
「フム……。そうだな…まぁ私は――」
銀髪の少女一旦考える素振りを見せて、周りを見渡す。あちこちで炎が上がるなか、後ろの爆音と共にこう答えた。
「この『事件』の首謀者だ」
ニヤリと口を歪ませ、金色の双眸がギラリと少年を見据える。
「…事件?じゃあ…これは、みんな…きみが?」
「そうだ。私がやった」
所々から爆炎や煙が立ち上ぼり、建物が崩れてゆく。それらを見ながら少女は、いい眺めだと呟いていた。それに少年も、
「うん。いい眺めだね…」
炎に消えていく町。崩れ去る家々。残る思い出も何もない、絶対的な虚無感。
少年のそんな言葉に首謀者である少女が戸惑いを見せる。
「…どういうことだ?私はお前の住んでいた街を人を思い出を壊したのだぞ?目の前に居る私はお前の仇、復讐対象みたいなものだろう?何故そんな平然でいられる。何故喚かない。何故怒らない。…何故…そんな事が言えるんだ?」
少女は少年に問いただす。自分がこの事件を起こしておいてなんだがこの少年の態度は異常だ。普通なら少女自身に対して怒りや恨みを持つはず。だが、それらが一切感じられない。少年は今、何をどう思ってこの場に居るのか。少女はそれが知りたかった。
「お前の両親を直接では無いとはいえ、私が殺したようなものだぞ?私に対して何か思わんのか?」
「……何も、何も思わない…」
「なっ…!?」
何故だ!!少女はそう叫んだ。叫ばずにはいられなかった。そして同時にふと冷えた頭で冷静に考えた。
「(私は何故、このようなガキに熱くなっているんだ?)」
少女と少年はただの他人。全く見知らぬ相手。少女自身から見て、この少年はまだ乳臭いガキだ。さっさと殺して、さっさとこの場から離れればいい。そう思うのだが…。
少女は少年を改めてジッと見る。手入れがされていないボサボサの黒髪に、身体には幾つもの傷痕。それを隠すようにボロボロの布一枚を羽織っている。靴は履いておらず、裸足のまま。
結論から言うと―――。こんな街中では異常な格好だった。別にここはスラム街でも廃れた村でもなんでもない。少女が事件を起こす前までは、活気ある何処にでもあるような普通の街並みであった。事件が起きて、時間が経ち適当に服装を見繕ったならまだしも、まだ少女が事件を起こして『数分』も経っていなかったのである。十歳に満たしていない今の少年の格好はどう見ても可笑しい。あちこちで悲鳴やら怒声が聞こえてくるが、少年と少女には何も聞こえてないような感じだった。
「……そうか……お前は…」
少女が何かを悟り、少年に近づこうとした瞬間、黒煙舞った空の上から奇妙な声が響いてきた。
それらの声は決して人間や動物が出せるようなものではなかった。
強いて言うなら―――。
怪物。
その一言に尽きる。
あちこちで悲鳴と怒声が怪物の登場により更に入り交じる。少女は目を細め、空を見上げる。
「…もう来たのか…早いな」
少女の呟きと共に少年の周りを怪物達が囲いこむ。少年は何が何だが分からなかった。ただ、ひたすら周りを見る。
「………化け物………?」
「ああ、そうだな。お前らの世界で言えばそうなるか」
少女は少年に近づき、腕を横へ振るった。
それだけで、
少年の周りを囲んでいた、
怪物達が、
その命を、
静かに消した。
「……えっ?」
両親の死や、燃えゆく街、怪物達に囲まれてなお、何も感じていなかった少年が初めて、驚きという感情を露にした。
怪物達が全員凍死していたのだ。少年には寒ささえやってこなかった。ピンポイントに怪物だけを周りに被害を出さず凍らせていた。ボロボロ崩れていく怪物達を少女は何事も無かったかのように無視する。
「……ガキ、お前に見せてやる。私の力を。近くでよく見ておけ」
そう言うと少女は背中からバサリと羽の音を響かせた。それは蝙蝠のような羽で、黒く、真っ黒に染まっていた。
少女は少年を抱き抱え、地を蹴り、空へと舞う。
「舌噛むなよ」
ものすごいスピードで空を上がっていき、街全体が見渡せるくらいの高さまで来ていた。
少年は目を開け、街を見渡す。今更だが街はもう壊滅的な被害を受けていた。少女が言うには数分の間に『これ』をやったというが…どうにもにわかに信じがたい。
「ほら、雑魚共のお出ましだ」
少年は少女の言葉に黒く染まった空を見る。すると、そこには数えきれないほどの怪物が視界を埋めていた。少年が先程見た怪物以外のものまで居た。
「……凄い、数……」
「全員、雑魚だがな…。こちらの世界とあちらの世界での扉が開いたのだろう。それも相当デカイのが……」
何を言っているのか少年には全く分からなかった。扉?こちらの世界?あちらの世界?少年の今の理解力では到底分からないものだろう。
「…きみは…本当に、何者?」
「……私は……悪竜だ」
「あく…りゅう…?」
少女は大きく息を吸い、高らかにこう叫んだ。
「―――我の名は、悪竜アジ・ダハーカ!!
悪の根源であり、絶対的な破壊者!!
我を討とうと思う輩は、今すぐ前へ出ろ!!
それ相応の―――死を与えてやる!!!」
少女――アジ・ダハーカの言葉一つ一つが、天を、大地を、怪物達を、それと…少年をも震わせるくらいの力を持っていた。
怪物達は瞬時に悟った。彼らに少女アジ・ダハーカの言葉が分かるような語源能力を持つものは居ないが、それでも、野生の本能とでも言うべきか…、分かってしまった。
『あれ』にはどう足掻こうが、絶対に勝てない。絶対にだ。
だが、それでも怪物達は、自分達が感じた恐怖を押さえつけ声を上げて、アジ・ダハーカの元へ、口を開き、羽を羽ばたかせ、牙を見せ、爪を尖らせ、自分が持っている凶器全てを見せつけて、立ち向かった。
「…ほう。全員立ち向かってくるか…。面白い!!心意気は良し!!―――全員平等に…死をくれてやる!!」
アジ・ダハーカは右手を上へと上げ、何やら呟いていた。少年はそれを聞き取ることが出来なかったが、何となく少女が使用としていることは分かった。
「゛アヴェスター゛を限定的に解放」
アジ・ダハーカの右の掌から出ている沢山の模様――この場合は魔方陣とでも言うべきか、それらが何個も連なって、空へと昇っていく。
「゛ウィスプ・ラト゛発動。
――――゛絶対零度の創造主゛……ッ!!」
アジ・ダハーカが一つの魔方陣を握り潰す。それと同時に、少年の見ている世界が、一瞬にして変わった。
黒い世界が、
白銀の世界へと変貌した。
「…………え、えっ?」
先程も同じ様なものを見せてもらったが、あれとは比較にならなかった。なるはずがない。
この場に居る全ての怪物達を凍らせたのだ。その数も、百や千どころの話ではない。
この街を覆うぐらいの規模。少年と少女アジ・ダハーカを中心に考えると、半径約5Km。推定距離約10Kmの超巨大な氷の華をこの街上空に咲かせたのだ。少年の周り全て、氷、氷、氷。冷えた空気が少年の肌に突き刺さる。
「……まぁ、こんなものだろう。゛アヴェスター゛を限定的とは言え、゛ウィスプ・ラト゛まで使ったからな…今の私でもこれくらいは出来てくれないと困るな」
「……全力じゃないの?」
少年の問い掛けは当たり前である。だが、アジ・ダハーカはそれを切り捨てるように答えた。
「バカが、限定的と言っただろう。これが全力な訳あるか。もしあれで全力だったら距離が更に広がり、この辺りに、この辺までの高さの氷山が一個…軽く一つ出来上がるぞ。こいつらに対してそこまではせん」
この高さの氷山が一つ。考えるだけでも身震いしそうな光景だ。この少女なら簡単に出来てしまう想像がつく自分が怖かった。
「驚きの連発でそれなりに感情が戻ってきたか…。おまけだ。もう一つ見せてやる」
アジ・ダハーカは街で轟々と燃えている炎を指一つでかき集める。炎は空で渦を巻き、氷で出来た白銀の世界をその熱で消していった。凍っていた怪物も含めて…。
一通り終えると、少年とアジ・ダハーカは街へと降りる。街で燃え上がっていた炎は一つ残らず無くなっていた。
「ガキ…。これが゛力゛だ。お前らの世界で言えば…そうだな…゛魔法゛ってところか」
「魔法……」
「人間はこれから゛魔法゛を覚えるだろう。もう覚えている奴もいそうだか…。それに伴い更に技術が発展する」
「………?」
少年は分からなさそうに頭を傾げる。
「…まだお前には難しいか…。まぁいい、だが一つ覚えておけ……『心を解放してやるのはキスが一番』だ」
「………???」
またもや少年は分からなさそうに頭を傾げる。こればっかりはまだ当分先だから…、知らなくて当然だが…とアジ・ダハーカは思った。
アジ・ダハーカは少年に近づき、自分の唇と少年の唇を重ね合わせる。
「…ん……ん~~っ!……っ!」
少年は最初は驚き、抵抗したものも、すぐに抵抗を止めた。唇を重ね終え、両者の頬は少し赤みを帯びており、少年はポケーっと少女を見つめていた。少女はこれで少年の『心』を解放してやろうと思っていたのだが、少女の考えは大いに覆される。少女は急に頭を押さえ呻き出した。そして、
涙を流していた。
少年の記憶が、アジ・ダハーカの頭の中に流れ込んできたのだ。
少年に行われていた仕打ちは既に悪そのものだった。過剰な暴行、行き過ぎた虐め、餓死寸前まで少年を追い込んだりと様々な吐き気を催す悪逆非道な事ばかりが頭に浮かんできた。本来、こういう『悪』と言った行為はアジ・ダハーカにとって最高の好物でもあった。何せ悪の根源そのものだからいた仕方がない。
だが、アジ・ダハーカが表した感情は楽しさではなく悲しみ。アジ・ダハーカにとって本来、持つような感情ではない。
「(私ではなく、こいつが泣いているのか…)」
アジ・ダハーカは少年の方を見る。少年の心と言った方が正しいか。本来なら少年が、流す筈の涙であったが、少年にはそういう感情が余りにも欠乏していた。あの悪の根源でさえ驚くような心の壊れ方である。
「(悪の根源である私ですら驚く…か。…流石『人間』だな。欲深しい悪なら『悪の根源』を越えるか…、クックク…人間を殺すために造られた悪が、人間の悪に驚くとは、皮肉だな…)
アジ・ダハーカは何故か、この少年の力になりたいと……そう思っていた。掌を少年の胸の部分に当てる。
「もう…私は消えゆく身だ。私の゛力゛お前に授けよう」
アジ・ダハーカは自分の力、知力、魔力を全て、少年に移した。
「…今のお前にはまだ扱うのは難しいかもしれんが、数年後…お前はこの゛力゛を使うだろう。…決して゛力゛に飲み込まれるな、悪に飲み込まれるな、自分に飲み込まれるな…。もし、飲み込まれそうになったとき……、まぁなんだ…私の名を呼べ、助けてやる」
少年から手を離し、うっすらと微笑む。
「悪は支配してこその悪だ。゛力゛を支配しろ、悪を支配しろ……、自分を支配しろ。それが、邪法であっても」
アジ・ダハーカはここで、はて?と首を傾げる。
「(何故だ…何故私はこのガキが気になったのだ?)」
アジ・ダハーカはこの少年を一目見たときからずっと気になっていた。何故、話しかけたのかも、何故、自分の力を与えてやるのかも、今になって不思議と感じて来るのだか、この少年の記憶、心を見ていてその結論が出た。
「(…私と『一緒』だったのか…。こいつは…この子は…『昔の私と一緒』。それは気にもなるわな…)」
自嘲気味に笑うと、ふと頭の中に人間の女性が浮かんできた。
「アンラ・マンユ以外の主に支えたのは何百年ぶりだ?しかも、『人間に二度支える』など…私も歳をとったな…」
浮かんできた先程の女性は人間でありながら、アジ・ダハーカと同等の力を持った人物。しかも゛アヴェスター゛本来の力が使えないので、最終的には負けてしまった。その後、敵同士なのに面白いから仲間になれなど、人間にしては常軌を逸していた。だが、『面白かった』。それは唯一、アジ・ダハーカが『人間』として残している感情でもあった。
「さて…私もそろそろか…」
アジ・ダハーカは立ち上がり、眠っている少年を見る。少年が眠っているのはアジ・ダハーカが力を移しているときに暴れられては困るので、睡魔の魔法をかけておいたからだ。
アジ・ダハーカの身体が段々薄くなっていき、光の粒子状として足の方から消えていく。
「……じゃあな。少年……いや、―――――。また会おう」
最後に見せた笑顔は悪竜としてではなく、一人の少女として、見せた笑顔だった。
あれから月日が流れ、少年は高校生になっていた。
高校一年生、季節は―――春。
少年の止まっていた時間が今再び……動き出す。
どうだったでしょうか?
小説を書くのは難しいですね。オリジナルなんか特に。
文才が欲しいです。心の底からそう思います。
継続して投稿できるようこれからも頑張っていきます。
誤字脱字、おかしい所があったらご指摘お願いします__
それでは。




