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いよいよ練習始ってしまう。

「ごめんなさい、うまく聞き取れなかったのでもう一度おねがいします。」


姫は手を突き出して一生懸命息を整えようとしている。


ちょっと待ってって意味だろう。



それにしても、全速力で走ってくるには疲れ過ぎな気がする。


あ、これは私の存在無しでのことだよ!


「さっきまでみんなにアドバイスしてたんじゃなかったの?」

「はあはあ…………ふぅ。」



だんだん落ち着いてきたみたい。


あんまり時間経ってないのにさすが教師って感じだ。


「私がこんなに疲れたのはそれが原因なのよ!」


子供っぽく地団駄を踏む。



「私、最初にかっこよく『さぁ、愚民ども! 質問とかアドバイス欲しいって人はこの姫ちゃんに聞きに来なさい!』って言ったじゃない?」


「いや、別にかっこ良くないし『愚民ども』とも言ってなかったと思うけどね!?」


「それでみんな惚れちゃったらしくてぇ。」



あ。 スルーですか、はい。



「人波を掻き分けてここまで走ってくるまで苦労したわ。

はぁ…。私って罪なオ・ン・ナ」




…ツ、ツッコみたい。


激しくツッコみたい!



もちろん姫が言ったことにだよ?


今変なことを考えた人は………まぁ、仕方ないよね!!


人間っていつでも発情期って言うし、たしか。



けど、私のツッコミレベルではもうさっきのスルーで使用不可になってしまったのだよ。


残念なことにね。



「花恋! バトンタァッチ!!」


花恋とハイタッチする。


「任せてください!美羽さん!!」


花恋が私にウィンクした。



ーーシュッ



ーーーズシャッッ



その瞬間、マサカリがマイハートを切り裂いた。




ぐはっ



基本すっごい恥ずかしがり屋さんな女の子が、たまにお茶目になるとか反則だよ!



ギャップとか私の中での萌え萌えポイント高すぎてやばい!!



「ほんと姫さんは罪な人ですよ!!」


うんうん。 もっと言ってやーーあれ?



「な、なによ!」

「途中で抜けだしてくるなんて、他の人達がかわいそうです!」


うーん。


正しいことは言ってる。

間違ったことは言ってない。


でも、私が言ってほしいこととはちょっとずれてるような……。



「あんたねぇ。

私はあんた達の心配して駆けつけてあげたんでしょお!?」


「そ、そうだったんですか!?」

「そうだったの!?」



そっか。


姫はさっきの植物ハプニングに気付いて急いで…。



「ま、あんた達で何とかなったみたいだけど。」


ちょっと拗ねたみたいに頬を膨らまして、視線を地面に向ける。


せっかく駆けつけたのに自分の出番が無かったのが、不満らしい。



私的には心配して来てくれたってだけでも十分嬉しいんだけどね!



「一体何してあんたは花恋に打ち上げられたのよ…。」


姫が呆れた顔をする。


「ちょーっとほっぺたスリスリしただけだよねっ?」

「え、まぁ。 そんな感じですけど…。」



「ほ、ほっぺた、すりすり……?」


姫が口をあんぐり開ける。


そんなに驚くことかな?




「そ、そんなこと、私されてない!!!」



今度は私の肩を掴んで怒鳴って来た。


え、状況が理解できない。


整理してみよう。



私が「花恋にスリスリした」って言ったら姫がなんか怒ってる。


言った言葉は『私はされていない』と。




………………。


こ、こここれは!!!


もしや伝説の!?


あれを言ってみてもいいのでしょうか!?


いや、きっと許されるはず!!!



「ヤキモチ……?」

「だ、誰が誰にヤキモチ焼くって!?」


姫は顔を真っ赤にして私から距離を取った。


そして、花恋の後ろに隠れて、ピョコッと顔だけ出した。


この反応は肯定してるって思っていいんだよね!?



「ふふっ。姫さんったら。」


花恋が姫の頭を撫でる。



そっかぁ。


私は美少女にヤキモチ焼かれたのかぁ。 


グフッグフフ



「そんなの言ってくれたら……ハァハァ…いつでもスリスリしてあげたのに………じゅる」


「ちょ、よだれ汚いっ」


おっと。


いつの間に。



仮にも乙女な私が。


普段は清く正しく可憐な私が!



「それに私は! あんたに撫でて欲しいなんて、一言も言ってないわ!!」


デレを隠そうとして必死にツンツンしてるなんてかわいいねー。



「そ、それより花恋。

こんな変態は放っておいて、何があったか話してくれないかしら?」


「はい。わかりました。」


「私、変態じゃなーーむがっ」


物理的に口を閉じさせられた。



そして、花恋はさっき起こった出来事を話しだした。




。。。


「ふぅん。 なるほどねぇ。

そんなに被害が出なくてよかったわ。」

「私は!?」

「だから、そんなにって言ったでしょ。」



そうですかいそうですかい。


私の存在は『そんなに』レベルですかい。


結果的に傷とか残ったりしてないんだから、たしかにそうなのかもしんないけどさ。


もうちょっと労りを見せてもらいたいというか。



「気になったんだけど、能力って発動させるにはその能力の名称を言わないとだめなんじゃなかったっけ?」


私の素朴な疑問。


花恋は能力を発動させるとき、『ピアンタ』って言ってなかったはず。


練習積んだら、一回発動させたら解除するまでは手を動かすみたいに使えるらしいんだけど。 


発動させる前だし。



「あー、それね。 能力は自己防衛としても働くから。

花恋の潜在意識があんたをそんだけ危険だと思ったんじゃない?」


「えぇっ!?

そんな……花恋、ひどいよぉ。」


花恋にすがりつく。


ちゃっかり温かい。



「そ、そんなこと思ってませんよ!!

少しは不安になりましたが…。

でも、身の危険があるなんて微塵も思ってませんよ。」


「だと思った!」


「開き直りはやっ

まぁ、さっきのは半分冗談よ。」


姫がイタズラっぽく笑う。


「まだ花恋は能力使ったことなかったでしょ?

早く能力を使ってみたいって気持ちとちょっとした恐怖心が過激反応して、勝手に発動しちゃったんだと思うわ。」


「そんな大変な副作用があったんですか!?」


「大丈夫よ。

今日中にみんな制御できるようになるわ」


自信満々に言い放つ。


姫がそんなに余裕ってことは裏ワザみたいなのがあるってことなのかな?



「だって、制御できるようになるまでとここから出さないから!!!」



すごいいい笑顔ですごい怖いことをのたまう。


「と言っても、寮の門限とかなんやらもあるから七時までだけど。

もしそれまでに出来なかったら発動防止の薬を飲ませないといけない。

それってすごーーく苦いのよねぇ。」



へ、へぇ。


そんなに邪悪な薬があったのか。


苦いのだけはまじ勘弁!


そんなの飲んだら私死んじゃう!!!



「か、花恋!

ぜぇったい、元気なままで部屋に帰ろうねっ」


ぎゅっと花恋の手を握る。


「は、はひっ!」


声が裏返ったおかしな返事が帰ってきた。


でも今はそれどころじゃないや!



「攻撃系以外の能力者は安全だからそんなことしなくていいんだけど。」

「なにそれ、不公平!!」 


「それが宿命ってやつよ!!!」


かっこよく返された。


「さぁてと。 あと8時間ちょっとね。

ついでにアドバイスしてあげるわ。

最初は自分の能力をきちんと知るために一人で練習する。

その後は、二人で練習するといいわ。」


「それってどういうこと?」


花恋と顔を見合わせる。



同じ種類の能力ならまだわかるよ?


でも私のと花恋のでは全然違う。


どうやって一緒に練習しって言うんだろう。



「見てなさい。」


姫が両手をかざした。


すると私達を中心に半球の空間が広がった。


広さは……そんなには広くないかな。


いや、広いっちゃ広いけど。


「ここで、追いかけっこみたいなのをするの。

美羽が逃げて、それを花恋があらゆる手を使って捕まえようとする。

そうしてるうちに自然に能力は使いこなせるようになるわ。」


なるほど。


私と花恋にここでラブラブしろと言ってるのか。


どんとこい!


むしろ大歓迎!!



「美羽さん。 なんか勘違いしてそうな顔してますけど、あくまで練習ですからね?」

「わーかってるって!!」


「んじゃ、二人共。せいぜいがんばりなさい!」


姫は半球の空間をすり抜けて外に出ていった。



よし。がんばりますか!



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