バカは時代を繰り返す。
いつの間にか備え付けられていた給水器で水を飲む。
「ぷはぁっ 生き返るー!」
手で顔に跳んだ水滴を拭う。
さっきまで別々で練習していたけど、そろそろ休憩しようってことになった。
「そっちはどんな感じ?」
一緒に休憩している花恋の隣に座る。
「いろいろ試しているうちに徐々に慣れてきました。」
涼し気に笑う花恋の額にも汗が浮かんでる。
ちょいちょいチラ見してたけど、すごい真剣だったもんね。
私が至近距離に居ても気づかなかったくらいだったしね。
何回こっそり背後に這い寄ったことか!!
結局変に理性が仕事して何も出来なかったけど。
「私もそんな感じかなあ。
ただ私の場合はひたすら飛び回ってたりしたくらいで。」
私は言葉の通りさっきまでずっと飛んでた。
…うそ。
ちょっと見栄張った。
実を言うと、休憩は飛行時間の倍くらいしてた。
だって体力持たないし!
でも最後にはすんごい上達したから大丈夫!
結果良ければ全てよおおおし!!
はー、ことわざってすばらしい。
「これは…。」
花恋が空間の境界壁的なものを叩いた。
そして神妙な顔をした。
「ここはもしかして、造った人しか出入りできないのでしょうか?」
言われてみれば、姫は普通に通り抜けてた。
でも、私達の体はすり抜けない。
「そんなもんじゃない?
二人っきりで練習できるように造ってくれたんだしーーっ!?」
二人っきり!?!?
そうだ!!
今まで何を考えてたんだ美羽!!
花恋と密室に二人っきりなのに何もしてないじゃないか!!
真面目にコツコツ練習してどうする?!
己の技術を磨くのも、もちろん大切だ!!
だがもっと大切なことを忘れているであろう!!
こんな事では美少女観察団体団長を名乗る資格など持てない!!
はぁ。
最期の美少女観察団体団長って、心の中で言うのでも噛みそうになる…。
咄嗟に思いついた名前ですが何か?
私のネーミングセンスに文句あるかああああああ!!!!
で、そうそう。
問題は花恋と二人きりなのに何もしていないという現実だった。
切り替え早い私、超クール。
「ん〜〜〜〜〜」
タコにした口を花恋のほっぺたに近づけていく。
本当は唇にしたいけど、まずはほっぺたからってね!
決してヘタレではない!!!
横からこっそりこっそり…。
「ふっ」
あ。
つい漏れてしまった息が花恋の頬にかかってしまった。
ちょいと興奮しすぎたぜぃ。
「み、みみ、みーーーーーっ!?!?」
花恋は思いっきり避けて、勢い余って後ろに倒れた。
そして肘で体を支えて起き上がる。
おしい!
あとちょっとだったのに!!
「み?」
「いいったい、ななな何を!?」
「ナ、ナニって……」
顔を手で抑えて恥ずかしがる振りをする。
あくまで『振り』ね!
これくらいじゃ恥じらいは持てないよー。
「えっと。」
花恋の頭の上に空想ハテナマークが浮かんでいる。
意味わかってもらってない気がする。
まぁ、花恋って清楚純粋っぽいし仕方ないか。
清楚純粋ってのもいいよね。
私色に染め上げてやるーってなる感じのところとか。
無知さ故の萌えポイントっていう。
もちろん私は花恋と愛情溢れる行為しかしないけどさっ
キランッ☆
………ムラムラしてきた。
こほん。
「私、もぉ自分の気持ちに嘘付けないっ」
自分的セクシーボイスを使う。
鼻から声出す感じのやつ。
あれ、違う?
鼻から声はぶりっこボイスだっけ?
もっとねっとりした感じの声だっけな。
「ほ、ほら。」
花恋が何やら慌てた様子で立ち上がる。
「そろそろ練習始めますよ!」
そう言うと私から一定距離離れた。
「ピアンタ!!」
何もなかった地面からツルが生えてくる。
太さは太いくせに先が尖っていて、もう凶器でしかない。
それらは花恋の両サイドを囲むような形になった。
花恋が私の方に両手を突き出す。
すると、それはすごい速さでこっちに向かってきた。
「ーーっ!」
直感的に横に飛び退く。
速い。
一瞬前まで私が居たところをツルが通り過ぎた。
って、え?
もし移動してなかったら、私の体、貫かれてた…?
「それで避けたつもりですかっ?」
「へ?」
かざしていた手を自分の方に引きよせる。
後ろから何かが風を切る音がした。
「っう!!!」
視界が真っ暗になる。
呼吸が苦しい。
それに全身圧迫されてる。
本当に貫かれた?
まさか花恋に限ってそんなことしないはず。
でも今の状況は……。
出血多量か何日で痛覚とか視覚が麻痺ってるのかな。
そうだったらやだな。
すぐ病院行って輸血しないと死んじゃうやつだよね。
私にはいっぱいしないといけないことが…。
「まず私、まだ花恋のパンツ見たことない…」
ぼそっと呟く。
自分の声がこもって聞こえた。
これも死にかけてる証拠なんだろうか。
さよなら、みんな。
短かったけどそれなりに楽しかったよ。
心の中で最後の別れを告げる。
「いつまでそうしているつもりですか。」
遠くで花恋の声が聞こえる。
そっか。
私が死ぬ前にパンツを見せに来てくれたんだね。
花恋ならそうしてくれるって信じてたよ、
「仕方ないですね。」
ーーシュルシュルシュルシュル
体の周りで何か動いてる。
え、なにこれ。
大量のパンツで私を包んでくれてるのかな?
「美羽さーん! 目を開けてくださーい!」
さっきより近くで花恋の声が聞こえた。
言われた通り目を開ける。
「ぬぬ!?」
……視力が戻ってる。
自分の体を確認しても、どこも怪我してない。
「私、刺されたんじゃないの?」
「どうして私が美羽さんを?」
質問を質問で返された。
「確かにそうだけどさ!!」
さっきのツルにプスッと刺されて…。
ん?
そう言えば、プスってなったっけ?
うー
自分でも何言ってるかわかんなくなってきた。
「目がぐるぐる回ってますよ。」
「な、なにをぅ!?」
落ち着くために自分で自分にデコピンする。
痛っ
よし、もう大丈夫。
「ふふっ」
花恋が笑ってる…。
なんか変なことあった?
「私わかっちゃいました。」
珍しく花恋がドヤ顔をする。
そのギャップがまた…(ryo
「何が?」
「美羽さん、また勘違いしてたんでしょう?」
「勘違い?」
「今度は頭までグルグル巻きにしただけです。
だから殺してもいないし刺してもいませんよ。」
「な、なな…!?」
うっそん!?
ガチで!?
また思い込みしちゃったの私!?
入学してからすでに二回目だよこれ!!
しかも両方花恋に知られてるし!!
うわー!!!
恥ずかしいいいいい!!!!!!
布団五重くらいにしてベッドにうずくまりたい……。
「ちょ、花恋先生、タイム!!
波瀬さんは今から記憶の整理整頓をします!!!」
記憶を1つずつお片付けしましょう!!
・痛みがなかったのは、痛覚が麻痺してたんじゃなくて本当に怪我してなかっただけ!
・圧迫感とか呼吸困難は縛られてたため!
・いきなり視界が真っ暗になったのも、これは多分だけど、私がツルを認識する前に縛り上げられただけ!
つまり花恋は能力の精度をグイグイあげてます。
以上!!!
ふぅ…。
よく考えるとこんなに簡単なことだったのか。
「美羽さんって意外と勘違いしやすいんですね。」
ぐはっ
そしてトドメの一撃!!!
私、意外と落ち込みやすいんだよ?
…不貞寝してやるっ
「ちゃんとお片付けしたので、お昼寝タイムに移ってもいいですか…? むしろそうさせて下さい…」
私のくせに疲れきった声が出た。
まぁいいや。
そこら辺に転がっとけばHPも回復するさ。
HPとかないけど。
「花恋。 あと1時間経ったら起こして…。」
うつ伏せになって目を閉じる。
「だめですよ!
さっきも美羽さんの能力を使えばなんともない攻撃だったのに、判断が回らなかったじゃないですか。
私が特訓します!!!」
なんか急に花恋のヤル気がメーター振り切っちゃってるよー。
絶対過酷なやつさせられるよね、これ。
ありがたいんだけどさ!!
スパルタ特訓に喜びを見いだせるほど、私マゾじゃないし!
御免!!
「ぐー」
どうか騙されてくれますように。
心の中でお祈りに全力を捧ぐ。
「美羽さん?」
「ぐー」
「寝ちゃったんですか。 仕方のない人ですね。」
上手くいったか!?
なぜか良心が痛む。
いやいや、私の判断は間違ってないはずだ。
「寝てしまったなら起こすまでです!」
「うほっ」
背中に強い衝撃が走った。
痛くて後からじんじんしてくる。
まるで鞭で打たれたような感覚。
「いたた…。」
ってもしかして鞭打ちされたの!?
それも結構強め。
鞭打ちとか家畜になった気分だわー。
それとも現代では家畜にも鞭打ちはしないのかな。
中世くらいではしてそうだけどね。
打たれて熱くなった場所を擦りながら、後ろを振り向く。
「目が覚めましたか?」
ピシッとツルを打っている花恋がいた。
鞭打ちじゃなくてツル打ちだった……。
どうでもいいか。
「こんなのひどいよー。」
「今の私はストイックなんです!!」
ストイック花恋怖えぇぇぇぇ。
ヤル気がどんどん加速して増えていってる。
はーあ。
観念するかー。
私のためを思ってそうなろうとしてくれてるわけだし。
一応。
美少女の期待に応えないとね!!
「わかったよー、やるよー!」
重い体を起こす。
「始めましょう!!!!」




