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マクスウェル VS サモウラ

「いい加減にしろ!何回来たところで俺の気は変わらねぇよ。さっさと帰れ」


「しかし、クロノ様 ────── 」



通算十八度目のやり取り。

サモウラは再びクロノの元を訪れていた。

望み薄だと理解しながらも、任された以上は彼の説得を諦めるわけにはいかない。

それほどまでに彼の存在は魔族にとって重要なのだ。

それは、良い意味でも、悪い意味でも ──────── 。



「おい、しつけーぞ。お前らはいつから俺に指図できるほど偉くなったんだ。魔族全員皆殺しにされてぇのか?」


「いえ…決してそのようなことは・・・」



ポコッ ──────── 。



「痛ってぇな。何すんだよ」


「ダメだよクロノ。そんな言い方しちゃ」



!?!?!?


目の前で繰り広げられる光景に目を丸くするサモウラ。

しかし、宿木のメンバーたちからするといつもと変わらぬ日常の光景でしかない。

そんな中で小さな怒りが生まれ落ちる。

魔族にとってクロノの頭を叩くなど恐れ多くて思いつきもしない。

それほどまでに彼は同族からも恐れられていたのだ。

そんな固定観念が染み付いているからこそ、サモウラにはその行為を許すことができなかった。



「貴様ーーーーー!そのお方をどなたと心得る。貴様らヒト族ごときがおいそれと触れていいお方ではないのだぞ。それを…よりにもよって…頭を叩くなど…言語道断。万死に値する!!」


「えーーーっ!?ごめんなさい。いつもの癖でついついやっちゃっただけなんです」



まったくもって弁明になっていない。

むしろ今のサモウラに対しては火に油を注ぐようなもの。

しかし、当の本人は目の前で憤る相手に対して誠心誠意謝罪しているつもりなのである。



「いやいや、スズネ…それって完全に煽ってるわよね」


「そんなことないよミリア。私はいつもの調子でクロノの頭を叩いちゃったことを真剣に謝ってるよ」


「ハハハ…。スズネ、それだといつも叩いてるって言ってるようなもんすよ。叩いたこと自体に怒ってる人に対して、それはどう考えても喧嘩を売ってるとしか思えないっす」


「あっ!?・・・」



ミリアとシャムロムによる説明を受けて、ようやく事態を理解したスズネは、恐る恐るサモウラの方へと視線を向ける。

そして、その先には怒りのあまり身体を小刻みに震わせているサモウラの姿であった。



「あ…あの〜…これにはとても複雑な理由がありまして・・・」


「口を慎め。貴様らの戯言など聞く必要はない!クロノ様に少し目をかけていただいているようだったので見過ごしてきてやったが、もう我慢の限界です。皆殺しにしてさしあげますわ」



スーーーッ ────── ヒュンッヒュンッヒュンッ。


サモウラが腰からぶら下げていた鞘から剣先鋭いスピアを抜く。

そして、あっという間に辺り一帯を覆い尽くすほどの殺気を解き放つ。


ブワァッ ──────── 。



「ちょっとちょっと、あの人マジで殺る気っすよ。クロノ、早くなんとかしてくださいっす」


「はぁ?知らねぇよ。あの程度の雑魚くらいお前らでなんとかしろ」


「まぁまぁ、少しは落ち着きなさいよシャムロム。剣士が相手となっちゃ〜アタシも黙っていられないわ」


「待ってください。僕も久々に師匠やミリア以外の剣士と戦いたいです。ここは譲ってください」


「はぁ?嫌に決まってんでしょ。アタシの方が早かったんだから戦うのはアタシよ」


「いつも師匠との勝負だって僕が譲ってるじゃないですか。だから、今日くらいは僕に譲ってくださいよ」


「そんなこと言い出したら、アンタの方が師匠にみっちり鍛錬に付き合ってもらってるじゃないのよ」



どうしてこうなってしまったのか。

怒り狂う魔族を前にして、どちらが先に戦うのかということで喧嘩を始めるミリアとマクスウェル。

その何とも言い難い光景にサモウラの怒りはますますヒートアップしていく。



「ごちゃごちゃとうるさいですよ。面倒なので二人まとめてかかってきなさい。たかがヒト族風情が私とまともに戦えるとでも思っているのですか?」


「あーもう、分かったわよ。ここは正々堂々とジャンケンで決めましょ!それから、制限時間は一人二十分。時間が経ったら交代。それでいいわね」


「いいでしょう。それではいきますよ」


「「最初はグー。ジャンケン、ホイ!あいこでしょ!あいこでしょ!あいこでしょ!」」



サモウラの言葉は二人の耳には届いておらず、対戦相手のことを放置して激しいジャンケンバトルを繰り広げる二人。

そんな彼女たちの姿に苛立ちを覚えるサモウラであったが、その感情を内に抑え込み、殺意の色をより濃くしていくのであった。

そして ──────── 。



「よし!僕の勝ちです。まずは僕からいかせていただきます」


「ちょっと二十分だからね!二十分経ったらちゃんと代わりなさいよ」


「分かっています。すみません、お待たせしました。それでは始めましょうか」


「フゥー・・・。茶番は終わりましたか?それでは綺麗に細切れにしてさしあげましょう」



ザッザッザッ ──────── 。


マクスウェルが前へと進み、ホームの前で数十メートルの間隔をおいてサモウラと向き合う。



「ご…ご主人様、止めなくてもよろしいのですか?」


「好きにさせておけ。剣士っつうのは、同業者をみると斬り合いたくなるもんなんだよ」


「そ…そうなんですね」


「くだらん。わっちは自室で魔法書を読んでおる。終わったら飯にするのじゃぞ」



静かに向き合う二人。

もちろん真剣での戦いであり、模擬戦などではない。

サモウラに至っては、むしろ殺す気満々な様子で相手を睨みつけている。

しかし、相対するマクスウェルの心は不思議と落ち着いていた。

初めて対峙する相手、初めて剣を交える剣士、そして初めて戦う魔族。

この時点で彼の頭の中にはこの戦いの行く末など微塵も考えられておらず、ただ自分が積み重ねてきた鍛錬の成果を思う存分振るうということしかなかった。



「フゥー・・・。いきます」



タンッ ──────── ギィン!!



「グッ…」



キィーン ────── ヒュン、ヒュン、ヒュン、ヒュン、ヒュン。


キンッ、キンッ、ブシュッ、キンッ、ブシュッ。



まず先手を取ったのはマクスウェル。

思い切りよく踏み込み、その強靭な足腰からくるエネルギーを一気に爆発させて瞬く間にサモウラとの距離を縮め、頭上から力強い一撃を振り下ろす。

助走もつけ、その勢いを余すことなく剣に乗せて打ち下ろした完璧な一撃。

しかし、その斬撃はサモウラによって難なく受け止められる。

そのスラリとした細身と力強さとは無縁なほどに華奢な腕、さらに刀身の細いスピアによって生み出された光景は、彼らの戦いを見守っていた者たちを驚かせた。

しかも両腕を使って振り下ろしたマクスウェルに対して、サモウラは右腕一本で受け止めてみせたのだから、彼女たちが受けた衝撃は果てしないものであった。

そして、その攻撃を軽くいなした後、サモウラはすぐに攻勢に転じて速く鋭い剣技からマクスウェルに傷を負わせたのだった。



「あわわわわ。大丈夫なんすか?あの魔族かなり強いみたいっすけど」


「け…剣速は相手の方が上回っているようですね」


「マクスウェル君・・・」


「アンタたち黙って見てなさい。アタシとアイツがいつも誰に鍛えられてると思ってんのよ。あの程度じゃまだまだ慌てるほどのことでもないわ」



開始早々にマクスウェルが負傷したことにより慌てた様子をみせるスズネたちであったのだが、すぐさまミリアの言葉によって落ち着きを取り戻す。

そして、実際に反撃を受けたマクスウェルもまた慌てることなく距離を取って相手の分析を進めていた。


《あの細腕一本で僕の一撃を止めるなんて。魔族というのは見た目以上に身体能力が高いようですね。スピードはまだ未知数ですが、剣速においてはやや分が悪いか…。まぁ〜その程度であるならば戦いようはいくらでもあるんですけどね・・・そう甘くはないでしょう。ただ一つはっきりしていることは、あちらから動いてくる気配が無いところをみるに、僕は完全にナメられているようですね。それならそれで、油断してもらったまま討たせてもらいましょう》



「フゥーーー。よし!」



タタタタタッ ──────── 。


ブゥン ───── キンッ。


タタタタタッ ──────── 。


ブン、ブン ───── キンッ、キンッ。


タタタタタッ ──────── 。


フォン、フォン、フォン ───── キンッ、キンッ、キンッ。


タタタタタッ ──────── 。



「下等なヒト族ごときが私の周りをうろちょろするんじゃないわよ」



ギュンッ、ギュンッ、ギュンッ ───── ヒョイッ、ヒョイッ、ヒョイッ。



「僕は至って真剣ですよ」



フォン、フォン ───── ブシュッ、ブシュッ。



「クッ…お〜の〜れ〜」



サモウラの右肩と左頬から血が流れる。

簡単に捌ききれると高を括っていたのだろうが、ただ実直に進み続けたマクスウェルの剣が彼女へと届き、ようやく傷を負わせることができたのだった。



「やったっす!攻撃が届いたっすよ」


「フンッ、あの程度で喜んでるようじゃまだまだよ」


「・・・・・」



歓喜の声を上げる仲間たち。

それとは対照的に明らかな苛立ちを隠そうともせず、サモウラは眉間にしわを寄せる。

そして、クロノはただ黙って戦いを見つめている。


ここまではマクスウェルの作戦勝ち。

真正面からの剣速勝負では分が悪いと判断し、スピード勝負で相手を撹乱しながら攻撃を加え、相手の攻撃に関しては躱わすことに集中しつつ隙をみて反撃に出るというヒット&アウェイを徹底したのだ。

しかし、これはあくまでもサモウラがマクスウェルのことを格下であるとナメきっていたからこそ使えた戦法であり、彼女の表情からみてもここからの戦いにおいて油断というものは無くなったと考えたほうがいいだろう。

はてさて、ここからどう戦ったものか。

マクスウェルがそんなことを考えていた中、二人の戦いを真剣な眼差しで見つめていたミリアが声を上げる。



「マクスウェル!半分経ったわ。残り十分よ」


「はいはい、分かりましたよ。それでは、もう一段階ギアを上げさせてもらいますよ」






最後までお読み頂きありがとうございます。

突如として始まったマクスウェルとサモウラの戦い。

魔族の身体能力の高さに驚きつつも、さらなる攻勢に出ようと考えるマクスウェル。

そんな彼に対して刻一刻とタイムリミットが迫る。


次回『ミリア VS サモウラ』

お楽しみに♪♪


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