表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/33

シーフのツール

 その日はシーフのツールを受け取る日だった。俺は再び細工師ギルドを訪れていた。マウス氏は、俺がツールを手にいれたら約束をはたさないのではないかといぶかっていた。

 シーフのツールを提供して『そのツールを使ってシーフのツールを盗んできてほしい』というのは、矛盾を含んでいる。俺がツールを受け取って、そのまま姿をくらます可能性が高い。

 だが俺は「必ずツールを回収する」と約束した。相手は、細工師ギルドのギルドマスターだ。この人脈は貴重だ。計画の実行中に、複雑な機械を注文する必要が出てくるかもしれない。


 そして俺はシーフギルドの古本屋に突入した。シーフの仕事には昼も夜もない。シーフギルドから人がいなくなることはない。だったら強盗で行くしかない。

 俺はハイド状態でギルドホールに踏み込んだ。中には数人の客がいた。俺は、以前訪れた時に面が割れているが、幸いにしてその時に見た顔はなかった。

 そのままつかつかとツールのショーケースの前まで近づくと、鍵と二種類のトラップを無理やり一度に外した。そしてマウス氏のツールをウォルフ君のツールとすりかえると、トラップと鍵をかけ直した。

 ここで盗みがばれても、むりやり逃げるつもりでいた。しかし、そうはならなかった。


 周囲の様子を見ると、誰もこちらを向いてはいない。誰にも気づかれてはいない。ひょっとすると、これが千六百万レベルの本当の意味なのかもしれない。


 俺がハイド状態で盗みをはたらくときには、誰もこちらを見ない。つまり、運の要素もスキルの一部ということだ。


 近くに、シーフ用変装キットが売られていたので、これもついでに持っていくことにした。ウイッグとつけひげと、特殊メーク用の化粧品だ。トラップはなかったので鍵を開けて、ショーケースから自分の雑嚢に入れる。

 その際、十秒くらいかけてゆっくりと盗みながら、店内の様子を観察した。

 すると、こちらを向いていた人間も盗む瞬間には正反対の方向を向いてしまった。やはり、俺の盗みには誰も気づいていない。

 自分で自分のスキルが怖くなってきた。誰にも気づかれずに銀行強盗もできるような気がしてくる。

 とりあえず、用は済んだ。俺はすみやかにシーフギルドから撤退した。


 細工師ギルドに凱旋すると、マウス氏にツールを返還した。マウス氏は俺の仕事にいたく感謝した。なにより、逃げずにきちんと仕事をしてきた事に感動していた。

 シーフはうさんくさい人間と認識されているものだ。しかし俺は俺の仕事にほこりを持っている。誠実なシーフもいる。なんてことは全然ありません。

 スリは悪党です。悪党がうさんくさいのは当たり前です。

 そんなような内容をマウス氏に伝えると「同じ職人としては理解できる」と言われた。


 マウス氏は、お礼に何か作りたいと言い出した。そこで、魔法の鍵や魔法のトラップを解除するための、俺が考案した全く新しいツールを要求してみた。すると、マウス氏はミスリル銀じゃないと強度が保てないと言い出した。

 まあ、多くは期待しないと言うと、プライドを刺激されたのか、絶対に作って見せると言い出した。一つの事を極めるためには、必要な姿勢なのかもしれない。

 俺は、必要になったらまた取りに来ると伝え、おいとました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ