十 センターにて
根島は形山が話す報告を黙って聞いている。
「昨日も図書館で熱心に本を読んでまして、最近はそんな感じの日が続いてます」
「それはあなたも一緒に?」根島が驚いて口を開く。
「そうなんですよ、最近は自分とばっかりつるんでまして、ご報告できるような交友関係が無いと申しますか、明日も一緒に花見に行く予定でして……」形山は申し訳なさそうに言う。
「そうですか、それならそれで結構です」
「まあ、何か変化があれば気付く関係にはなったかと」と少しだけ胸を張った。
「の様ですね、それを維持していただければと思いますよ」
「では、失礼します」そう言って部屋を出ると、躊躇うことなく川奈の部屋を目指した。扉を三回ノックしたが、返事がない。
「今日はお留守ですか」とぶつぶつつぶやいて、ここに来たことを残すべきか逡巡したが、また今度で良いかと思い直し踵を返した。
◆
形山が出て行くと根島は部屋を片付けて、センター長室に向かう。廊下の先を形山が歩いているのが見え、まだ中に居たのかと訝しんだ。出口の方に向かうのを見てまあ良いかと思い直す。階段を上がり廊下をいくつか折れてセンター長室の扉をノックする。
「どうぞ」と三上の声が返ってくる。
「失礼します」と言って部屋に入ると、三上は机に向かって何か書き物をしている。
手元の書類に視線を落としたまま「どんな状態?」と聞く。
「城宮道雅の交友関係はあまり広がっていないようで、形山剛士とばかり会っているそうです」
「そうですか、それはそれで面倒がない、良いんじゃないでしょうか、他には?」とようやく顔を上げ根島を見上げる。
「最近は図書館で本を読んでいることが多いとのことでした」
「本ですか、賭博場通いは止めたんですかね、読書なんて殊勝なことじゃないですか、結構、結構」と言うと嘘か本当か分からない笑みを湛えた。
「ところで……」と話を続ける。
「城宮道雅のことだがね、このまま延々とこんな真似を続けるのもどうかとは思わんかね?」
「はあ、確かにおっしゃる通りだとは思いますが……」
三上は「そこでだ」と言うと少し間を取る。
「転生予定者に城宮道雅を加える、というのはどうだろうか?」幾分落とした声で続けた。
「転生とは…… 此岸に送り返すということですか?」
「そう言うことになりますね、やはり何事も原因に対して正しい対処を行うことがより良い解決方法だと思いましてね」
「しかしそれは内規違反では……」と根島は口ごもる。
「難しいですか? まあ何とか手がないか考えてみてください」と三上は鷹揚に言った。




