リシハ
公爵家を勘当でも、追放でもないわけで、あくまでも分家したということであるから、父公爵以下家族、家臣、使用人全員の見送りを受けた。
さすがに、父母は後悔ということはなかったが、後味の悪さを感じていた。
「あそこでいいのか?」
と公爵は今さらながら確認した。
「ごめんなさいね。」
と公爵夫人が、今更ながら言った。
「大丈夫です。わたしなりに考え抜いた・・・私のスキルに都合のいいところだと判断したのです。」
と返した。
「兄上。お元気で。」
「もう嫡男はあなたです。私を分家の格下と扱い下さい。」
「いえ、悪迄の私の兄上であることは忘れません。」
律儀そうに嫡男となった異母兄は頭を下げた。
「では。」
皆の無挨拶を受け終わると、彼は馬車に乗った。
馬車と騎馬での旅は10日ほど続いた。公爵家領がそこまで大きいと言うわけではない。かなり遠い、飛び地のようなところなのである。複雑な事情でスジコ公爵家のものとなったところである。国の西北、北の海に注な買っているが港は小さな漁港に毛が生えたような港が一つあるだけである。領内のかなりの部分は荒野で野獣、時には魔獣も跋扈していた。沙漠ではないが、雨は乏しいというほどではないと言う程度、地下水が湧き出る地に点々と村や都市もかなり小さいが、がある状態である。数少ない都市のひとつに、都市近郊に公爵家代官が臨時に過ごす屋敷があった。代官は常置せず、必要な時期に公爵家から送られてくるのが常だった。あと、漁港に毛の生えたような港があり、小さな港湾都市もある。全体的にみると貧しい方であるというところである。
「新たな領主であるサーケ・スジコだ。」
「お待ちしておりました。」
と彼を迎えたのは、5人の中年の男女だった。男が4人、女が1人。紅一点の女は、巨乳の美人で・・・ということはなく、中年の太ってはいないが年相応のやり手婆ではない、やり手おばさんというところだった。この領地の中心、地理的な意味ではない、都市アバの責任者達である、彼らは。彼らはこの都市とその周辺地域の行政と地代・賦役の徴収か領主との仲介をするとともに、領内他の都市、村落に領主からの命令、通知、要請を通達をするとともに、領民達からの要請、嘆願、訴訟事などを取りまとめ、提出などを行うトップである。領主の代官と集団市長といったところであろう。
彼らに従って、建物、市庁舎に入った。応接間に入り、上座の椅子につく。
「地代も賦役も今まで以上に増やすことはない。また、事情があれば減免などには幅広く応じるから、申し出るようにしてもらいたい。」
とまず、サーケは宣言するように言った。それを聞いて5人はホッとしたような顔だった。それから領内の説明があった。それが一段落すると、
「それでご領主様のお住まいのことですが。」
「代官は、ご存じの通り常駐しておりませんでした。」
「視察に来た時に滞在する館がありますが、あくまで2週間程度の滞在用のものに過ぎません。」
「新たな邸宅が必要かと思いますが、新たに作るとなると・・・。」
「日数が必要なので・・・その間のお住まいについてですが。」
新たな館を建てることへの負担感について言いたいようだった。できるだけ小さい、簡単な館にしてほしい、ということのように思われた。
「新たな館を作る必要はない。この都市の近くに山・・・というか丘というか・・・があるな。そこを私の住まいとする。少し手伝いを求めることはあるかもしれないが、負担を求めることはない。」
「は?」
きょとんとした。訳が分からないという顔の5人に、さらに追いかけるように、
「私には、自宅つくりのスキルがあるのだ。あの岩山を私の自宅にする。心配するな。あの山に着いた日から、我が家とするから心配するな。ああ、食糧と水はいらん・・・いや、3日分ほど用意してくれ。その妊婦も頼む。分かったな。」
「はあ?」
「まあ、今日は代官の宿に泊まる。準備は出来ているだろうな?」
「そちらの方は大丈夫です。」
「それならいい。案内を頼む。」
とサーケは満足そうに頷きながら言った。
「今度の領主様は・・・まあ、安心だな。」
「しかし、自宅を作るスキル?宮殿でもつくれるのかのを?」
「掘っ立て小屋くらいかもしれないて。」
「まあ、こちらに負担は欠けないからいいんじゃないの?」
「翌日、様子を見に行ってみようじゃないか?」
5人はそんなことを言い合った、彼がいなくなると。




