リシハの地についてくるのか?
スジコ公爵家邸宅の大広間で、次期公爵としての嫡子を第二夫人腹の次男、本妻の養子にした上で、ということと長男であるサーケには、リシハ、侯爵家領の最北の荒れ地の多い地を与え、伯爵としての地位を与える、ということを親族や地域の役人から公爵家とかかわりのある者達の前で厳かに発表された。サーケは上段に座る公爵夫妻に深々と頭を下げ、その脇に立つ異母弟にも頭を下げた。
「速やかに準備を整え、領地に向う様に。」
との父、公爵の指示が頭の上に響いた。
「分かりました。」
と再び頭を下げて、彼は退席した。
このまま、サーケは新次期嫡子を祝う宴にも出席することなく、ひたすら旅立ちの準備をすることとなった。ただ、両親が冷淡であったわけではない。はっきりと次期当主を定め、異論や反対する動きが起こらないようにという配慮である。実際、出発時期は定められてはいない。直ぐにではなく、ゆっくりでいい、と良心から言われていた。
ちなみに、第二婦人、義母というべきか、は、彼の所に訪れて、土下座して、
「今回のことは、息子が画策などはしておりません。でも、恨んでも余りあることであねことは確かです。どうか、裏毛なら、私を怨んでください。」
と言ったほどである。
「江藤とが公爵家の当主に相応しい器だっただけのことです。侯爵ご夫妻は、公爵家の将来を思い、当然のことを下までです。それに、あの地は私から望んだものですから。」
と言って手を差し出し、彼女を立ち上がらせたーケだった。
その後、イクラ侯爵家令嬢との婚約が破棄になったとの連絡が、家令を通じてされた。もう決まっていたことであり、当人からも言われたことではあるが、あらためて自分のわびしさを感じた。
自分はついて行かないという侍女や他の使用人達に、出発の支度を手伝わせながら、領地について生活が整うまでの間、突いてきてくれる者達、その後は彼を置いて去ることを確約、を公爵に打診していた彼の元に、
「坊ちゃん。ついていきますからね。」
「余生は差し上げますよ。」
と言う者達がやってきた。
引退した、とは当人達は思ってもいなかったが、公爵家騎士団の騎士達だった。つまり爺さん達だった。その中でも、彼に拳などの手ほどきもした、彼付きともいえる騎士達だった。既に息子たちは一人前になっており、騎士としての家の当主の地位は息子たちにとうに譲り、孫には甘い好々爺になっていると聞いていた。
「お前達・・・確かに腕は衰えてはいないだろうが・・・北部の辺境だそ。可愛い孫の顔が見られなくなるぞ。」
と呆れた顔でサーケが言うと、
「もう、思い残すことはありませんからな。」
「義務も地位もありませんしね。」
「もう息子も娘も独立しましたし、女房には先立たれましたすらからな。」
たせからついて行きます、ということだった。
「全く・・・しかたがない連中だな。後で泣いても知らないからな。」
と言うと、
「そんな軟ではありませんて。それに、坊ちゃんの傍にいればうまい酒を・・・しかも、冷えたビールもワインも飲めますからな。」
と言って彼らは笑った。
「全くお前達は・・・そっちが本音か?」
苦笑すると、
「わかりましたか?さすがは坊ちゃん。」
と言って彼らはまた笑った。
「わかった、分かった。」
と苦笑しつつも、嬉しそうな顔をしたサーケだった。
「とはいえ、同行はむさくるしい爺さんばかりか?ちょっと寂しいな。」
と軽く笑うと、
「若くなくて申し訳ありませんね。」
という声が聞こえて来た。
振り向くと、やはり彼の子供の頃からの彼付きの侍女である、今では公爵家の侍女長がいた。
「まさか、お前もついてきてくれるというのかい?」
「若くないといけませんか?そろそろ侍女長の職も後任に譲ろうかと思っていたところですし、最後の娘も嫁に行きましたから。少なくとも、坊ちゃまの新しい侍女達がまともに働けるようになるまでは、お世話させてくださいませ。」
と一瞬断るなビームを眼光から発してから、頭を下げた。
「侍女はスキルに保存されてしまっているんだが・・・。」
とは言えず、
「まあ、あいつらの仕事は悪くはないが、スマートさや気が利くというようなものではないから、彼女の指導も必要かな?それに、掃除とかとか何とかの負担は極端に少ないから、彼女の体に負担はないだろう。」
と心の中で決めて、
「では、頼むよ。お前がいると心強い。」
頭を上げた彼女は、さも嬉しそうだった。
「私もいますよ。」
それは、彼よりは年上だが、若くはない、というのは失礼この上ない、男装というのではないが、公爵家領の管理業務をつかさどる代理菅食の制服を着ている、スマートで長身、胸はやや小さめの栗毛で褐色の肌の女だった。
「まあ、お前のような奴が必要だが、いいのか?」
現地採用は時間がかかるし、現地の村役たちに任せていると、不正とまではいかないにしても、いいようにしてやられるから、彼女が、なかなか優秀なのは知っていた、きてくれるのは、早々に領地管理を開始するのにも、家計管理をさせることもできるので大助かりではある。
「トップで、存分に采配を振るえますから、のぞむところです。」
と小さ目な胸を張って宣言するように言った。
「わかった。よろしく頼むぞ。」




