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自分だけの楽園スキルの運命  作者: 安藤昌益


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7/21

婚約破棄を言いに来ました

 明日、正式にスジコ公爵家の嫡男、次期当主の座を失うことになる日だった。既に根回し済み、親戚にも家臣、使用人どころか、外部の者達、付き合いのある貴族や出入りの商人、取引先などの関係者にも連絡が終わっていた。後は、親戚が集まって参列している中で、現公爵がサーケの嫡男、次期当主の地位を剥奪、彼の異母弟にその座を与える、彼がサーケの実母の養子になる、そして、サーケには辺境の土地が与えられ、伯爵位を与えるということが言い渡されるのである。既に伯爵位は購入され、国王の了承を受けている。全ては形式的な儀式が明日と言うだけで、全ては決まっているのである。


「あ~あ。よく眠れたわ。本当に熟睡、疲れが残らない、今日もやるぞ、という気持ちになるわね。」

とは妹。その後に、やはり元気そうな弟。

「それならいいな。朝食の支度は出来ている。お前達もテーブルにつけ。」

とサーケは微笑んで命じた。

「言われなくても座りますよ。」

 妹は、そう言いながら座ったが、じっと侍女の顔を見ていた。

「何度見ても、普通の美人よね?本当に悪霊なの?」

「元をつけてくれよ。兵舎からついてきてしまったようだ、6人とも。どうやってついてきたのかはわからないが、スキルを展開すると現れるから、スキルそのものになったのかもな。まあ、心配するような存在ではないことは確かだよ。」

 テーブルの上には、普通より少し豪華な朝食が並んでいた。品数、量、種類はそうだが、味はすこぶる美味い。早速3人揃ったところで、食べ始めようとした時、

「朝からごめんなさい。話があるの。」

と女の声が玄関から聞こえた。


「本当に朝からごめんなさい。」

 小柄だが、元気さ全開のような金髪の、少女から脱皮したばかりの美人だった。

「まあ、立っていないで、そこの椅子に座わってくれないか?ああ、彼女にもお茶と食事を出してくれ。」

とその女性と侍女に彼は指示した。

「それで、話というのはなんだね?私の婚約者殿。」

 侍女が、直ぐに食事の持った皿と茶の入ったカップを持ってきて、彼女の前に置いた。

「私は、あなたとの婚約を破棄します。」

「それは既に両家の間で決まったことではないか?わざさわざ・・・。」

「私自身の口から言いたかったのよ。」

と彼女は叫ぶように言った。

「我が婚約者らしいな・・・。律儀だな、相変わらず。」

と彼は言ったが、

「お兄様に付いて行くという選択はなかったの?あくまで、私は婚約者だからと。」

 妹の方は、意地悪く追及した。彼女としては、義姉になると思って、彼女なりに丁重に接していた相手が、兄を簡単に捨てるのが許せなかったのである。

 シシャア・イクラ。イクラ侯爵家の長女、サーケの婚約者、勿論要しようの頃に親同士が決めたものだが、幼い時から行き来して、幼馴染であり、成長してからも関係、仲は悪くはなかった。彼女の場合は、戦聖であり部門の貴族の嫁としては申し分ないものだったし、鍛錬を怠らず立派な腕前になっている。

「よせよ。どうしようもないことなんだから。とてもあんな辺境に行きますなんていう奴はいないよ。そんなことを要求も期待もすべきではないさ。ああ、君のことは恨んでいないよ。まあ、朝食をとってくれよ。」

と少し寂しそうに言った。

 サーケは、シシャアを嫌いではなかったというよりは好きであった。シシャアの態度は、決して冷淡ではなかった。仲のよい幼馴染のような関係であり、普通の家同士で決められた婚約者の関係としてはかなりいいものだったから、普通であればそのまま結婚に至ったであろう。それが、サーケ側の事情が変わったせいであり、彼女の側は変化はなかった。彼の嫡男の座が不安視されるようになったのは数年前からだったが、よく今日まで結論を、婚約破棄を留保していたものだ、最後の可能性を信じていてくれたともいえるのだから、感謝すべきかもしれないとサーケは思う様にしていた。

「わ、私は・・・あなたのことを嫌っているということはなかったのよ。でも。」

「もともと好きと言うほどではなかったのよ、と言うことね?」

とシシャアの言葉に、ジャガが追及するように言った。

「そ、それは。」

「もういいかげんにしろよ、我が妹よ。我が元婚約者殿。我が家の朝食を食べてくれ。これで・・・多分最後だろうから・・・。」

「わかったわ・・・ありがとう・・・。ん、美味しい・・・美味しすぎる。」

「そう言ってもらえると嬉しいよ。」

「侍女達も・・・君も知っているだろう?子供の頃からの私付の侍女達さ・・誰もついてこない・・・辺境に行くのは勘弁してください、母上に嘆願したよ。だから、君を責めはしないよ。」

「私と一緒に・・・え?彼女達が?」

「兄様。その話、初めて聞きましたよ。」

「本当ですか?」

 サーケは、答えることなく、大きなため息をついただけだった。

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