聖樹を求めて来たエルフの女王2
エルフが、特にハイエルフが自然の中、聖樹の森の中で静かに孤立して暮らす平和的な種族だという信仰に近い考えがあるが、ある意味都市伝説の類、エルフ側の宣伝工作、と悪意に解すれば言えることである。ダークエルフが邪悪だというのも、ダークエルフという定義はあいまいでいわゆるダークエルフとされる形態以外のエルフもそう言われることもあるが、同様であるが。種族間の闘争、戦争も、部族内の内部対立、闘争も人間同様に、それ以上に陰湿で激しいものがある。聖樹という存在にしても、植物が他の植物を駆逐・排除するために毒まで排出、散布するのと同様に、個体同士の対立、闘争も、複数の系統があり系統間の闘争は人間の頭脳戦も顔負けの戦術・戦略まで持っているのである。その闘争に、エルフ達は一心同体という二人三脚で係り合っているのである。
だから、聖樹のことでと、戦士達を引き連れてきたハイエルフの女王が自分に会いに来た、ということにサーケが身構えるのは当然のことだった。流血を、この場合は一方的にハイエルフ側の流す血であるが、を彼は覚悟していた。
「あなたの邸宅は?」
屋外に椅子とテーブルが並べられてそこに女王が座り、その後ろに5人の男女の戦士が立ち、対面にサーケとその2人妻、勇者と魔王、が両脇に、妹が勇者の隣に座っているのだが、女王は第一声として、訝し気にその状況を質問したのだった。当然、自分が低く見られて、屋外で、庭で対応されていると思ったのである。だから、名乗る前に、さらに詰問するように質問した。その態度に怒る寸前の女達を制して、サーケは、
「周囲の雰囲気が感じられませんか、女王陛下。ここは、私の邸宅の中なのですよ。私の特殊なスキルによりつくられた、私の家としての空間なのです。」
「?」
とは思ったものの、女王は流石にそれを感じ取ったため、馬鹿にされたといきり立ちかけた戦士達を制した。
「分かりました。確かに外は少し汗ばむくらいの気温なのに、ここは全く暑くもなく、寒くもありませんね。大変失礼しました。」
と彼女は小さく頭を下げた。頭を上げると、
「私はエベツの地のハイエルフの女王、ホップ・バクガと申します。名乗りが遅くなり申し訳ありません。」
「いえ、気にしないで下さい。私がこの地の領主であるサーケ・スジコ伯爵です。両脇にいるのが妻である魔王ラベンダと勇者ハマナです。その隣にいるのは私の妹です。それで、ご用件はどういうことですか?」
魔王、勇者という言葉に5人のハイエルフの男女はざわついたが、流石に女王は同様を表情には現わさなかった。
「この館?に聖樹があると聞きました。聖樹の管理は、私達ハイエルフにしかできません。」
それは事実を指摘するというより、脅迫に近かった。無条件で引き渡せ的な。
女3人が動きかけた。彼はそれを制した。
「そうおっしゃるのであれば、聖樹に聞いてみましょう。これから案内します。それから申し上げておきますが、3つ。多分、どこから聖樹のことを耳にしたかは存じませんが、お伝えしておきます。聖樹は一本だけではありませ。そして、大木などではありません。最後に、この私のスキルによってここに存在しているということです。」
ふふん、何を世迷言を、と最後の言葉だけに反応して軽蔑の眼差しを向けた女王の表情を見たがサーケは無言で立ち上がり、女王にそれに従うように立ち上がった。
「え?これが聖樹?え。聖樹の声?え?私に用はない?待ってください、わ、私は・・・私は負け犬ではない・・・です。だから・・・そんな・・・どうしたらいいと・・・。そんな・・・。」
短時間のうちに、さまざまのことが過ぎ去った、サーケ達にはそのように見えただけだった。ハイエルフの女王は、聖樹の前でがっくりと膝を落として、動かなくなった。主を心配して5人のハイエルフの戦士達は駆け寄り・・・ということはなく、1人、また一人と逃げ去っていった。
彼女、王女は去って行く家臣達を止めようともしなかった。誰もいなくなってから、声を出して泣きだした。
「?」
唖然としてしまってどうしたらいいかわからなかった。とにかく、彼女が泣き止むのを待つことにした、実際、それしかなかった。が、それだけではすまなかった。1人の女ハイエルフが戻ってきた、身を隠しながら。そして、短剣を抜いて女王に斬りつけようとした。すかさず、勇者が短剣を砕き、魔王が彼女を叩きつけた。
「契約する聖樹のない女王など・・・。ここまで付いてきてやったのに・・・。その首を持っていけば・・・。」
と勇者に、優しく?、とてもそうにはサーケには思われなかったが、諭して吐かせた結果でてきた言葉である。
「ふえ~ん。助けて~。」
とハイエルフの女王がサーケに抱きついて離れようとしなくなったのは、彼が暫く一人になって、と開いている九寝室に連れて行こうと、顔を近づけて、そのことを囁いた直後からだった。ちなみに彼女は人妻というか、元人妻である。




