勇者と魔王も追放➂
だ
「勇者様も・・・。私の場合と同じよね・・・。全く同じことを言われるとはねえ。まるで、後足で砂をかけるような行為を・・・。私のことを愛しているとか、最高だとか言って、欲望丸出しに抱きついてきて、何度も・・・だったくせに。まあ、勇者様はしかたがないかもしれないけど?」
「あら、喧嘩を売っているのかしら?何時でも相手になってあげるわよ。」
「冗談よ。魔族の女から見ても、勇者様は美人で魅力的だということは認めるわよ。あなたにあんなことを言う男も、その男達を寝取った女達も馬鹿だと思うわよ。」
「ありがとうございます、魔王様。魔王様も、美人だと思うわよ、私よりも・・・う~ん、それは微妙かもだけど。どちらにしても、これだけの美人二人に、ひどい仕打ちよね。」
「全く、その通りよ。スジコ伯爵様はどう思う~?」
と魔王ラベンダがサーケに抱きついて、顔を擦り付けて質問した。それに対抗するように、勇者ハマナも同様にし始めた。
ここまで来ると、酒の酔いがまわっているはずなのに、2人の美人が酔いが完全に回っているのに、サーケは頭が冷えていくような感じがした。だから、彼女らが自分好みの美人、長身でスマートで、それでいて胸はそこそこに大きく、引き締まったウエット、形のいい尻、知的な感じでいて小悪魔的に可愛さも持っている黒髪の美人。2人の裸体を考えると、欲望がこみ上げてくる。しかし、何とかここは止めなければと思ってしまった。
「ああ、魅力的ですよ。もう、お2人に篭絡されてしまっていますよ。でも、お二人を裏切った男共は後悔しているんじゃないですか?きっと、以前のめくるめく素晴らしい日々を思いだして。どんな日々だったんですか?」
と質問してしまった。
「それはねえ。」
「ええとねえ。」
とすっかり酔いが回っている2人は語りに語って、そのまま眠ってしまった。
そして、翌日、2人はある時点で、すごく後悔することになったのである。
昨日の自分の話は、ここに来る前に自分達がサーケ以外の男達と散々と愛しまくった、激しい営みをしてきたかを自慢話したようなものだと思い至ったからである。
「いや、あれは過去の男に未練があるというのではなくて・・・。」
「そうそう、過去の男のことは忘れて、ここに・・・この楽園のために身体で払うとかいうのではなくて・・・。」
「何言っているのよ。だから誘惑してとかではなく・・・。」
2人は言えば言うほど、にげばがなくなっいてるという状態になってきた。
「わかっていますよ。とにかく、暫くお客として歓迎しますよ。いろいろお話が聞ければ結構ですから。」
とサーケが笑顔を作って2人をフォローしてくれた。
というわけで、勇者と魔王が仲良く居候することになったのである。今の時代、既に魔族と人間が複雑に連衡合従している現在、魔王と勇者が相対立する不倶戴天の敵という関係ではなくなったとはいえ、仲良く同居する関係にというところまではいっていない。別に二人は恨みも何もないし、行先もなく、戻るべき場所もなくなっていたから、ここで一緒にいることには躊躇べき理由があるわけではない。
「坊ちゃん。何時の間に、美人を2人も連れ込んだんですか?」
「父上も手が早かったが、それ以上ですな。2人同時にとは。」
と言って揶揄うのは、老騎士達だった。
彼女達の存在を隠すわけにはいかないし、別に隠すつもりもなかったから、朝食の後全員、屋敷の中にいる者達、を集めて紹介しようとしたら、彼らを成立させて3人で、彼を中央にして立ったのだが、彼が口を開く前に声がかかったのである。
「コホン。残念ながら、まだ、そのような関係ではない。右が魔王ラベンダ・オタル様。左は勇者ハマナ・タキカワ様。故あって・・・というより、魔樹と聖樹の導きで・・・ああ、正直に言えば・・・いいですか・・・お二人とも政治的な理由で・・・かなり不当な理由で追放されてだ、こちらに来られることになった。これも何かの縁ということでしばらく滞在ことになった。よろしく頼むよ。」
と両脇を見ながら言うと、
「まだ、ということはそのうちということですかな?」
「頑張って下さいな、坊ちゃん。応援してますよ。」
と黙ってくれなかった。
「お前らは・・・。」
と呆れたという風にサーケは助けを求めるように、侍女に視線を向けた。すると、彼女は鋭い、厳しい観察眼を全開にして、2人の頭からかかとの先まで見落としてはならないという気迫、オーラを立ち昇らせて視線を動かしていた。
「は~。」
と心の中でため息をついたサーケではあったが、左右の二人は余裕でにっこりと微笑んで、
「もう元魔王ですよ。しばらくお世話になりますよ。」
「私も元勇者ということです。私もしばらくお世話になります。もちろん、ずっとお世話になってもかまいませんが。」
「ちょっと・・・。私もずっとお世話になることはかまいませんよ。」
「まあ、2人とも同じだということで。」
「うん。」
と頷きあう二人だったが、一瞬火花が散ったように誰にも見えたように感じた。




