聖樹と魔樹
「魔樹と聖樹がいくつも並んでいるなんて、あり得ないことですよ。」
「まあ、でも・・・世に言う聖樹や魔樹よりずっと小さいように思いますが。」
「でも、逆に常時実をたっぷりとつけているというのも聞いたことはないですね。」
「まあ、勇者様と魔王様が並んでいるのも珍しいですね。」
サーケは左右のいる女性二人を交互に見て、小さく微笑んだ。魔王ラベンダと勇者ハマナ。
昨夜、女魔王ら弁だに取りあえず食事を、魔樹は翌日ということにして、侍女を呼び、一人分と食事とついでに酒をも追加を命じようとしたところ、
「主様。実はもう一人お客様がお出でになっているのですが。」
と言い出した。その客というのが、勇者ハマナだった。茶髪の長身の知的で、ちょっと年齢以上の色っぽさを持った美人だった。その整った容姿がを隠せない軽装の鎧を着ていた。
「申し訳ありません。季節外れの穀物や野菜の畑を見ているうちに聖樹を感じさせる茶の小木を魅入っているところを、この侍女の方に見つかって・・・。」
と彼女は侍女の一人に続いて天幕に入ってきた。
「勇者が何の用かな?」
「おや、魔王様?その言葉そのままお返ししたいけど、恥ずかしながら自分でもわからないよ。気が付いたら、伯爵さまの邸宅?いたのよね。」
「なんと奇遇だな。私も同じだ。お互い、伯爵さまの迷惑をかけぬように、仲良くするか?」
「全然同意。」
「では、ゆっくり、こちらに来る前の事情を教えてください、食べ、呑みながら。ということで、夕食と酒を2人分追加してくれ。」
「はい。」
ということになったのである。
現在はかつてのように、魔族と人間・亜人が、魔王と勇者が単純に戦う時代ではないから、魔王と勇者が出会った一触即発ということはないのであるが、やはり緊張感が付きまとう関係にある。サーケは、少し彼らしくもなく、人恋しい気分であったから、また、若い女性と親しく話す機会から随分ご無沙汰していたこともあり、勇者と魔王の間を取り持った。それにどういう触発をされたのか、2人も打ち解けて騒ぐことになったのである。聖樹の実と魔樹の実を付け込んだビールがそうさせたのかもしれない、後からになって彼は思ったが。終いには、3人で肩を抱き合って、語り合った。その翌日早く、邸宅、岩山の頂上と言える聖樹と魔樹の林立、というのには大げさだが、の場所に彼は2人を案内した。
「聖樹と魔樹が、私の自宅の庭に生えたのは初めてのことなのですよ。気が付くと、ここに育っていたのです。」
「あなたがご自宅?をここに建てた?のは、何時のことなんですか?」
「まあ、建てたというより・・・ここを自宅に定めたのは何時という方が適切なのでは?」
「そうね。」
「まだ、一年も過ぎていませんね。」
「えー。」
と魔王と勇者がハーモニーして驚いた。
「聖樹とかというものは、何百年もかけて大樹となるものですから・・・。」
「このくらいの魔樹でもかなりの年数が・・・見たことはないのですが・・・。」
「芽がでてとても小さいうちのものは見たことはあるけれど・・・。数年たっても、少しも大きくなっていなかってような・・・。」
「とにかく数十年に一度しか実をつけないものだから・・・。それがこう・・・。」
「この聖樹と魔樹はどのくらいでここまで大きくなったのですか?」
「それが・・・気がついたらあったんです・・・この大きさで。」
「すごいというか、トンデモなスキルですね。」
とまたまたハーモニーする2人に、サーケは、
「さて、聖樹と魔樹は教えてくれる・・・かな。」
とサーケが呟くと、
「彼女が望んだところがうちしかないから、受け入れたのよ。」
「全く、全然同じよ。」
と彼の後ろから声が聞こえて来た。
少女が2人、立っていた。全裸ではなく、一応彼が知るような年齢相応、彼女らの外見ののであるが、の服を着ていた。
「は?」
「お前が言う聖樹よ。」
「同じく魔樹。」
「まあ、どうしてお前のスキルの自宅内にいるのかは、本当のことは吾らもよく分からない。ただ、我々の種から伝えられて、樹木の中に取り込まれた、あるいは空中に産卵していたものが、お前のスキルにより、お前の自宅に集められ、我らが生まれた可能性がある、ということだ。」
「まあ、我も同意見だ。基本的に合い入れない我々がとうして一緒にいるというのは、お前のスキルのおかけだ、多分。ただな、魔樹と聖樹が相いれないというのは、聖樹と聖樹、魔樹と魔樹同市の争いと同様なものなのだがな。それはともかく、我は魔王のことを他の魔樹より聞いて、ここが彼女にとっても、彼女がお前にとっても好ましいことだと判断して受けたのだ。」
「勇者の場合も同様だ。2人というのは・・・かえっていいだろう?」
「何がいいんですか?」
と困ったという顔のサーケだが、
「私はいいと思うわよ、私だけでなくても。」
「そういうことなら、しかたがないわね。聖樹の意志だし。」
と魔王と勇者はそれぞれ言い合ってから、
「何か問題がある?サーケ伯爵殿?」
とハーモニーして、彼の後ろから胸を押し付けるようにして体を擦り付けた。
「お二人とも、そんなことをしていると、私も男ですから、誤解してしまいますよ。」
ともういいんではない?と囁く理性を、良心で叱咤するサーケは、2人に最後通牒?を突き付けた。
「誤解していいよ~。追放された私達を受け入れられるのはあなただけだから。」
とハーモニーして、同時に彼の耳に息をふきつける、女勇者と女魔王だった。
そう、2人は追放されたのである。




