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第5章:訓練、そして新たな身分(5.1)

第5.1章までお読みいただき、ありがとうございます。

この章はかなり長くなってしまったため、2つのパートに分けることにしました。翻訳ツールを使っていたところ、まるでこう言わんばかりに悲鳴を上げ始めたのです。

「文章が長すぎます。こんなに長い章を全部翻訳するなんて無理です!」と。

そのため、文章をいくつかの区切りに分け、一つずつ翻訳してから繋ぎ合わせることで、ようやく完成させることができました。


また、この場を借りて、物語のアイデアを公式音楽チャンネルへ掲載してくださったNonamestevenさんにも感謝を申し上げます。

『Battle Start!』をはじめ、OpeningやEndingとして公開されている楽曲は各種デジタルプラットフォームでお楽しみいただけます。今後も順次追加・更新を予定しておりますので、ぜひご視聴ください。


最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます。

――第一部:生きた鋼鉄の鍛錬場


現在、ミンは大きな問題を抱えていた。

ゲームシステムがT-80BVMを認識しなくなってしまったのだ。データ不足が原因らしく、これまでのような補助機能は一切使えない。再び動かしたければ、完全な手動操作で運用するしかなかった。

さらに、昨日の「あの人物」も妙だった。

ゲームの紋章が刻まれた徽章を手渡してきたかと思えば、それ以上の説明は何もない。

結果として、ミンは戦車内に唯一残されていた小冊子――

《Confidential Manual Classified Documents - T-80BVM》

と記された機密操作マニュアルを読み直す羽目になっていた。

幸い、内容はすでに翻訳されている。

異世界へ来てまだ二週間しか経っていないというのに、この強力な車両を放棄するのはあまりにも惜しい。

その時だった。

ゲームの任務通知が再び脳内に響く。

【任務:乗員訓練】

・マニュアルに基づき、最大2名の乗員を卒業レベルまで育成せよ。

・支給物資:125mm訓練弾30発、NSVT12.7mm機関銃弾薬50発入り箱×4、燃料500km分。

【報酬】

・全弾薬100%補給

・車体完全修復

・消費なし運用燃料庫追加(5000km分)

(普通、戦車乗員の育成には三か月はかかるんじゃなかったか……?)

ミンはそう思った。

このソ連製トップティアの怪物を扱える人材を探す――。

だが、その候補はすでに心の中で決まっていた。

◇ ◇ ◇

朝霧がヴォルダ西方の谷を薄く覆っていた。

露に濡れた草は、T-80BVMの鋼鉄製履帯によって無慈悲に踏み潰される。

まるで今日が理論ではなく、実践の日であることを告げる無言の警告のように。

城壁の外に設けられた集合地点では、戦車兵装束に身を包んだ二人がミンを待っていた。

「どうしてこんな朝早く城を出なきゃならないんだ? まだ寝ていたかったのに……」

ダリオスが欠伸を噛み殺しながらぼやく。

「忘れたの? 一週間前にあの人から鋼鉄の機械の操縦を教わる約束をしたでしょう」

エリラが呆れたように言った。

巨大な戦車は赤土の上に鎮座していた。

乾いた土埃をまとい、冷たい風が装甲板を叩くたびに、眠気の残る獣の吐息のような音を響かせる。

ミンは変速レバーへ手を置いた。

冷たい金属の感触は、まるで自分自身の意志の強さを映しているようだった。

もはやHUDはない。

Alt+Tもない。

Ctrl+Spaceもない。

マウスクリックの音もない。

あるのは機械式の変速機、本物の操縦桿、光学照準器、自動装填装置――そして、一つのミスを爆発という形で教えてくる無数の機械部品だけ。

その全てを、彼は一週間かけて習得したマニュアルを頼りに学び、今は二人へ教えていた。

「エリラ、ダリオス」

ミンが呼びかける。

乾いた声だったが、その響きは揺るがない。

傭兵の少女は背筋を伸ばした。

視線は目の前の操縦席から離れない。

「配置につけ」

エリラは黙って頷いた。

車体へ登り、ぎこちない動作でハッチを開く。

ギィィ……。

軋む音。

身を乗り出し、座席を展開し、ベルトを肩へ回して固定する。

すべて、ミンが二日間かけて教えた通りだった。

車外ではミンが補助電源パネルを開く。

カチッ。

カチッ。

カチッ。

乾いた機械音。

直後、圧縮機が起動した。

強い振動が車体全体を貫く。

「GRRRRRRRRRRMMMMM!!」

主機関始動。

冬眠から目覚めた猛獣の咆哮。

車体全体が震え上がり、土埃が車底から渦を巻いて舞い上がる。

「乗車。準備完了報告!」

ミンが叫ぶ。

「操縦手、準備完了!」

「砲手、準備完了!」

「車長、準備完了!」

「前進!」

「了解、前進します!」

こうしてT-80BVMは初めて異世界人によって操縦された。

実戦経験など皆無のWar Thunderプレイヤーの指導の下で。

それでも三人の連携は、教本に記された理想そのものだった。

「エリラ、アクセルは半分だ。踏み込み過ぎるな」

履帯がゆっくりと動き始める。

鋼鉄が石を砕く音。

彼女は息を呑み、操縦桿を握り締めた。

「そのまま前進。操縦桿を固定。左右均等に引け」

ガシャ……ガシャ……

履帯の回転音。

重量が地面へ食い込む音。

やがて運転訓練に適した道へ出る。

ブォォォォォォォォォ――!

エンジンが唸りを上げる。

二速で加速した戦車は、履帯の跡が残る周回路を一周し、再び集合地点へ戻った。

「停止!」

ミンの号令。

戦車はゆっくり減速し停止する。

エリラは深く息を吐いた。

ハッチから顔を出しながら言う。

「この機械……力は凄いけど……全然言うことを聞いてくれないわ」

ミンは小さく笑った。

「この後はもっと頑固な奴だ。配置交代――砲手へ」

ダリオスとエリラが持ち場を交換する。

どうやら操縦はダリオスの方が得意らしい。

ミンはそれぞれの適性を見極め始めていた。

エリラは砲手席へ身体を固定する。

左右の電動旋回スイッチを操作し、照準器を覗き込む。

額には汗が滲んでいた。

「HEAT-FS訓練弾を装填。手順を忘れるな。装填機構起動、閉鎖機確認、照準調整、目標捕捉、呼吸を整える」

ミンが教本を見ながら指示する。

ギィ……

ガシャン……

カンッ……

カチッ。

(T-80系列の自動装填装置はT-72やT-90と異なる。一回で弾体ごと砲身へ送り込まれ、装填時間は七秒未満。しかし、その過程は決して楽ではない。)

エリラは歯を食いしばる。

照準を維持。

そして引き金を引いた。

――ドォォォォォン!!

戦車全体が大きく揺れる。

耳鳴り。

数秒間の静寂。

ミンは車長用サイトから着弾を確認した。

岩製標的の端に命中。

破壊には至らない。

だが彼は責めなかった。

ただ静かに言う。

「最初の一発は生き残るためだ。だが、その次からは――敵を殺すための一発になる」

◇ ◇ ◇

訓練は続いた。

「もう一度だ」

複合装甲のように硬い声。

エリラは無言で席へ戻る。

「HEAT-FS訓練弾。制限時間四十五秒。撃てなければ戦死判定だ」

喉が鳴る。

装填ボタンへ伸ばした手が僅かに滑る。

弾倉位置がずれていた。

修正。

ギィ……

カンッ……

カチッ。

十二秒経過。

汗が照準環へ落ちる。

「残り三十二秒」

ミンが告げる。

エリラは深呼吸。

そして発射。

――ドォォォォォン!!

砲弾は飛翔した。

しかし標的中心から外れる。

地面を吹き飛ばしただけだった。

「三度右へずれている。実戦なら君も乗員も全員死亡だ」

ミンは容赦しない。

エリラは反論しなかった。

ただ操縦桿を握る手に力を込める。

その様子を見ていたダリオスが口を挟んだ。

「お前、まるで新兵を鍛える教官だな」

ミンは視線を逸らさず答える。

「戦場じゃ一秒遅れただけで消し飛ぶ。俺だって経験者だから分かるんだ」

そして少し間を置いて付け加えた。

「……少なくとも、それに近い体験はしてきた」

◇ ◇ ◇

訓練終了後。

エリラは戦車から降りた。

汗が顎を伝って落ちる。

だが今回は愚痴をこぼさなかった。

ただ黙ってT-80BVMを見上げる。

生き延びるための道具としてではない。

かつて遭遇した第四級の怪物たちと戦うための力として。

これから始まる三か月の訓練。

ゲームの操縦補助を失った以上、いずれミンはこの車両を手放さなければならないかもしれない。

それでも。

まだ動くこの鋼鉄の怪物を、無駄にするつもりはなかった。


――第二部:鋼鉄の三つの季節


素人乗員たちの訓練過程を要約するなら、こうなる。

【第一ヶ月】

鋼鉄を鍛えるための訓練場は、静寂の中から始まった。

マニュアルに記された内容に従うなら、ミンはそれを守らなければならない。彼らに一日でも早くこの機械を乗りこなさせるためだ。

エリラとダリオスからの生活補助金だけでは足りない。

彼自身も別の場所へ移動し、彼らの負担にならないようにしなければならなかった。

同時に、故郷へ帰る方法も探さなければならない。

最悪の未来も想像していた。

もし二度と帰れなかったら。

ある日突然、一人の家族が何の情報も残さず消えてしまったら。

残された家族はどうなるのか。

そんな考えが、時折頭をよぎっていた。

「訓練開始!」

笛の音はない。

ラッパもない。

システムからの命令表示もない。

そこにいるのはただ一人――生存と技術の境界線を知る男、ミンだけだった。

彼は黒革の手帳を指先で挟みながら、静かに記録を書き続ける。

エリラはシートベルトを締める。

その目には初日のような戸惑いはもうない。

T-80BVMは彼女にとって制御不能な怪物ではなくなっていた。

今では無言の相棒だ。

それでもまだ足りない。

制限時間を与えられると射撃が乱れる。

照準器が曇ると反応が遅れる。

ミンはそれを理解していた。

そして、それが鍛え上げられる瞬間を待っていた。

少し離れた場所では、ダリオスがT-60の足回り整備を学んでいた。

薄黄色のランプが舞い上がる土埃を照らし、その影を長く伸ばしている。

まるで若い整備兵が、自らの信念を修復しているかのようだった。

彼の手元には機械式履帯牽引装置。

T-60内部の小さな資料棚からミンが見つけた設計図だった。

三人。

三つの役割。

そしてゲームには存在しなかった訓練。

車両に残された資料だけを頼りに、彼らは少しずつ経験を積み重ね、この鋼鉄の怪物を動かせるようになっていった。

毎朝五時。

ミンは車体を二度叩く。

それが目覚まし代わりだった。

二人は暗闇の中で起き上がり、冷水で顔を洗い、乾パンを一枚口へ放り込み、そのまま訓練へ向かう。

午前中。

整備・保守マニュアルに従った機材整備。

砲架の固定ピンを外し、戦闘室温度を調整し、冷却管を通す。

分解や修理で問題が起きることもあり、簡単な修復に数日かかることも珍しくなかった。

午後。

連携訓練。

ミンは木材と基礎魔法を使い、低級魔物の模型を作る。

エリラが照準。

ダリオスが座標を報告。

ミンは敵役を担当する。

全員が訓練弾を撃つ前に砲身の基準合わせを繰り返した。

夜。

彼らはテントへ戻る。

三つの寝床。

三つの部屋。

一つの簡易厨房。

そして予備弾薬が詰め込まれた麻袋。

それらはエリラの人脈を使い、職人たちに頼んで建ててもらったものだった。

食事はミンが夕食中ほとんど口を開かない理由だった。

固い麦パン。

温め直したぬるい水。

塩漬け肉。

毎日同じ。

日を追うごとに少しずつ苦痛になる。

だが彼は文句を言わなかった。

もっと良い場所へ行くためには、耐えることが何より重要だからだ。

エリラは空腹だったので早く食べる。

だが不満は言わない。

ダリオスはゆっくり食べる。

そして時々、自分の分をこっそりミンへ差し出す。

ミンは軽く頷く。

しかし受け取らない。

食べれば食べるほど喉を通らないからだ。

米飯と濃い味付けの料理に慣れた彼にとって、この世界の食事はあまりにも薄味だった。

このままではそのうち味気なさで死ぬかもしれない――本気でそう思った。

幸い、蜜の取れる甘草を見つけられたおかげで、何とか耐え続けることができた。

たとえ実戦経験のほとんどが、光るモニターの前で押したキー操作だけだったとしても。

そうして三週間が過ぎた。

誰も怪我をしなかった。

誰も大声で笑わなかった。

誰も諦めなかった。

二十二日目の朝。

ミンは手帳へ記録を書く。

「エリラ――照準反応・操作速度十五%向上。

ダリオス――誘導輪分解を単独で実施可能。操縦技術も良好。

分隊訓練へ移行可能。」

「幸運だったな。この数か月、町は魔物の襲撃もなく平和だった。

よし……絶対にこの怪物を乗りこなしてみせる。

もし魔物の大群が来たら、その時になってからじゃ操縦なんて覚えられないからな」

ダリオスがそう言った。

翌日からはT-60も加えたチーム訓練が始まる。

だがミンは理解していた。

鍛えられているのは彼らだけではない。

自分自身もまた学んでいるのだ。

補助操縦なしで仲間へ任せることを。

あの奇妙な存在は等価交換を行った。

ミンが失ったもの。

War Thunderの劣化したシステム。

VR支援機能。

そして謎のアイテム。

それらと引き換えに与えられた何か。

そしてそれこそが――地球へ帰る道を探す上で最も難しい試練だった。

◇ ◇ ◇

【第二ヶ月――戦術の形成】

三十日目から。

ミンは教本通りに訓練内容を変更した。

午前中は単独技術訓練ではなく、戦術シミュレーションへ移行する。

大学時代に学んだ軍事知識を頼りに地形図を手描きし、ヴォルダ周辺の重要地点を書き込み、大きな布へ広げた。

ダリオスは字こそ下手だが真剣に座標を書き込む。

エリラは待ち伏せ地点や強敵に発見された際の車両隠匿場所を分析する。

敵もまた鋼鉄の怪物を操る狩人であるかのように。

砂時計が落ち切る前に退路と反撃方法を考えなければならない。

「出撃中の一秒一秒は貴重だ。

敵が側面を見せたら、それが弱点だ。

相手が何であれ、必ず側面へ一発叩き込め。

覚えておけ」

ミンの声は以前より重くなっていた。

失敗を知る者だけが持つ重みだった。

そう。

側面を晒すことは最大の禁忌。

車体の傾斜は許されても、側面露出は生存率五〇%以下になる。

午後は実戦訓練。

まずは銃器の扱いだ。

DT機関銃。

T-60の20mm砲。

そしてT-80BVM車長用のNSVT重機関銃。

ミンだけがゲームと同じようにT-60全体を操作できた。

だがNSVTだけは違う。

反動も。

装填も。

すべて現実そのものだった。

教本とゲーム経験を基に、ミンは「二方向待ち伏せ訓練」を設計した。

T-60を走らせる。

突然左側へ目標が出現する。

エリラは即座に砲塔を旋回させる。

だがその瞬間。

ミンはT-60を急停止させた。

砲塔の旋回軸がずれ、安定装置があっても照準が外れる。

「停止。

今の状況では命中しない。

実戦なら位置が露見し、敵に反撃の時間を与えている」

エリラは頭を下げた。

首筋には汗が滲む。

指はまだ発射ボタンを握ったままだ。

「もし反応できなかったら?」

「反射の問題だ。直せる。

だが本番なら照準器ではなく自分を修正しろ。

精神が乱れれば技術は助けてくれない。

君はまだ本当に追い詰められた経験が少ない。

慣れれば変わる」

その夜。

三人は薪ストーブの周りに座っていた。

少しの砂糖とミルクがあれば、ミンも固いパンを何とか食べられる。

炎が土壁を赤く照らす。

ダリオスが記録帳を持ったまま小さく尋ねた。

「誰かを失ったことがあるのか?

反応が遅かったせいで」

ミンはすぐには答えなかった。

薪を一本足し、静かに言う。

「遅かったからじゃない。

まだ間に合うと思っていたからだ。

交差点を一つ越えただけで……

俺たちは二度と会えなくなった」

四十三日目。

エリラとダリオスは初めて民兵と新兵を指揮した。

ヴォルダ防衛力強化のためだ。

ミンも参加を認めた。

ただし秘密保持は絶対条件だった。

ダリオスが魔法銃陣地を構築。

エリラの移動を支援する射撃回廊を形成する。

ルゥゥゥゥゥゥ……

ギィ……カン……カチッ

「距離五〇〇メートル」

ドォン!

――命中。目標撃破。

「距離一〇〇〇メートル」

ドォン!

――命中。目標撃破。

「距離一五〇〇メートル」

ドォン!

――命中。目標撃破。

「距離二〇〇〇メートル」

ドォン!

――命中。目標撃破。

「上出来だ。

照準も完全に身についたな」

ミンは車長用照準器から観察しながら合図を送る。

訓練は成功した。

全員が地図の前で息を切らしていた。

服は汗で濡れている。

エリラが微笑む。

ダリオスは拳を握る。

その目は今までにないほど輝いていた。

二人とも、この怪物を操るために必要なものを確実に吸収していた。

ミンは遠くから眺める。

二人が新兵や民兵たちと話している。

初めて彼は命令を出さなかった。

なぜなら彼ら自身が新たな指揮官になったからだ。

そしてミンは理解する。

彼らは本物の戦車乗員へと変わり始めていた。

――第三ヶ月:炎と試練

第三ヶ月最後の朝――六十日目。

空は重い雲に覆われていた。

まるでこの大地そのものが理解しているかのようだった。

今日はもう訓練ではない。

今日、彼らは実戦による最終試験へ臨む。

地図にはヴォルダ北部の外縁地帯が記されている。

そこでは第二級の狼型魔物と鉄甲蜂が活動しており、ヴォルダ周辺住民への脅威になり始めていた。

三人は布製の地図を囲む。

エリラは接近経路を指し示し、

ダリオスは風向きと影響範囲、さらには魔力撹乱地帯の位置を確認する。

ミンは小さく頷いた。

何も付け加えない。

もう十分だった。

彼らは準備を終えている。

T-80BVMとT-60が同時に始動する。

今回は各部点検は行わない。

エリラが主電源を投入する。

ダリオスがエンジン始動レバーを操作した。

カチッ!

そして――

Grrrrrr...

GRUMMMMMHHHH!!

ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……

ガスタービンエンジンが洞窟の雷鳴のような咆哮を響かせる。

同時に、ミンの操縦するT-60のエンジン音も重なった。

ミンはT-60のハッチを開き、

砲塔から半身を乗り出す。

手には無線機。

エリラとダリオスへ通信を繋ぎながら、

迷いのない目で叫んだ。

「戦闘開始!」

「乗車――準備確認!」

「操縦手、準備完了!」

「砲手、準備完了!」

「移動開始。目標――魔物集結地点!」

【搭載弾薬】

T-80BVM

125mm砲:

HEAT-FS×5

HE×3

煙幕弾×1

NSVT 12.7mm:

125発

PKT 7.62mm:

800発

T-60

20mm機関砲:

320発

DP 7.62mm:

450発

操縦席からダリオスが無線越しに叫ぶ。

「前進!」

「了解。前進します」

エリラが応答した。

ガシャン……

履帯が石を噛む。

ガチャ……ガチャ……

鋼鉄が乾いた草と砂利を踏み砕く。

エリラは砲手席に座り、

光学照準器へ神経を集中させる。

やがて二両の車両は目的地へ到達した。

突如現れた異音に、

魔物たちはまだ状況を理解できていない。

ミンのミニマップには敵情報が表示される。

――第二級鉄甲蜂

――第二級狼型魔物

――第二級熊型魔物

ダリオスが停止する。

エリラは照準ダイヤルを回す。

照準針が小さく震えた。

砲塔制御ハンドルを握り締める。

魔物たちがまだ呆然としている間に――

「HE装填!」

ギィィ……

ガシャン……

カンッ……

カチッ!

自動装填装置がHE弾を砲室へ送り込む。

エリラは息を止めた。

発射ボタンを押す。

――――ドォォォォォォン!!!

第一射。

車体全体を揺らす轟音。

砲弾は風を裂き、

木々の中央で炸裂した。

複数の四足魔物が吹き飛ばされる。

肉体が爆風によって粉砕され、

四散した。

近くにいた魔物たちは咆哮を上げる。

それは獣の声ではない。

まるで鉄を無理やり捻じ曲げたような不気味な音だった。

被弾した個体もいたが、

特に熊型は硬質な装甲を持つため、

軽くよろめいただけだった。

「HEAT弾だ! 装甲持ちを優先!」

ミンが叫ぶ。

「了解! HEAT装填!」

エリラが装填操作を行う。

ガシャン――

ウゥゥゥゥ――

カチッ!

HEAT弾が装填位置へ到達する。

彼女は照準目盛りを修正した。

目は一瞬たりとも照準器から離れない。

次の魔物が突進してくる。

距離五百メートル。

長い体躯を持つ熊型。

外殻は黒く光る角質装甲。

エリラは距離を測定し、

照準を四百メートルへ補正する。

狙いは胸部中央。

引き金を引いた。

――ドォォォン!!

HEAT弾は装甲を貫通した。

爆発は起こらない。

しかし魔物は大きく体勢を崩した。

胸部装甲が砕け、

巨大な穴が開く。

誇りだった外殻が粉砕された。

その咆哮が響く中、

ミンの声が無線から飛ぶ。

「HEに切り替えろ! 止めを刺せ!」

ガシャン――

ウゥゥゥゥ――

カチッ!

再装填。

今や一つ一つの動作が鼓動と同期していた。

誰も教えない。

誰も指示しない。

身体が覚えている。

ダリオスは操縦桿を握り、

砲塔が正面を向くよう車体を微調整する。

履帯が砂利へ深い跡を刻む。

ガスタービンの咆哮が高まる。

機械音。

装填音。

風切り音。

金属が金属を擦る音。

ガシャン――

ウゥゥゥゥ――

カチッ!

ドォォォン!!

ガシャン――

ウゥゥゥゥ――

カチッ!

ドォォォン!!

熊型魔物はHE弾によって跡形もなく吹き飛んだ。

その後も同じだった。

弾薬が尽きるまで。

第二級魔物たちは次々と粉砕されていく。

一発一発の砲弾が試験だった。

一つ一つの操作が生存のための授業だった。

しかし――

残弾は煙幕弾一発のみ。

さらに二十匹近い鉄甲蜂が迫ってくる。

主砲弾薬は尽きた。

エリラは車長席へ移動する。

NSVT重機関銃をしっかり握り、

接近する敵群へ向けた。

「火力支援を要請!」

「了解」

待機していたT-60が前へ出る。

20mm機関砲が上空を向く。

NSVTも同時に火を吹いた。

ドドドドドドドドドッ!!

ドゥゥゥゥゥゥゥゥ!!

ガガガガガガッ!!

――Target Destroyed

――Target Destroyed

――Target Destroyed

……

四十三分後。

戦場は静まり返った。

残されているのは、

撃ち砕かれた魔物の死骸と魔力結晶のみ。

火薬の臭い。

焼けた土。

焦げた毛皮と肉。

二両の車両は停止していた。

それでもエンジンは小さく唸り続ける。

悪夢から生還した戦士の呼吸のように。

ミンはT-60の上でヘルメットを外した。

深く息を吐く。

エリラは砲身へ額を預けている。

手はまだ震えていた。

恐怖ではない。

アドレナリンだった。

ダリオスは装甲板へ寄りかかりながら荒い呼吸を繰り返す。

しかしすぐに袋を担ぎ、

換金できそうな素材を回収し始めた。

しばらくして、

二つの大袋が戦利品でいっぱいになる。

その時、

ゲームシステムの通知が鳴り響いた。

【SL +1024】

【XP +320】

【SP +50】

ミンは二人を見る。

そして手帳を開き、

最後の評価を書き込んだ。

「エリラ――砲手技能:合格。

ダリオス――操縦・戦術連携:合格。

三か月訓練:完了。

おめでとう。

これから君たちは戦車兵であり、

そして新兵たちを導く教官でもある」

戦車兵の制服を着た二人の表情が明るくなる。

ダリオスは興奮を隠せなかった。

「やっと……やっとだ……

本当にできた……!」

エリラも静かに笑う。

「傭兵として何年も生きてきたけれど……

こんな力を自分で操る感覚は初めてだわ」

知らず知らずのうちに。

ミンはこの世界に存在しなかったものを生み出していた。

――一つの戦車クルー。

それが、この地で初めて誕生した瞬間だった。












次回の第5.2章は、第5.1章の続きとなります。

新たな名前を得た主人公は、異世界での本格的な旅を歩み始めました。

果たして、その先には何が待ち受けているのでしょうか。


第5.2章は第5.1章公開後、できる限り早く、今週中の更新を予定しております。


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。

未熟な一人のアマチュア作家の作品ではありますが、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。


それでは、次回の更新でまたお会いしましょう。

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