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鋼鉄の血 ― 異世界のWar Thunder ―  作者: PGGG1214
第2部:Velindiaの地における対決
15/20

第12章――内戦Ⅲ・Edhenの街からの脱出

ここまでずっと待っていてくださった皆さん、本当にありがとうございます。


この素人作品も、私自身の仕事が同じように忙しい中ではありますが、少しずつ完成に向けて頑張っています。


そして――毎週更新の予定は、ここに来てまた一度中断することになってしまいました。


当初から立てていた計画では、ひとまず最初の12話を一区切りとする予定でした。

(第1巻・第2巻に相当する、第12章までの内容です。)


第13章は、できるだけ早い時期に公開する予定です。


皆さんからいただく応援は、この限られた執筆時間の中で、これからも作品をより良いものへと完成させていくための、大きな原動力になります。


これからも応援していただけると嬉しいです。


本当にありがとうございます。

本章には、暴力的およびホラー描写を含む表現があります。

閲覧の際は、あらかじめご注意ください。


第一部――レンズ越しの観察者

Edhenが消滅するまで:15日。

Edhenの南側に広がる山際を、ひんやりとした風が静かに吹き抜けていた。砂埃を巻き上げ、その風には銀色の霧のように漂う、正体の知れないmanaの気配がかすかに混じっている。

古代遺跡の高台――そこでは、魔法と機械を融合させたLeopard 2A6*型の兵器が木々の葉に巧妙に偽装され、身を潜めていた。

その車内で、一人の人物が静かに照準器を調整していた。

彼女――Yilfenを、自らが手にしている力の秘密を開く鍵として追い続ける者。

コードネーム、E。

彼女の視線は、鞘から抜かれた刃のように鋭く、Edhenの夜を貫く暗視照準器の先へと向けられていた。

彼女はすでにここで、およそ一か月――30日もの間、監視を続けている。

いくつか奇妙な兆候には気づいていたが、それらは今の彼女の仕事とは何の関係もないものだった。

中央の建物、その中心で、赤い点がもう一つ、かすかに明滅している。

「信号が弱すぎる。これじゃ追跡できない。あいつが私を囮に引っかけて以来……でも、あいつに仕掛けた魔法コードは一つじゃない。二つよ。どちらか一つ、あるいは両方に気づいたとしても、あいつがこの街から出た瞬間、最初から張り巡らせていた罠が作動する」

Eは、どこか楽しそうに続けた。

「私が作った感知用rune装置は、Edhenの外周にいくつも設置してある。歩いて逃げようが、信号を出さずに逃げようが関係ない。エンジン音がした時点で、あるいは街の外へ不自然に出ていく人間がいれば、それを簡単に捉えられる偵察装置もある」

「ふふふ……ああ、本当に面白いわ。Edhenという檻から必死に逃げようとする獲物を見ていると、ぞくぞくしてくる……それに、街の中にはもう一つ、殺気を測定する装置まで仕掛けてある」

「奴に残された選択肢は二つだけ――」

自力で逃げ出すか。

それとも、知らず知らずのうちに無辜の人々の血で染まるか。

Eはわずかに首を傾けた。

白い髪をきっちりと束ねた髪が揺れ、細い指が小型の操作盤の上を滑っていく。そのまま視線を街の南東部へと向けた。

これまでの間に記録された足音、manaの流れ、車列の動き――。

そのすべてが精密なフィルターを通されていた。

まるで大量のAIカメラが自動で標的を識別し、情報を分析・統合しているかのようなシステム。

それらはすべて、Leopardの照準器の先へと集約されていた。

「……ん? 奴が出てきたのかしら?」

突然、南門の方角から、茂みに覆い隠された狭い隙間を通して、一台の車両が見えた。

その車両は道路を猛スピードで駆け抜け、南の遠くに広がる森へ向かっている。

「夜間に街の外へ出る……異常ね」

一人で操縦されているように見えるBT-5の姿が、熱画像の画面上で瞬く間に彼女の注意を引いた。

Eが判断に迷っていると、BT-5は突然、別方向へとハンドルを切った。

まるで最初からそうするよう、プログラムされていたかのように。

「今度も囮? それとも……本物?」

彼女はそのまま観察を続けた。

しかし、次の瞬間、車両は視界から消えた。

夜の中で逃走するという行動そのものに、彼女はわずかな違和感を覚えていた。

それと同時に、BT-5から発信される赤い信号が、明確な位置情報とともに画面上で激しく点滅している。

Eは、口元をわずかに緩めた。

「違う。わざともう一度外へ出して、私がどう反応するか探っているんだ。……面白い」

彼女はすぐさま意識を街の方へ戻した。

街の隅々まで走査し、不自然な動きをする標的を一つずつ拾っていく。

照準器越しに見えるEdhenの街では、あらゆるものが混沌と動いていた。

不規則に行き交う車列。

出入りする人々。

周囲を警戒しながら巡回する兵士たち。

そして時折、どこかから何かが運び出されている。

だが、それらはすべて布やシートに覆われており、中身が何なのかは判別できない。

「どうやら……街の内部は、これから混乱が始まる準備をしているようね」

Eは静かに呟いた。

「十分な規模の混乱さえ起きれば……奴は必ず姿を現す。そして私は……奴の死体を手にする唯一の人間になる」

彼女は唇を軽く噛んだ。

Leopardの照準器が、ゆっくりと旋回する。

また一つ、新たな標的が画面を横切った。

Eはそれをロックし、観察を続ける。

だが、それも彼女が探している獲物ではなかった。

それでも彼女は焦らなかった。

ただそのまま、次の機会を待ち続ける。

――その頃、集会所の宿泊区画では。

「彼女は罠にかからなかった。つまり、最初から俺が囮を使っていると分かっていたということか……」

Yilfenが答えた。

ノートパソコンに表示された時間は、残り15日。

先ほど彼は、彼女が再び罠にかかるかどうかを確かめるため、BT-5を密かに西南方向へ向けて走らせていた。

「本当に……ここから出るのは簡単じゃないな」

Yilfenは小さく息を吐く。

「もっと……囮を用意する必要があるか」

そう呟くと、彼はノートパソコンを閉じた。

そしてベッドの横へ身体を横たえる。

目を閉じ、これから先の計画について思考を巡らせながら、次の行動に備えた。


第二部――脱出の準備(2)

数日前、Yilfenは銀色のruneカードから魔法的に複製された、2枚の徽章カードも手に入れていた。

Celesはそれを直接会うことなく、使いの者に持ってこさせただけだった。

その日も、残された時間はちょうど15日。

Yilfenはまず最初の一手として、Eがどれほど誘いに乗りやすい相手なのかを確かめるため、罠を仕掛けてみた。

しかし、Eはその罠には引っかからなかった。

そのため彼は、さらに二日間を使って新たな配置を整えた。

「ようやく終わった。強化した囮が配置についた」

Edhen消滅まで、あと13日。

今回は、さらに別の変更を加えた。

二枚の徽章カードには偽の信号を発信させ、それぞれを二台の車両――BT-5と、先ほどバックアップとして使用したGaaz - 7.62mm――の中へ配置した。

さらに、Voldaで入手したゲームの徽章の一つを、Zis - 30へと仕込んだ。

その効果は、先ほど知ったばかりの「内部のプレイヤーを模倣する」というものだった。

「Voldaから手に入れたこの徽章……かなり使えるアイテムだな。少なくとも、内部のプレイヤーを模倣できる。ゲームを持っている時にしか使えないけどな。それと、あのレンチについてはまだよく分からない。321という番号には何となく見覚えがあるけど、どんな効果があるのかはまだ分からない。ここから脱出した後で、あとで調べればいい」

Yilfenは一度息を吐いた。

「さて、ここからが本当の計画の始まりだ」

囮の車両は、西南側の倉庫に配置された。

――BT-5 - Rank I - BR 1.0

――Gaaz - 7.62mm AAA (4M) - Rank I, BR 1.0

――Zis - 30 - Rank II, BR 2.3

昼頃。

誰にも気づかれない隙を狙って――。

Xillem商会の倉庫区画。

北門の近くにあるその場所は、まるで誰一人として近づいたことがないかのように、固く閉ざされたままだった。

「誰も近づいていない。封鎖されて、いろいろと噂まで流れている。むしろ都合がいい。何度かこの前を通ったことがあるから、外から見ただけでも大体の構造は分かっている。隣の空いている倉庫も、あれを出現させるには十分な広さがありそうだ」

カチャ……ガチャッ。

Yilfenは工具箱から取り出したペンチを使い、緩んでいた掛け金をあっさりと壊した。

突然の失踪と、内部から漂う奇妙な臭い。

それ以来、誰もここへ近づかなくなったため、彼にとってはむしろ活動しやすい場所になっていた。

捜査が行き詰まったこともあり、市役所は簡単に封鎖しただけ。

誰も、空っぽの建物など気にしていなかった。

「入るか。まずは状況を確認しておこう……」

Yilfenは慎重に周囲を確認しながら、放棄された商会の建物の中へと入っていった。

価値のある物は何も残っていない。

帳簿さえなく、そこに残っていたのは、もはや商会の抜け殻だけだった。

長期間放置され、埃に覆われた建物。

それでも、数多くのホラー映画や探偵作品を見てきたYilfenは、ふと思った。

「もしルミノール試薬があれば、吹きかけて紫外線ライトを当てるだけで血痕が浮かび上がるんだけど……って、俺は探偵じゃないだろ」

二階。

Yilfenは車両を召喚する前に、危険がないかを確かめるため、さらに周囲を確認した。

一か月以上も人の気配がない建物の廊下を、埃を払いながら慎重に進む。

その時――。

ふと、かすかな血の臭いが鼻を突いた。

Yilfenは反射的に鼻を覆う。

「待て……窓のところに、まだ少し……血の臭いが残っている」

彼は窓の方へ視線を向けた。

そこには、乾いた血痕があった。

すでに綺麗に拭き取られていたものの、いくつか黒ずんだ跡が残っている。

その付近には、かすかにアルカリ性のような臭いまで漂っていた。

「もしかして……彼らは消えたんじゃなくて、殺されたのか……?」

Yilfenは少しだけ考えた。

「でも、俺には関係ない。まずは倉庫の方で呼び出すべきだ。今のところ、ここには誰も来ない」

Yilfenはそのまま倉庫区画へと下りた。

そこには広いホールがあり、大きな扉が一枚。

鍵はすでにかなり緩んでいた。

「これなら、牽引車両が一台あれば、扉ごと吹き飛ばせるな」

ソ連技術の系譜にある一両――T-34 1942。

まるで最初から待機していたかのように、その姿が目の前へ現れた。

Yilfenは、これまでシミュレーションで何度も行ってきた操作を再び繰り返す。

(T-34 1942:乗員 4/4人、前進 49 km/h・後退 7 km/h。76 mm F-34 cannon:100発、同軸 DT 7.62mm:1890発(63発/ベルト)……)

(T-34 1942 Rank II - BR 4.0 stock の準備が完了しました。購入して乗員を選択しますか?)

(-22,000SL、-6,300SL)

(成功。購入および乗員訓練に成功しました。召喚には300 SPが必要です。召喚する前に搭載弾薬数を確認してください……新規module「煙幕弾:D-350A」をアンロックしました)

「今回は……煙幕弾があるのか」

Yilfenは少しだけ口元を緩める。

「なら、話は変わってくる。何かあった時にも、これなら対処しやすい」

彼は搭載する弾薬を再設定した。

(BR-350A (MD-5 fuze):30/100 OF-350M:12/100 D-350A:15/100)

「これくらいでいい。弾薬庫が吹き飛んだ時に、回収できる残骸くらいは残しておかないとな……」

その言葉は、長年プレイしてきたプレイヤーとしての経験から、自然と口をついて出たものだった。

(召喚に成功しました。SP 残り:0 SL 残り:643,700 燃料:残り623km)

一台の青く塗装された鋼鉄の機械が姿を現した。

長い76mm砲。

そして、囮として用意した車両たちよりも厚い装甲と、漂うエンジンオイルの臭い。

砲弾はすでに所定の位置へと収められている。

「異常なし。あとはその日を待てば、出発できる……」

――その頃、Edhen冒険者ギルド支部。

「辞……辞任、ですか……」

「そうです。もうこれしかありません。これ以上冒険者たちを派遣して探させても無駄でしょう。冒険者ギルドの権益を守るためにも、私が辞任し、街の商業組合の人間に直接管理してもらう方がいいでしょう。これが私の辞表です」

Celesは一枚の書類を差し出した。

「もう、この街を離れる時が来たんです……今朝、彼らが来て、私に役職を降りるよう求めてきました。私も了承しました。その代わりに、秘密保持の条項を付けてもらっています。もし何か問題が起きた場合は、彼らが説明に立つことになっています。最後の情け、というところでしょうか。お手数をおかけします」

「分かりました。ギルド長。これは本部への手紙ですね。私が急いで届けます」

ギルド長Celesは、ギルドを守るために辞表を書き、自らの立場を商業組合から派遣された管理者へと譲ることを決めた。

向こうも特に抵抗することはなかった。

中央Velindiaのギルド本部から承認の手紙が届けば、すべては通常通りへ戻るはずだった。

――同じ頃。

城門警備隊の詰所では、検査を担当する人物が新しい者へと交代していた。

「決めたのか? Alven Drenn」

「もう考えは決まった。俺はVoldaへ戻る」

Alven Drennは門番としての任務板を返却した。

そして、後任の管理者に残すため、一通の短い手書きの手紙を置いた。

『私は退職しました。理由は個人的な事情です。これは後任者のための資料です』

ヒヒィィィィィ……!

「気をつけろ。敬礼!」

「みんな、さようなら」

蹄の音を響かせながら、馬はそのままEdhenの南門を抜け、街の外へと駆けていった。

Voldaへ戻るには一晩かかる。

荷物もすでに準備してあった。

Eはたまたま馬で街を出ていく彼を見つけると、照準を合わせ、Alven Drennの位置を測定した。

「彼は……馬で走っている。動きも手慣れている。私が探している相手ではないわね」

Eは見逃した。

――Voldaに残された、Yilfenの機械へ近づける可能性のある人物を。

その時、何者かに見られているような鋭い視線を感じたのか、Alven Drennは突然、南側の山脈へと振り返った。

「……誰かに見られているような気がする」

夜はすでに深まっていた。

放置された壊れた荷馬車の脇で、彼が持っていたのは、干し肉などの保存食が入った袋一つ。

一枚の地図。

そして、Minhから渡された、獅子の刻印が入った銀貨一枚。

「Cyran Yilfen……変な奴だったな」

今夜の空気は、異様なほど静かだった。

新月に近い細い月の光の下、manaの匂いを含んだ風が屋根の上をそっと通り抜ける。

まるで――何かが近づいていることを告げるかのように。

一方、行政区画の門番を務めるRylsant Brentとその家族は、ギルドが管理体制の移管準備を進めているため、決して街を離れることを許されなかった。

「……何かがおかしい気がする」

Rylsantは、そう感じ取っていた。

Brellは木製鉛筆を作る作業を続けていた。

Yilfenのおかげで、彼は以前よりかなり多くの収入を得られるようになっていた。

その金を家族へ送ることもできる。

「内戦が始まる前に……家族のために、少しでも蓄えておかないとな」

――さらに2週間が過ぎた。

第44日目――Edhen消滅まで、あと1日。

ドンッ――。

「誰がここで商売することを許可した? この商人にここで商売させたのは誰だ! 出てこい!」

一見すれば、単なる小さな揉め事だった。

しかし、今になって内戦の火種は、最も小さな出来事から燃え始めようとしていた。

「それは我々、清教連盟が許可した商売だ。ここは俺たちの縄張りだ。お前ら鉄の手ギャングは一体何をするつもりだ……!」

周囲の人々が騒ぎを聞きつけ、一斉に集まってくる。

だが、誰かが一言を発するよりも早く――。

ズブッ、ズブッ、ズブッ……!

ザッ、ザッ……!

「あ、ああああああああ……!」

「鉄血ギャングが人を殺した……! 人殺しだ!」

「早く援軍を呼べ! ここに人殺しがいるぞ!」

ヒュン、ヒュン……ズブッ、ズブッ……!

「ぐっ……!」

「清教連盟まで反撃しているぞ……! みんな、逃げろ!」

――第44日目の早朝。

薄い霧に覆われたEdhenの街へ、淡い朝日が差し込んでいた。

「何だと? 商売を巡る衝突が起きて、二つの裏勢力によって人が殺されたというのか? これはあまりにも深刻だ……!」

情報は瞬く間に街中へと広がっていった。

そして、混乱が始まった。

北門が閉鎖された。

それだけではない。

残る三つの門もすべて閉じられた。

当局は殺人犯を捜索するため、人の出入りを全面的に禁止した。

だが、街の内部では、蟻の巣を棒で突いたような騒ぎが広がっていた。

「明日――日時計の針が夜8時を正確に指した瞬間……」

誰かが、そう呟いた。

「Edhenを奪い返すための戦いが……始まる!」

その日の午後。

ギルドの宿泊施設。

Yilfenは荷物と金銭をすべてXillem商会の施設に置いたT-34の中へと整理し終え、翌日の脱出に備えて、以前から組み立てていた地図をもう一度開いた。

すべてが終わるまで――あと1日。

「準備は全部終わった。あとは行動するタイミングを待つだけだ」

Yilfenは地図を見つめる。

「でも……俺一人だけで本当にここから脱出できるのか……」

何度も知り合いたちへ警告した。

しかし、街を離れた者はほんのわずかだった。

残った者たちは、Edhenに閉じ込められた自身の運命に抗うように、これから始まる戦争へ立ち向かおうとしている。

「今の俺は……自分自身のことだけを考えないとな」

古びた木製の机の上では、ノートパソコンがスリープ状態のまま淡く光っていた。

脱出する時間は、一秒たりとも間違えるわけにはいかない。

Yilfenは焦ることが許されないと理解していた。

少しでも騒ぎを起こせば、Eに偽の囮だと気づかれる。

コンコン……。

「……誰だ?」

「私です。Celesです」

Yilfenは慌ててノートパソコンを片付け、服装を整えた。

そして部屋の外へ出ると、扉の隙間から相手を確認する。

そこに立っていたのがギルド長Celesであることを確認してから、ようやく扉を開き、彼女を中へ招き入れた。

Celesは簡素な服装に身を包んでいた。

もはやギルド長としての雰囲気はない。

彼女は多くを語ることなく、椅子へ腰を下ろした。

扉が閉じる。

まるで重要な客人を迎える秘密の拠点のようだった。

茶を淹れ、二人は向かい合って話し始めた。

「明日、ここを出るつもりなんでしょう?」

「そうだ。そっちはどうなった、ギルド長」

Yilfenの言葉に、Celesは少しだけ困ったような顔をした。

「冒険者たちと、ギルドの職員には注意するよう伝えてあります……」

そして、少し気まずそうに続ける。

「もう、私のことをギルド長とは呼ばないでください。今の私は、ただの普通の人です」

彼女はゆっくりと話した。

「本部でも検討が行われました。そして今日、ギルド本部のメンバーによって、私のギルド長辞任が正式に承認されました。もう……私もここを離れなければなりません」

「そうか……」

Yilfenは静かに頷いた。

「まあ、分かるさ。ギルド長という立場の責任は、常に重い。辞任したことを自分で責める必要なんてない。それに、Edhenの支部も、もう商業組合から圧力を受けなくて済むようになるんだろ?」

彼は少し間を置いた。

「それで、いつ出る?」

Edhenを離れる話へ戻ると、Celesは表情を曇らせた。

「……残念だけど、私もあなたも、ここから出られないかもしれません」

「四つの城門はすべて閉鎖されました。あなたが得た情報は正しかった。二つの裏勢力が……まだ和平状態にあると思っていた二つの勢力が、ついに内戦を始めたんです」

YilfenはCelesをじっと見つめた。

女性の目に、これほど明確な不安が浮かんでいるのを見たのは初めてだった。

自分自身の運命を心配しているのではない。

この街に住むすべての人々。

そして、自分が守ってきた冒険者たち。

そのすべての運命を案じているのだ。

「じゃあ……ここから出られないなら」

Yilfenは少し声を落とした。

「俺と一緒に行けばいい」

その言葉を聞いた瞬間、Celesの顔が一気に赤くなった。

「い、一緒に……行くって……?」

「と……一緒に……?」

「一緒に逃げるんですか……!?」

「そういうことだ」

Yilfenは平然と答えた。

「まだスペースはあるし、それに道案内も必要だからな。この街の道は、あなたの方がよく知っている。街の外の地形についても同じだ。少し力を貸してほしい」

Celesは驚いたままYilfenを見つめる。

「今夜のうちに荷物をまとめておいてくれ。明日は、時計の針が10時を指す頃にここへ来てほしい。確認したいことがいくつかある。その後、18時ちょうどにこの街を出る」

Yilfenは続けた。

「それまでに、冒険者ギルドのみんなへちゃんと別れを告げておいてくれ」

Celesはしばらく迷っていた。

明日、二つの裏勢力が本格的に戦争を始めれば、一体何が起きるのか。

彼女には分からない。

それでも――。

「……分かりました。明日の朝、ここへ来ます」

そう言って、CelesはYilfenの提案を受け入れた。

小さな換気窓から風が入り込み、Celesのオレンジがかった金色の髪を静かに揺らした。

その後、YilfenはCelesへ地図を渡した。

彼女はそれを確認すると、脱出ルートを最適化し、さらに予想外の封鎖地点や警戒拠点をいくつか書き加えた。

それを確認しながら、Yilfenもまた、翌日の脱出計画を調整していった。


第三部――最後の罠

第45日目――午前9時45分。

Edhenが消滅するまで、あと10時間42分。

Edhen冒険者ギルド支部。

「ギルド長、おはようございます……」

職員がそう呼びかけようとした瞬間、Celesがそっと手を上げて止めた。

「もう、私のことをギルド長と呼ばなくていいわ。Celesでいい。元冒険者、それで十分よ……」

「はい……」

Agonは少し言葉を選びながら続けた。

「長く一緒に仕事をしてきたから分かります。あなたがギルド全体のために、今日までずっと頑張ってきたことも……。これは、ほんの少しですが、別れの贈り物です。どうか受け取ってください」

Celesから仕事を教わってきた職員、Agonもまた、Edhenを去る彼女へ贈り物を渡した。

「そんなに気を遣わなくてもいいのよ、Agon。あなたもこの5年間で、もう私以上に立派な人間になったじゃない」

ギルド内の多くの者たちが、彼女のためにそれぞれ小さな記念品を用意していた。

Celesは、それを断ることができなかった。

しかし――。

それらの記念品は、やがてこの街を襲う最後の数時間の中で、白い光へと沈んでいくギルドの仲間たちから受け取る、最後の贈り物になるのかもしれない。

「それじゃあ……さようなら。みんな」

Celesは小さく頭を下げた。

10年間を過ごしたこの場所へ、最後の別れを告げる。

これからの彼女の仕事は、両親が自分に戻ってきて代わりに管理してほしいと願っていた屋敷と財産を引き継ぐことだった。

「うっ……うう……」

数人の女性職員が泣き始めた。

ギルド内にいた30人を超える仲間たちは、仕事に身を捧げ続けたギルド長の背中を、黙って見送る。

『ありがとうございました、ギルド長Celes Arvenwald! このEdhen支部のために、最後まで尽くしてくださって、本当にありがとうございました! さようなら!』

全員の声が一つになった。

いつも強くあり続けたCelesの瞳にも、ほんの少し悲しみが浮かんだ。

そして、そこには数滴の涙が滲んでいた。

「……もう、家に帰る時ね」

しかし――。

その頃、Edhenの街の状況は急速に悪化していた。

「何だと……? あの悪名高い鉄の手と、清教連盟が互いに殺し合う準備をしているって? 今夜だと?」

「急げ! 扉を補強しろ! 今夜、鉄の手と清教連盟が決戦するぞ!」

「俺は街を出たい。誰か方法を知らないか……」

「もう無理だ。街は封鎖されている。今はまだ門が開いているが、夜には閉じるらしい。二つの勢力の痕跡を探しているって話だ」

混乱がEdhen全体を覆っていく。

住居を補強する者。

街から逃げ出そうとする者。

門では、街の外へ出ようとする商人たちや冒険者たちが次々と足止めされていた。

「どうして……どうして俺たちを街の外へ出さないんだ!」

「これは市長からの命令だ。何も心配することはない。家へ戻れ。どんな理由があろうと、今日は誰一人として街の外へ出すな。従わないなら、こちらもお前たちを拘束するしかない」

何人かの無謀な者たちは強引に門を突破しようとした。

だが、警備兵に叩き伏せられ、地面へ転がされた。

「こいつを連れていけ。牢へ入れろ!」

その光景を見た人々は、後ずさった。

誰もEdhenから出ようとはしなくなった。

入りたい者は入れず、出たい者も出られない。

「何としても今日中に、あいつらを見つけ出すんだ……」

しかし――。

実際には、その命令そのものがすでに書き換えられていた。

市長を含む関係者たちは、すでに軟禁状態に置かれていたのだ。

________________________________________

――その頃、午前11時。

「警報! 警報! 敵の襲撃だ!」

鉄の手が兵力を動員し、行政庁舎を包囲した。

「ぐっ……!」

「うっ……!」

「弱すぎる。こいつらはただの背景か? 本当に見せかけだけの兵士だな」

「閣下、焦る必要はありません。行政庁舎を制圧すれば、清教連盟はこの街で最も優れた監視拠点を失います。それに冒険者ギルドまで制圧すれば、あちらは一気に不利になります」

その直後――。

清教連盟は冒険者ギルドと商業組合を同時に襲撃した。

「Rusugt様! 奴らが冒険者ギルドと商業組合を攻撃しています!」

「急げ! 市長を捕らえろ! あいつの方が価値がある。今夜8時までに、この優位を失うわけにはいかん!」

________________________________________

正午12時。

清教連盟側もまた、ギルド施設を制圧し終えていた。

新しく任命されたギルド長、Ferisは隅で小さく身を縮めていた。

Celesはすでに去っている。

彼は商業組合から一時的に任命された、ただの代理人に過ぎなかった。

まさか、その直後に内戦が始まるなど、誰が予想できただろう。

「確か、ギルド長は女だったはずだ。あいつはどこだ?」

Ferisは震えながら答えた。

「か、彼女は……昨日、辞任しました。今日はEdhenを出ると言っていました……」

その言葉を聞いたAyla Kirmenは激怒し、Ferisを蹴り飛ばした。

「あ……!」

「さっさと彼女を探し出して、ここへ連れてこい!」

「は、はい!」

兵士たちは命令に従い、Celesの捜索と尋問を始めた。

彼女を捕らえようとしている理由は金だけではない。

彼女が握っている各種の情報網。

そして――一人の追跡者が抱える、歪んだ執着にも似た愛情。

「この私から逃げられると思わないことね、Celes Arvenwald。あなたのためのウェディングドレスは、もう用意してあるわ」

尋問の末、不満分子の一人が口を割った。

Celesは、宿泊区画にいるCyran Yilfenという冒険者の部屋を訪ねたらしい。

その直後、ギルド施設と宿泊区画は徹底的に捜索された。

そして――。

Cyran Yilfenの部屋の扉を破壊した時。

そこには、人影は一つもなかった。

私物も、何一つ残っていなかった。

「くそっ……! 遅かったか!」

平穏だった街は、Edhenが隠し続けてきた狂気の者たちによって、完全な混乱へと変わっていった。

________________________________________

――運命の時刻まで、あと5時間。

第45日目――15時30分。

ギルド施設中央の奥。

地下へと続く隠し扉が、ゆっくりと数センチずつ開いていった。

その先には、苔に覆われ、湿った土の臭いが漂う、真っ暗な細い通路が続いていた。

これは何年もの間、放棄されていた古い地下道だった。

非常時にのみ使われる、現在のギルド長と歴代のギルド長だけが知る秘密の道。

そして、この道は南側へ続いている。

つまり――。

最初に予定していた脱出路は、もう使えない。

松明の淡い光と、携帯電話のフラッシュライトを頼りに、CelesはYilfenを連れて細い通路を進んでいった。

清教連盟の包囲網を抜けるために。

「あなたのあの石板、便利ね。魔力を使わなくても光るなんて」

「いろいろ使い道があるんだ。でも、それについては街を脱出してから話そう」

しばらく進むと、二人はさらに深い場所へと降りていった。

そこは地下水路だった。

街へと流れ込む水路へと続いている。

T-34が待機している地点へ向かうためには、さらに遠回りしなければならない。

「こっちだ。左……」

Yilfenは踵まで覆う暗色の外套をまとい、重いバックパックと、ノートパソコンが入った医療用の革袋を肩に掛けていた。

そのすぐ後ろを、Celes Arvenwaldが薄い革鎧とバックパックを身につけ、静かについてくる。

その瞳は、これまで彼と行動を共にした誰よりも落ち着いていた。

二人は今、生死を分ける状況に直面している。

二つの勢力が街の重要拠点を奪い合い始めたため、計画は一刻も早く実行しなければならない。

しかも、清教連盟は二人を探し続けている。

数時間後。

本格的な衝突が始まる。

そして――その瞬間。

白い光がEdhen全域と、その周辺数キロに広がるすべてを飲み込む。

「出口はここだ。少し気をつけろ……落ちたら、さらに下の地下階へ落ちる。そこから下水道へ繋がっている」

その下水道には、さらに恐ろしい生物が潜んでいる。

獣化したワニや魔物。

奴らは、獲物が流されてくる瞬間をじっと待っている。

カツ……カツ……

ガチャ……!

ドンッ!

「外へ出たわ!」

Celesはそう言って、Yilfenを引き上げた。

地下道の上には、南東側の住宅街にある一軒の建物があった。

周囲の家々に紛れるように建てられ、内部からは扉を補強するハンマーの音が響いている。

血が、少しずつ流れ始めている。

Edhenという街そのものが、巨大な蟻の巣のような混沌へ変わっていく。

新鮮な空気を大きく吸い込み、Yilfenは尋ねた。

「Xillem商会までの道、まだ分かるか?」

「ええ。少なくとも、少しは運動しないとね。歩けば、あと一時間くらいかかるわ」

「分かった。でも、急ごう。各勢力の兵士が、Edhenの街の兵力をほとんど叩き潰している……」

ドォン……!

ドンッ……!

遠くから、次々と爆発音が響いた。

市議会。

冒険者ギルド。

商業組合。

その他、秩序を維持していた勢力はすでに人質として拘束されていた。

そして今、二つの勢力は明確に勢力圏を分けていた。

それぞれが街の地図のおよそ半分を支配している。

北側の警備兵は清教連盟に置き換えられ、南側も同様だった。

ただし、そちらを支配しているのは鉄の手。

Edhenへ出入りする者は、もはやほとんどいなかった。

「設置を始めろ。物資はすべて準備できている」

鉄の手は、rune製の城壁遮断装置・コード531を街壁の周囲へ設置し始めた。

Edhenそのものを巨大な牢獄へ変えるために、包囲網を張っていく。

清教連盟は、まだそのことを知らない。

彼らはただ、辞任して街に潜伏しているCelesを探し続けていた。

「捜索しろ。どこにいるか探せ!」

「おい、今、あそこに人影が見えたぞ! こっちへ来い!」

ドタドタ……。

「お前、この人物を見なかったか?」

「いいえ、知りません……」

シュッ――。

「ぐっ……!」

男は、その場で物言わぬ記憶へと変わった。

首から血が噴き出す。

「別を探せ。このクズどもは本当に面倒だ……」

「こっちです! まだ外へ出ようとしている奴がいます! あの娘を捕らえろ!」

路地の奥から、一人の少女が引きずり出された。

オレンジがかった金髪。

年齢は、およそ16歳ほど。

「いや……いやっ……放して! 助けて……助けて!」

「こいつは……いいな。Ayla様への貢ぎ物として連れていけ」

「はい、閣下」

ドタドタドタ……。

ハァ……ハァ……。

「危なかった……もう少しで捕まるところだったわ。助かった……」

Celesが息を切らしながら呟いた。

Yilfenは何も言わなかった。

ただ息を整え、二人の体力が回復するのを待ってから、再び歩き始めた。

先ほど交差点を通過した時、あの連中に姿を見られてしまった。

その結果、また別の誰かが巻き込まれた。

この街の倫理は、彼があの魔物に脅された時に感じたものとは、もう何もかも違っていた。

________________________________________

18時00分。

あと2時間27分――。

携帯電話の画面に現在時刻が表示されている。

VRシステムのミニマップでは、Xillem商会まであと1km。

Yilfenの手にはK-59がしっかりと握られていた。

だが、まだ引き金には指を掛けていない。

彼の倫理観が、人を撃つことも、人を殺すことも許さなかった。

たとえ生死を分ける状況になったとしても――。

彼が許容できるのは、わずか2発の銃弾を残しておくことだけだった。

――その頃。

Eは街の内部で広がる混乱を見つめながら、YilfenがEdhenから飛び出してくる瞬間を待っていた。

「あと数分で、あの徽章に残されたコードを復元できる。もうすぐ、あなたの名前を突き止められるわ……この正体不明の男」

Eは得意げに笑いながら、混乱する街を見下ろした。

もうすぐ、自分自身の手で獲物を街の外へ追い出すつもりだった。

________________________________________

ドタドタドタ……

Xillem商会――放棄された施設。

18時16分。

ついに二人は到着した。

いくつかの検問を抜け、現在は商会の二階にいる。

そこから、一時的に戦況を観察する。

「そろそろ時間だ。ここで援護してくれ」

「分かった。理解したわ。あなた、何か準備しているの?」

「そう。でも、少し時間が必要だ」

Yilfenはノートパソコンを取り出した。

Celesは、それを見た。

この街では使用を禁止されている「石板」。

それをYilfenが使っている。

しかし、彼女は何も言わなかった。

すでにこの街の法律など、二つのギャングによって踏みにじられている。

今のCelesにとって重要なのは、ただEdhenの外へ脱出することだった。

――車両移動コマンドを起動:

ルート:南西方向へ進み、その後北へ旋回。続いてZis - 30は隊列から離れ、西方向へ走行――

Yilfenはルートの入力を完了した。

あとは、シミュレーションが予測した時刻を待つだけ。

三台の囮車両は、すでに自動的にEの注意を逸らすよう配置されていた。

その三台は――。

BT-5、ZIS-30、Gaaz SPAA 4M。

「――起動」

ブルルル……

画面に視界が映し出される。

先頭を走るBT-5は、Yilfen自身が直接操作している。

残りの二台もその後に続き、倉庫から狭い壁の亀裂をまっすぐ抜け、街の外へと飛び出した。

ドンッ……ドンッ……!

ガラガラッ……!

薄い石壁が崩れ、三台すべてが通過できるほどの穴が開いた。

――キーEを3回――最大加速――

グルルルル……!

三台は設定されたルートに従って、自動的に移動を開始する。

二台の車両に仕掛けられたruneの徽章が赤く点滅し、信号を発信した。

Zis - 30に搭載されたのは、VoldaでYilfenが手に入れたゲームの徽章。

それは実際に操縦者がいるような信号を模倣していた。

車両のエンジン音が風の音に混じりながら響き渡る。

その音は――。

南側の高台にある、照準器を引き寄せた。

「ついに……出てきた」

Eの目が細くなる。

「この特徴。この動き……そして、この車両……ふふふ……人間にしかできない動きね」

Eは三台の車両を見つめる。

「それも……三台も? 面白い」

そして――。

その声には狂気じみた笑みが浮かんだ。

「でも……全部、粉々にしてあげる」

Eはいつもと同じように、遠距離から熱画像照準器を通して監視していた。

三台の囮は、見事にEを誘き寄せることに成功した。

「行きなさい、鋼鉄の獣。奴を生け捕りにするのよ……それとも、殺してしまいなさい」

「点滅している――三台のうち、一台が奴ね」

グォォォォォォォン……!

Leopard 2A6*が始動した。

街の外に存在する最大の脅威は、見事に誘導された。

Yilfenは状況を確認すると、そのままAI自動操縦へ切り替えた。

そしてノートパソコンを閉じ、Celesへ声をかける。

「Celesさん、俺たちも行こう」

「分かったわ、Yilfen。でも、どうやって街を出るの?」

「心配いらない。あれはもう、裏の倉庫で待っている」

________________________________________

商会施設の地下。

MinhとCelesは、Yilfenが仮に施錠しておいた裏口を開いた。

その内部。

乾いた草と、発見防止用の銀色の布で覆われた場所に、一台の青い機械が隠されていた。

履帯。

新しいエンジンオイルの臭い。

そして――。

ソ連製中戦車、T-34 model 1942。

76.2mm砲を備えた鉄の怪物が、静かにそこに待機していた。

これはYilfenのSPをすべて使い切った車両でもある。

そして、封鎖されている北門を突破するためには最適な選択だった。

十分な速度。

そして、中口径砲の一撃や装甲貫通矢を耐えられるだけの装甲。

「こ、これは……何? 大きい……」

Celesは目を見開いた。

「どうやって、こんなものをここへ隠したの?」

彼女がこれほど巨大なものを見るのは初めてだった。

魔獣でもない。

魔力で動く機械でもない。

これは――鋼鉄の冷たさをまとったエンジンで動く、異形の機械だった。

しかしYilfenにとっては、それほど驚くことではなかった。

彼はすでにシミュレーションの中で何度も操縦している。

少なくとも、基本的な手動操作なら理解している。

さらに、車内には操作マニュアルも残っている。

数分あれば、Celesへ簡単な操作方法を教えることができる。

「俺たちの信頼できる仲間さ。こいつと一緒に行く覚悟があるならな」

「これ……何ていう名前なの?」

「名前は……T-34、1942年型。北の国から来た、油で動く鉄の機械だ」

「名前……すごく読みにくいわ」

Celesが言った。

「それより、あなた。これを動かしてみるか?」

「えっ……わ、私が……動かすの!?」

Celesの顔が再び少し赤くなる。

目の前にある巨大な機械。

男なら誰もが一度は運転してみたいと思うような存在。

彼女もまた、初めて触れる地球の機械に、少なからず興味を抱いていた。

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19時20分。

Yilfenは、Celesへ基本的な操作をいくつか教え始めた。

西側の門を突破する前に、最低限の操作だけでも覚えてもらう必要がある。

Xillem商会から北門までは、およそ1.5km。

すべてを万全に準備しなければならない。

Yilfenは手動装填システムを再確認し、主弾薬庫の蓋を開く。

76mm砲弾が、一発ずつ銅色の輝きを放ちながら車内に整然と並んでいた。

Celesは初めて戦車の車内へ入り、少し戸惑っていた。

Yilfenはすぐに基本的な砲弾の種類、装填方法、そして照準方法をマニュアルを使って説明する。

与えられた時間はわずか30分。

その間に、煙幕弾を使って敵兵の中を突破できる程度の操作を覚えてもらわなければならない。

シミュレーションで行った脱出方法と同じように。

「これが煙幕弾。こっちは榴弾。こっちは徹甲弾だ」

Yilfenは砲弾を順番に示した。

「砲に装填する時は、このレバーを動かしてから、この弾を入れる。装填したら、ここを覗いて照準を調整して、ここで発射する」

「その隣に近距離用の機関銃がある。でも、これは触らない方がいい」

カチャ……ガチャン……カチャカチャ……

「基本操作はこんな感じだ。まだ実際に装填する必要はない」

30分間、次々と飛び出してくる専門用語。

初めて触れる機械。

その操作。

それらを覚えるうちに、Celesはまるで別世界へ引き込まれたような感覚になっていた。

まるで頭の中が、子供のようになっていく。

元ギルド長としての理性ではなく、一人の人間として純粋に目の前の機械へ惹かれていく。

操作方法。

砲塔の旋回。

そして砲撃。

そのすべてが、彼女の頭の中を大きく開いていくようだった。

まるで、鋼鉄の蜂に追われながら、暴れる狼を無理やり手懐けているような感覚だった。

「……終わった。分かったか?」

「うーん……うん……少し……分かった」

Celesは答えた。

もちろん。

三か月間、乗員の教官を務めた経験があるからこそ、Yilfenには分かっていた。

初めての人間へ、たった一度の説明で機械の操作を教えることが、決して簡単ではないということを。

________________________________________

19時50分――30分経過。

Edhen脱出の時が来た。

「荷物は全部そろったか、Celesさん」

「ええ、全部あるわ。出ましょう……。いつか、この街がまた平穏を取り戻せるといいけど」

Yilfenは何も言わなかった。

Celesには伝えたくなかった。

Edhenが二度と戻ることのない運命を辿ることを。

「あとで、この機械の砲撃を手伝ってもらう。とにかく、他の人を狙わなければいい」

「わ、分かった……気をつける。何かあったら、また教えて」

ブルルルル……

ガタガタガタガタ……

ディーゼルエンジンが低く唸る。

低く、深く、確かな音。

次の瞬間――。

轟音とともに、T-34は緩くなっていた錠前を弾き飛ばした。

木製のXillem商会の門が、大きく開かれる。

二人はそこから、北へ続く大通りへと飛び出した。

しかし、その先はすでに封鎖されている。

YilfenはVRシステム上の加速キーを押した。

視線は北門へ。

Celesは砲塔内部で必死に身体を固定する。

後方では、放棄されたXillem商会の建物が次第に遠ざかっていく。

T-34は走り続ける。

そしてEdhenの混乱の中へ、その姿を飲み込ませていった。

――その頃、別の場所では。

「奴ら……突然、隊列を分けた」

Eが画面を見ながら呟く。

「二つの信号は南へ向かっている。だが、奴が乗っている可能性のある機械は……西へ」

Eの口元に笑みが浮かぶ。

「悪くない。でも……私をあまりにも侮りすぎね」

Eは、Yilfenが準備した囮を追跡し続けていた。

まだ知らない。

この選択が、シミュレーションで予測されていた結末そのものを変えることになるとは。

――二人ともEdhenと共に消滅するはずだった、あの結末を。


第四部――北門突破

19時55分……

Edhenの北門へ続く石畳の道を、夜空が静かに覆っていた。

足早に巡回する兵士たちの足音に合わせ、大地がかすかに震えている。

彼らは清教連盟によって入れ替えられた新たな警備兵だった。

胸元には槍の紋章が刻まれた徽章。

金属を混ぜた革鎧に身を包み、今しがた下された命令――鉄の手による奇襲に備え、すべての城門を封鎖する準備に追われていた。

同時に、街から脱出しようとする者を阻止し、拘束すること。

そして――。

特に捕縛を命じられているのは、Edhen冒険者ギルド元ギルド長、Celes Arvenwald。

城壁の上では、鉄の手が密かに清教連盟の兵士たちを一人ずつ始末しながら、Rune装置を設置していた。

三人一組の部隊が見張り台に立ち、城壁上の道を見渡している。

その足元には、胸に槍の紋章を付けた警備兵たちの死体がいくつも転がっていた。

その一人。

若い兵士、Kelwin。

手には血の臭いが残る剣。

彼は次々と装置351を城壁へ設置していた。

「これで高さ20メートル、奥行き10メートルの壁を作れる。俺たちが装置を設置した後じゃ、一匹のネズミだって逃げられない」

隊長がKelwinへ説明する。

「起動まで、あとどれくらいだ?」

Kelwinが尋ねる。

その声には、まだ焦りが残っていた。

「Runeコード351に不具合がなければ、10分もかからない」

隣にいた男が答え、さらに500mほど離れた位置へ等間隔に置かれている装置を指差した。

三人は351を大量に詰め込んだバックパックを背負い、そのまま無言で作業を続ける。

北門までは――あと数十歩。

________________________________________

北門。

門はまだ閉じられていなかった。

北側から補給部隊が到着し、清教連盟への支援に向かおうとしている。

しかし、街の住民が外へ出ることはできない。

警備兵たちはすでに待機し、門前に防衛線を敷いていた。

少しでも不審な動きをする者がいれば捕らえ、尋問する。

鉄の手の者でなければ、評議会の命令を理由に拘束。

そして鉄の手の者なら――その場で処刑。

ドンドンドン……

「……何の音だ?」

一人の門番が、妙な音に気づいた。

遠く。

一本の大通り、その先1kmにも満たない場所。

Rune石の街灯に照らされた道の上を、何かがこちらへ向かっている。

その向こうから、奇妙な砂埃が舞い上がっていた。

風ではない。

何かがこちらへ近づいている。

Kelwinはちょうど351の装置を取り出し、北門の城壁へ設置しようとしていた。

彼は目を細めた。

暗闇の中。

舞い上がる砂埃の向こうに、歪んだ影が見える。

そして――。

エンジン音。

馬車ではない。

騎獣でもない。

鉄と鋼でできた機械が唸る音だった。

城門の下では、突然混乱が始まった。

「な、なんだ……あれは?」

「何かが……こっちへ突っ込んでくるぞ!」

清教連盟の兵士たちは一瞬硬直した。

そして、車両が最初の検問所――約500m手前へ迫った瞬間、ようやく反応する。

「迎撃準備! 防御陣形! どこの勢力か分からん!」

隊長の叫び声が城門全体に響いた。

その声は、北門の高所を制圧したばかりの鉄の手の三人にも届いた。

車両が唸る。

履帯が砂と埃を巻き上げ、地面を削りながら突き進んでくる。

砲塔の内部では、Celesが固く拳を握りしめ、驚愕に目を見開きながら照準器を覗いていた。

「もうすぐ警備所に接近するわ。ここからどうするの? それに……あなた、どうやってこれの運転を覚えたの?」

「補助システムがあるから。それだけだ。手動でも操縦できるけど、この状況じゃ難しすぎる」

Yilfenは前方を見据えた。

「今は、俺が説明した通りにしてくれ。煙幕弾を取って……」

薄暗い電灯の光が、Celesの顔を照らす。

疲労の色が浮かんだ表情。

汗。

金属。

そして外套から漂うシナモンのような香り。

それらがT-34の砲塔内部に混ざっていた。

「あなたは本当に……普通の人なの?」

Celesは煙幕弾を手に取りながら尋ねた。

エンジン音とともに、車両はさらに接近している。

「普通の人だ……でも、完全にそうとも言えない」

Yilfenは少し考えた。

「この国の人間じゃない。Voldaから来た旅人だ。Voldaが、俺が最初に足を踏み入れた町だった」

Celesは黙った。

しばらくして、彼女は少し低い声で話し始める。

「あなたと出会ってから……確かに、私の心の中で何かが揺れ始めたの」

「VoldaからEdhenへやってきて、この戦争に巻き込まれた奇妙な人」

「何度もあなたと会っているうちに、ギルドの職員たちはいつも言っていたわ。あなたと私、とても相性がいいって」

Celesは苦笑する。

「……今思えば、本当にそうだったのかもしれない」

「私たちが初めて会った時から、ずっと……私はあなたを、長い間探し続けていた人のように感じていた」

「年齢も、立場も……元ギルド長という私の身分も、あなたとは合わないかもしれない」

そして――。

「でも、これだけは伝えておきたかったの」

「それって……」

Celesは一度息を吸った。

「――私はあなたが好き……たぶん、そうなんだと思う」

残り200m。北門警備地点。

弩、準備! 撃て!

ヒュン、ヒュン、ヒュン……!

カン、カン、カン……!

「止まりません、閣下!」

「どけ! 衝突するぞ!」

ギィィィィィ……キィ……ガチャガチャ……!

――車体が止まった。

警備線まで、あと数歩。

あまりにも近い。

清教連盟の兵士たちは恐怖のあまり、その場へ伏せる。

「衝突……したか?」

「……止まった」

一人の兵士が叫んだ。

YilfenはT-34を急停止させ、Celesへ視線を向けた。

その目には複雑な感情があった。

Celesは唇を噛み、顎をわずかに震わせている。

本気だった。

本当にそう思っていた。

この荒廃した街の中で、ただ一つ残された純粋な想い。

「ごめんなさい……こんな時に言うべきじゃなかった」

Celesは小さく呟く。

「今の私は、少し……感情が変になっているだけ」

「ただ……あなたが、昔私が憧れていた人に少し似ていたから」

砲塔内部で、Celesは煙幕弾を握ったままだった。

Yilfenは静かに答える。

「分かる。こんな状況だから、そう思うのも無理はない」

「そう考える権利は、あなたにある」

しかし――。

Yilfenは首を横に振った。

「でも、俺はあなたが一生の幸せを預けるべき人間じゃない」

「貴族でもない。使者でもない」

「俺はただ……この世界で生き残る場所を探しているだけの人間だ」

「その話は、ここを脱出してからにしよう」

Celesは静かに頷いた。

「……分かった」

その表情から、先ほどまでの少女のような揺らぎが消えていく。

そして――。

かつて戦場を駆け、ギルド長として威厳を持っていた女性の顔へ戻った。

________________________________________

北門の外。

「敵が警備所を攻撃している! 奴らを止めろ! 一人たりとも門を越えさせるな!」

その頃、鉄の手は残り一基。

たった一つの351装置を設置すれば、Edhen全域が完全な閉鎖戦場になる。

Kelwinは最後の装置を持ちながら、さらに一人の警備兵の首を切り落とした。

そして――。

「なんだ、あれは……?」

彼の目に青い機械が映った。

「何だ、あの真っ青な怪物は!? どこの勢力でもないのか?」

「俺にも分からない」

仲間が答える。

「あと一枚だ。向こうの魔術師たちからも、異変が起きていると報告が来ている。早く最後の一枚を設置しろ。その後はすぐ撤退だ」

「設置してから一分後に起動するはずだったが……」

男は言葉を切った。

「いや、もう遅れるな。設置後、すぐに起動する」

城門の下では、武器を構える音が連続して響いていた。

弓兵たちが一斉に弦を引く。

狙いは――車両。

「準備……」

YilfenはすぐにT-34のエンジンを再始動させた。

「Celes! 手に持っている煙幕弾。それを、さっき説明した通りに……装填して!」

「あ……忘れてた……!」

Celesが声を上げる。

彼女は煙幕弾の向きを調整し、両手で砲尾へ押し込んだ。

カチャ……ガチャッ……カン。

「装填完了」

乾いた金属音が砲塔内部に響いた。

T-34のエンジン回転数が上がる。

ゆっくりと車体が前進する。

「仰角を3度下げて。砲塔を正面へ。さっき説明した通りに狙ってくれ」

Yilfenは前方を見据えた。

「俺がそのまま突っ込む」

Celesは照準を調整する。

手が震えていた。

「撃て」

Yilfenが言った。

ドォンッ!

76mm煙幕弾が撃ち出された。

次の瞬間――。

巨大な煙幕が広がり、警備所全体を濃い白煙が覆った。

「武器を持っているぞ!」

ドンッ……シュー……シュー……!

ああああああっ……!

弓兵と防衛部隊の陣形が崩れた。

本能的な恐怖が、意志を上回る。

「そんな……あり得ない!」

「Ameから来た清教連盟の機械部隊は、前線で戦っているはずだ……!」

「なのに、どうしてここに機械がいるんだ!?」

一人の老兵が叫んだ。

予備部隊のM3 Leeを訓練していた老人だった。

街の兵士から応援を要請されて、たった今到着したばかり。

そして煙の向こうを走る異形の存在を目撃したのだ。

「もう一発、煙幕弾を!」

Yilfenが叫ぶ。

「Celes、同じように!」

「分かった!」

Celesはさらに一発を取り出した。

灰色の弾体。

さっきと同じ識別リング。

少しずつ慣れてきた。

彼女は砲弾を装填し、仰角を調整する。

そして――。

引き金を引いた。

カチャ……ガチャッ……カン。

ドォンッ!

「あ……!」

爆発音が砲塔内に響き、Celesの耳が一瞬麻痺する。

ドンッ!

煙幕弾は城門上部へ直撃した。

煙が一気に広がり、城壁上の鉄の手と、下にいる清教連盟の兵士たちの視界を完全に奪った。

ガチャッ……カラン、カラン……

熱を持った真鍮色の薬莢が飛び出し、床へ落ちる。

「今だ! しっかり掴まれ!」

Yilfenが叫ぶ。

「わ、分かった……!」

Celesは耳鳴りの中で答えた。

T-34が獣のような咆哮を上げる。

煙の中へ突入した。

城門下の兵士たちは見えない敵へ向かって、ただ闇雲に矢を放つ。

だが、誰一人として目標を捉えられない。

履帯が門を塞ぐ木製の柵を吹き飛ばした。

近くにいた兵士が一人、衝撃で宙へ放り出される。

幸いにも重傷ではなく、ただ意識が朦朧としているだけだった。

「よかった……誰も死んでいない」

Yilfenは警備所を抜けながら、安堵の息を吐いた。

彼がここで人を撃たず、殺さない理由は、単なる倫理観だけではない。

もう一つ。

本人にしか感じ取れない、直感のようなものがあった。

(Eには、俺の両手が血で汚れたことがあるかどうかを識別できる道具がある。正確には――彼女は、俺が本当に人を殺そうとした瞬間、その殺意を何らかの方法で感じ取ることができる。そして、その感覚を利用して獲物の位置を特定している)

一か月以上前のシミュレーション。

YilfenがK-59を使い、生存者を倒すという賭けのような行動を繰り返した結果、十分な量の殺意が蓄積した。

そしてその結果――。

北側からT-34でEdhenを脱出した直後、Eに発見された。

今になってようやく理解した。

Eは――。

罠の中に、さらに罠を張っていたのだ。

「やっぱり……予想できないものは、最後まで予想できないまま残るんだな」

T-34の車内。

Yilfenは操縦レバーを強く握っていた。

手にはエンジンオイルが付着し、手首の数か所には擦り傷ができている。

Celesは彼を見つめた。

何も言わない。

ただ砲手用照準器へそっと手を置く。

それは、T-34の乗員の一人としての、言葉にならない意思表示だった。

一方、城壁の上では――。

鉄の手が最後の装置を設置し終えていた。

「完了だ。混乱に乗じて、最後の装置まで設置した」

「撤退するぞ」

ドタドタドタ……。

しかし――。

本来なら、これが起動するまで一分以上あるはずだった。

ところが。

――違った。

(愚かなモルモットども。我々がとっくに10秒へ変更していることにも気づかないとはな。全員まとめて死ぬがいい……)

地下施設。

魔法陣を通って避難しようとしていた、一人の科学者の声だった。

10……9……8……

カウントダウンの音が鳴り響く。

まるで死の鐘。

城門では数人の兵士が門を閉めようとしていた。

だが、煙の中から――。

一つの巨大な物体が、猛烈な勢いで突き抜けていった。

7……6……5……4……

ブルルル……グルルル……!

ヒュッ――。

「逃げたぞ!」

門番が無力に叫ぶ。

T-34は煙の向こうへ消え、北門の外へと飛び出した。

「止まれ!」

兵士が追いかけようとする。

しかし――。

3……2……1……0。

ドォン――。

「な、なんだ……?」

「どうして……進めない!?」

槍を持った兵士が門の外へ飛び出そうとする。

だが、目の前には見えない何かが立ちはだかっていた。

(障壁、起動。城門、閉鎖。ようこそ――我が最大の実験場へ。ハハハハハ……)

________________________________________

20時――Edhen

(このゲーム……始まったな)

「光……?」

煙がゆっくりと晴れていく。

鉄の手はすでに撤退していた。

清教連盟の兵士たちは、何が起きたのか理解できず、ただ呆然と立ち尽くしている。

その時――。

街の中心から紫色の光が、まっすぐ夜空へと伸びていった。

今やEdhen全体は、二つの勢力――。

鉄の手。

清教連盟。

その二つによって取り合われる、巨大な盤上となっていた。

――だが。

(実のところ……狂科学者たる我々こそが、この盤上を操る本当の支配者なのだ。ふふふふ……)

狂科学者から爆破任務を与えられた男が、東側の高台に立っていた。

山の上に築かれた監視台。

その周囲には、何人もの実験担当者が並んでいる。

「これは、かつてのMark 6魔法球を超えるものだ」

「高濃度の魔力を持つRune石を精製し、遠心分離して核にした」

男は満足そうに笑った。

「さあ……我々の成果が、どれほどのものか見せてもらおう」

「なぜ……こんなに早く起動した?」

Kelwinは撤退しながら、異変に気づいていた。

その頃――。

YilfenとCelesは、すでにEdhenを脱出している。

だが。

あと27分。

それだけの時間しか残されていない。

その光が夜空を照らす頃――。

この街に生きている者は、一人も残らなくなる。

Celesはほっと息を吐いた。

これからどこへ行くのか。

そんなことを考えながら、彼女はかすかに笑った。

少なくとも、自分たちは混乱から抜け出した。

だが、街に残された者たちのことを忘れたわけではない。

一方、Yilfenは何も言わなかった。

指は今も、VR上の仮想キーを押し続けている。

彼の心の中にあるのは、ただ一つ。

――まだ爆発していない地獄から逃げ出しただけだ。

そしてEは――。

彼女が張り巡らせた「罠の中の罠」は、意図せずYilfenによって破られていた。

それに気づくことなく、Eは自ら用意した獲物を追い続けている。

Yilfenが時間を稼ぐために放った最後の囮を。

「二つの囮は、すでに破壊した」

Eは熱画像照準器越しに状況を確認する。

「残る最後の獲物は……西側」

彼女はしばらく画面を見つめた。

「Edhenの外へ向かう殺意は感知できない。全部、街の内部に集まっている」

「つまり……奴は、あの混乱から運良く逃げ切ったということね」

Eは笑う。

「でも……ははは」

「西へ逃げて、私が囮に引っかかったと思っているの?」

「残念だったわね」

「この罠の中の罠は――」

「最初から、あなたのために用意したものよ」

「正体不明の男……」

ブルルル……

Eの前で、巨大な機械のエンジン音が低く響く。

彼女は最後の標的を見つめた。

「最後の標的……西へ走っている、あの車両ね」


第五部――Frontal Attack

20時10分――Edhen中心部。

最後の決戦が始まった。

清教連盟を支援するはずだった援軍は、結局いつまで経っても到着しなかった。

鉄の手が一歩先んじ、援軍が来るという偽の文書を流していたのだ。

一方、清教連盟側では――。

Ameから運び込まれた4両のM3 Leeが、鉄の手の拠点へ向かって一直線に突き進んでいた。

鉄の手の守備兵たちは警戒を怠っていた。

そして、その隙を狙って戦線が一気に動き始める。

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北門。

「な、何か……門を塞いでいるぞ……」

「結界魔法だ。でも、いったい誰が……?」

「さっき、あの機械から出た煙が消えた後、城門の上で鉄の手の連中が何か作業をしているのを見た奴がいる。恐らく、あれは奴らの仕業だ」

「首領はどこだ? 今、どこにいる!?」

「首領はすでに鉄の手と戦っている最前線へ向かわれています!」

「急いで伝えろ! それと、あの青い獣についてもだ! 恐らくCelesは、あの獣を使って街を脱出した……!」

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南側。

グルル……グルル……

「おい……今の音、何だ?」

「な、なんだ……?」

夜の中を、二つの鋼鉄の影が進んでいた。

鉄の手の縄張りへと、容赦なく突入していく。

「おい……あそこを見ろ!」

「音はあっちからだ!」

ドォン――!

ドンドンドンドンドン……!

「あ……ああ……!」

「ぐあっ……!」

ヒュン、ヒュン……!

機関銃と砲撃の音が鳴り響き、鉄の手の拠点全体が大地を揺るがした。

「清教連盟の武器だ! 襲撃された! 急いでRugust様へ報告しろ!」

ドンッ――!

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南側監視所――数分前

爆発まで残り20分。

20時07分。

「報告します」

監視員が状況を伝える。

「東側戦線――清教連盟は二個のM3 Lee戦車部隊、槍型rune兵器、そして近接戦闘兵を展開しています」

「放たれる魔法の一つ一つには、凍てつくような殺意が込められています。しかし敵対する『鉄の手』も、血と弓矢、そして新兵器である我々のM-60機関銃を用いて応戦する構えです」

「よし」

狂科学者は満足そうに頷いた。

「では、異形兵器を投入しろ」

「すべてが魔力爆発に飲み込まれる前に、生きた侵食個体を一体使ってみよう。どこまで耐えられるのか、実験してみるとしよう」

「了解しました」

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Edhen中心部――血と混乱の炎上地帯。通信途絶。

誰も気づかなかった。

仲間の死体を踏み越える足音。

地下から放たれた異形の生物たちの咆哮。

その混乱の中――。

一体の怪物が解き放たれていた。

鉄の手が飼育していた白いワニ型の獣たちは、そいつにとって開宴のための餌に過ぎなかった。

それは爬虫類と異形生物が融合したような存在。

全長6mを超える巨体。

首はmana装甲に覆われ、口にはノコギリのような鋭い牙が並んでいる。

危険度:Rank IV*+

能力:戦術的破壊

地上――。

中心部近くでは、鉄の手のM3 Leeが戦場を蹂躙していた。

「おい……地面が揺れてないか?」

護衛兵がそう言った瞬間――。

ドゴォッ!

大地の亀裂を突き破り、怪物が飛び出した。

そのまま近くにいた警備兵の頭を、一瞬で噛み砕く。

「異形獣だ!」

「撃て!」

ドォン! ドォン!

75mm通常弾が直撃する。

しかし――。

まるで軽く撫でられた程度だった。

ザシュッ――!

「ああああああああっ!」

鋭い爪がM3を紙切れのように引き裂いた。

小規模な爆発音が連続して響く。

その一両は、あっという間に鉄屑へと変わった。

グォォォ……! ドォン……!

怪物はそのまま街の中心へと突進した。

まるで、自らが必要とする殺意を感じ取ったかのように。

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Edhen――20時10分。

「ふん。これが、おそらく最後の対決ということになるな。清教連盟」

Rugustは自信に満ちた顔で言った。

身長1m90ほどの巨体。

手には大剣。

身体には外套。

背後では弓兵と弩兵たちが、清教連盟へ狙いを定めている。

対するAylaは、鋭い視線を向けた。

「あなたたちは、まだ私たちを甘く見ているようね」

「もうすぐ私たちの援軍が到着する。ちょうどお前たちの首が掲げられる頃にね」

Aylaは一本の剣の柄を強く握っていた。

それは、Velindia三大剣器の一つと呼ばれる聖剣。

その隣には剣士たち。

そして、布で覆われた二台の機械。

「そういえば――」

Rugustが笑う。

「お前は、あの元ギルド長を探しているんだったな?」

「ふふふ……まあ、そうだろうな」

「ついさっき、部下から報告があった。誰かが街の外へ脱出したそうだ。ひょっとすると……あの女かもしれんな」

「それがどうした?」

Aylaは冷たい声で答えた。

「あなたの命を奪ってから、彼女を探しても遅くはないでしょう」

Aylaは戦闘態勢へ入った。

片手を背後へ回し、いつでも剣を振り下ろせる姿勢を取る。

すると――。

Rugustが笑った。

「それと、もう一つ教えてやろう」

「俺たちは、お前たちが二週間前に派遣した補給部隊を、とっくに止めている」

その言葉と同時に――。

彼の部下たちがあらかじめ配置していたM-60機関銃を構える。

銃身には、Ameから来た兵器であることを示す――。

M-60

という文字が刻まれていた。

Aylaの顔が怒りで歪む。

そして、聖剣へと魔力を注ぎ込んだ。

「貴様……!」

「だから……我々の金が減っていたのね。お前たちが、そしてXillemまで……!」

彼女が手を上げる。

そして――。

「全員、殺せ。」

「「「行けぇぇぇぇ!!」」」

Rugustも怯まない。

「撃てぇぇぇぇ!!」

ドンドンドンドンドン……!

ヒュン、ヒュン、ヒュン……!

ヒュュュン……!

ズブッ、ズブッ、ズブッ……!

カン、カン……!

「ああああああああっ!」

無数の銃弾と矢が一斉に飛び交う。

清教連盟の兵士が百人以上、次々と倒れていった。

Aylaは部下たちが身を盾にしたことで、かろうじて生き残っていた。

「3番、4番――出撃!」

布が一気に取り払われる。

その中から――。

M3 Lee

が姿を現した。

「何だ、あれは!?」

「こんな兵器の情報は来ていないぞ!」

「撃て! すぐに破壊しろ!」

ドンドンドンドン……!

カン、カン、カン……! ヒュッ……!

「だ、駄目です!」

「貫通しません、閣下!」

ドォン……! ドォン……!

タタタタタ……!

「ぐっ……!」

「隊長、避けて!」

ザシュッ……!

ヒュッ……ドォン!

砲撃と剣撃。

魔力を込めた激しい攻撃が、鉄の手へ大きな損害を与えていく。

Rugustは大剣で砲弾の軌道を逸らしたため、かろうじて立ち上がることができた。

しかし――。

二百人を超える戦士。

そしてM-60機関銃を扱っていた兵士3人。

そのすべてが倒れた。

両陣営の損害はあまりにも大きかった。

それでも戦いは止まらなかった。

砲撃と銃撃が建物を次々と破壊する。

そこには、まだ住民たちがいた。

「いや……いやっ!」

「父さん……!」

「母さん……!」

あちこちから、悲鳴が響き渡る。

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別の場所。

「Ga……Garis……逃げなさい……」

「嫌……お母さん……!」

「お母さん!」

少女が走る。

その背後で――。

瓦礫に押し潰された母親が、動かなくなる。

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冒険者ギルド。

「いや……Jane……!」

「頼む……置いていかないでくれ……!」

二人の冒険者が身を隠していた場所へ、砲弾の破片が直撃する。

もし、この戦争が起きていなければ。

もし、あの出来事が起きていなければ。

二人はきっと――。

幸せに生きることができたのかもしれない。

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別の場所。

剣で切り裂かれた建物から逃げ出した避難民。

その中に、一人の少女がいた。

道路の真ん中で泣いている。

そのすぐそばを、M3 Leeが容赦なく進んでいた。

「うっ……うう……」

「おい! 誰かあの子を助けろ!」

「もうすぐあれが来るぞ!」

「俺が行く!」

一人の男が飛び出した。

少女を抱きかかえ、そのまま逃げようとした――。

ドンドンドンドン……!

「く……そ……ああああっ……!」

隠れていた者たちは、ただ見ていることしかできなかった。

機械がその男の身体を踏み潰し、そのまま機関銃と砲を建物へ向ける。

ドンドンドンドン……!

その瞬間――。

先ほど解き放たれた怪物が横から飛び込んできた。

反応する暇もなかった。

M3 Leeが一台、怪物の爪によって吹き飛ばされる。

ドォン……!

ドガァンッ!

車体が引き裂かれ、乗員とともに爆発した。

すべてが一瞬で終わる。

怪物はなおも進み続ける。

目指す先は――。

中心広場。

二つの勢力が最後の決戦を繰り広げている場所。

まるで蛾が炎へ飛び込むように。

しかし、その身体も爆発の影響ですでに傷ついていた。

怪物は不死身ではない。

それは一時的に爆発的な力を発揮しているだけだった。

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20時25分。

中心広場付近。

すでに二人の最高指揮官――。

Rusugt

そして――。

Ayla Kirmen

しか残っていなかった。

いや。

もはや二人の戦争ではない。

突然現れた異形生物との戦いへと変わっていた。

その怪物は――。

Rank Vに到達した、*特殊個体。

だが、二つの勢力が放った爆発と砲撃によって、怪物もまた深刻な傷を負っていた。

そして――。

ドスン……。

ついに倒れた。

その代償として、両陣営の戦力はほぼ壊滅。

機関銃兵を無力化し、二両のM3 Leeを破壊した。

それも、侵食によって変異した特殊な爪によって。

ウゥゥゥゥゥ……

死体。

戦車の残骸。

血。

火薬の臭い。

そのすべてが混ざり合う中で、二人は向かい合っていた。

剣はすでに抜かれている。

目は赤く染まっている。

そして――。

二つの勢力のうち、生き残れるのは一人だけ。

これが最後だった。

二人とも重傷。

それでも、互いを殺すだけの力はまだ残っていた。

「お前が誰であろうと、あの怪物であろうと……これで最後だ」

Aylaが言った。

声は枯れている。

manaの残量も、あと一度だけ。

聖剣にはいくつもの小さな亀裂が走っていた。

Rugustは乾いた笑いを浮かべ、大剣を構える。

「死んだ街に……何の道理が必要だ?」

そして――。

「死ね……」

3……2……1……起動!

カーン……ピッ……グングングングン……ズン……!

ドォォォォォォォォォォォォン……!

二人は同時に武器を振り上げ、互いへ向かって突進した。

しかし――。

どちらも相手へ止めを刺すことはできなかった。

白い光が爆発した。

すべての命を飲み込むように。

________________________________________

Edhen中心部。

真っ白な光が、一瞬にして膨れ上がった。

警告はない。

考える時間もない。

「来たぞ!」

丘の上にいた人物が呟いた。

ガラス越しに見えるのは――。

空へ伸びる、眩い魔力の柱。

やがてそれはさらに大きくなり――。

街の中心部を引き裂いた。

一瞬のうちに、その光は巨大な柱となって大地を貫く。

そして――。

巨大なキノコ雲へ。

空が歪む。

空間そのものが、砕けた金属のような音を立てて軋む。

兵士。

住民。

指揮官。

すべてが、ほんの一瞬で現実から消し去られていった。

「すべて……終わった」

鍛冶師Brellは、自らの作品を最後に一度だけ眺めた。

そして――。

白い光の中へ消えていった。

「もう泣くな、馬鹿な妹……」

「来世でも、お前が良い子のままでいられるといいな」

「このRylsantという兄が、ずっと一緒にいてやれたらな……」

彼は妹を抱きしめる。

そして、その家族とともに白い光へ消えていった。

瞬きをする暇すらない。

皮膚は溶けた。

声を上げる暇すらない。

身体は灰になった。

それが――。

Edhenにいたすべての住民。

そして、半径5kmの範囲にいた人々へも災厄は及んだ。

ただし、純粋な核兵器とは違い、衝撃波そのものは比較的弱かった。

そのため、安全に観測できる距離はより広かった。

光の軌跡は、まるで死者のための交響曲のように空へ伸びていく。

そして――。

Edhenという街が抱えていたすべての秘密を、一緒に飲み込んだ。

――爆発残量相当:28kt

――民間人損失:約290,415人……

________________________________________

Edhenからおよそ15km。

ある丘の斜面で――。

T-34 1942が停止した。

その瞬間。

凄まじい轟音が周囲一帯を震わせた。

Yilfenは無意識に車体を止めた。

Celesも強烈な衝撃に目を伏せる。

しばらくして、ようやく状況が落ち着く。

YilfenとCelesはハッチを開いた。

そして――。

かつてEdhenだった場所を見る。

そこにはもう、巨大な光の柱だけがあった。

すべてを飲み込んでいる。

「そ、そんな……」

Celesの声が震えた。

「あり得ない……」

「全部……飲み込まれて……」

「みんな……」

涙が頬を伝う。

Celesはその場に崩れ落ちた。

光を見つめる。

身体が小さく震えている。

彼女の目に映っているのは――。

Edhenから吹き上がる破壊の炎だけ。

これまで共に歩んできた人々。

守ってきた仲間。

彼女が長い年月をかけて築いてきたすべて。

そのすべてが、残酷な光の中へ飲み込まれていた。

一方――。

Yilfenの瞳に浮かんでいたのは、記憶だった。

過去の戦場。

あの時の戦い。

そして――。

2024年初頭――現実。

音楽は竜巻のように記憶の中を駆け巡る。

その曲は――。

『Frontal Attack』

かつての記憶と、震える現実が重なっていく。

Edhenで起きた、かつてない大戦。

二つの勢力が殺意を剥き出しにし、一歩も引かなかった戦場。

砲火と銃撃によって、空は黒煙に染まる。

かつて光に照らされていた街路には――。

焼けた鉄の臭い。

そして、砕けた肉の臭いだけが残る。

あの時と……似ている。

一つの戦場の記憶。

Map:古代遺跡アンデス

使用車両:IS-4、BMP-1

War Thunderで警報音が鳴り響いた時。

そして、Yilfenが操作していたTU-4が、マップの最後方へ出現した時。

Cover me!

Roger that!

No enemy plane comes…

敵チームがチャットで叫んでいた。

核爆弾を搭載した航空機を探し回る敵。

サイレンが鳴り響く。

しかし、味方が敵機も対空砲もすべて撃墜していた。

そして――。

Drop bomb: RDS-4

ドォォォン……!

Attention to the map!

Yilfenは思い出す。

光が爆発した瞬間。

マップ全体が白く焼き尽くされた。

そして音楽。

『Frontal Attack』のクライマックス。

勝利画面。

高く立ち上る赤いキノコ雲。

すべてが――。

今、目の前で起きたことと似ていた。

ただ一つ違う。

今回は二つの勢力のうち、どちらかがその力によって自爆し――。

Edhenそのものを消滅させた。

少なくともYilfenには分かった。

この世界の魔法技術、あるいはその技術力は――。

地球と同等レベルに達している。

そう思った。

――しかし。

彼はまだ知らない。

背後で糸を引いていた者が、彼の考えていたような存在ではないことを。

________________________________________

――

「くそっ……!」

「また一杯食わされた……!」

「畜生! 畜生! 畜生!」

Edhenから西へ、およそ20km。

Eは、再び罠に嵌められたことに怒り狂っていた。

その頃、彼女は古代遺跡の瓦礫のそばに立っていた。

すぐ近くには――。

彼女が奪った、無傷のZis - 30。

その時――。

巨大な光が突然、夜空を染め上げた。

衝撃波が猛烈な勢いで押し寄せる。

Eは外にいたため、Leopardの車体へ身を伏せ、頭の帽子を押さえた。

「何……?」

「何が起きたの……?」

「この光……それに、この風……眩しすぎる……!」

彼女はしばらく何も言わなかった。

やがて、ゆっくりと立ち上がる。

そして――。

振り返る。

その先にあったのは――。

巨大なキノコ雲を形成しながら燃え上がるEdhen。

Eの瞳が細くなる。

「たいしたものね」

そして、薄く笑った。

「これで、あなたの名前も分かったわ」

「――Cyran Yilfen」

「面白い……」

「さて、あなたはまだ生きているのかしら」

「それとも……もう灰になっている?」

Eは呟きながら、巨大なmana爆発を感じ取っていた。

この巨大な魔法の炎が、どのように発生したのか。

誰がこれを起こしたのか。

その答えは、まだ分からない。

________________________________________

かつて壮大だったEdhen。

その街から舞い上がった灰が、冬の雪のように降り注いでいた。

そこに、もう都市の姿はなかった。

ただの瓦礫。

そして――。

生存者は一人もいなかった。

周囲の地域で被害を受けた住民たちは、すでに避難を始めている。

その頃。

Yilfenはそこに立ち尽くしていた。

CelesはT-34の車体を何度も拳で叩いている。

「どうして……」

「どうして……!」

Yilfenは何も言えない。

ただ立ったまま、その光景を見つめ続けるしかなかった。

「最初から……この世界は偽物の奇跡だったんだ」

Yilfenは静かに呟く。

「俺を待っているのは……地獄だけなのかもしれない」

________________________________________

――任務完了:Edhenの街から脱出せよ。

――報酬を準備しています……

この世界へ来てから――。

7か月19日。

________________________________________

――第12章・終――

総括:Edhenは地図から消滅。運命の仕組みから3人が生還。

通貨:14金貨 250銀貨

車両:T-34 1942

76mm:BR-350A (MD-5 fuze):30/100

OF-350M:12/100

D-350A:13/100

――SL:643,700|累積XP:2250|現在SP:0

GE:?

GJN:?

War Thunderバージョン:10/2020

Backup*:2

――BTR-152A (Anti-Air)

――All vehicles

[1 backup air rank III all vehicles]



「お前は……すべて終わったと思っているのか?」


――いいや。


ここからが、空を飛ぶ鋼鉄の機械たちが、その力を見せる時だ!


さあ、出てこい――。


我が鉄の鳥よ!


Bf-109*


第13章――公開予定:2026年9月第3週・火曜日

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