72.催眠魔法
顔が青褪めたわたしを見てアンバーがニヤリと笑う。
「何だ、ロージー・ブルックス。
いつもの無鉄砲さは何処へ行った?」
「だってアンバー、相手は領民を盾にしているのです。傷つけるわけにはいかない。
どうやって戦えば良いのか」
「アハハハハ」
急に笑い出すアンバーに目が丸くなる。
余りの危機に可笑しくなっちゃった?
そうだよね。
闇魔法師ひとり倒すのに三位一体攻撃しなくちゃならない位大変なのに、3万って。
途方も無い数だ。
不利過ぎる。
どうしよう。
「ロージーさん、催眠魔法は簡単に解けますよ?」
顔を顰め云々唸るわたしを見かねたらしいウォルターさんが声を掛けてくれる。
「えっ?簡単に解ける?」
「ええ、唯の催眠魔法ですから。
拘束魔法の様に精神を完全に拘束するわけじゃ無いのでー」
唯の催眠魔法?
首を捻る。
「あー。
わからないですかー?
そうですね、何というか、浅い夢を見ているみたいな?
かけられた人間は『あれ、俺何で言う事聞いているんだろう?これは夢?でも言う事聞かないとダメ?かな』くらいの感じですねー」
「浅い夢」
「そうそう、だから、ちょっとした刺激で直ぐ我に返る。
例えば、光魔法の花火が鳴るとか、雷魔法の閃光とか」
「直ぐ我に返るんだ。
てっ、それダメダメじゃない?」
アンバーはまだニヤニヤしている。
「だから恐るるに足らず、だ」
「何だ、良かった」
心底ホッとする。
「ただ、催眠魔法が解けると、魔法の影響で頭痛がしたり、気分が悪くなる人もいるので、その時は浄化してあげてくださいねー」
ウォルターさんがニコニコして教えてくれる。
うん、可愛い。
これで25歳だなんて、詐欺だな。
「今、俺の事、詐欺だとか思ったでしょうー」
ギクっ!
何で分かった?
もしかして心読まれた?
もしかしてそんな魔法あるの!
「ロージーさん、魔法じゃありません。
貴女、顔に思いっきり出て丸わかりの上、偶に声になって出てますしー」
うそーーー。
そんなにわかりやすい?
アンバーとエリオットがプッと吹き出し、やがて笑い出す。
スタンリーは困った顔で苦笑いしている。
酷い、皆んなでバカにして。
「悪い、ロージー。
でもその素直でわかりやすいところがロージーの可愛いところだから、ククク」
笑いながら言っても説得力無いよ、エリオット。
「ぷぷっ、本当に仔犬がシッポを垂れたり振ったりしてるみたいだよな、ぷぷぷ」
アンバーまで失礼な!
「ロージーは可愛いって事だよ、気にするな」
スタンリー、気にするなって、肯定するのやめい。
「もう、こんな事している場合じゃ無いです!
早くジェンキンスのおじさまに合流しましょう!」
「はっ!そうだ!
いかん、一刻も早く馳せ参じねば!」
伝家の宝刀、ジェンキンスのおじさまを振り翳すと、アンバーは一目散に駆け出そうとする。
「アンバー、第二陣は王宮騎士団前に集合だ」
その後ろ姿にスタンリーが急いで声を掛けるが、アンバーは遙か先だった。
「大丈夫です、スタンリーさん。
副院長は院長の居場所を本能で嗅ぎ分けますので」
本能で嗅ぎ分ける?
うわー、アンバーの新たなストーカー、コホン、執着技がオープンになってしまった。
大丈夫か、アンバー。
「我々も向かおう」
エリオットの言葉に頷き、王宮内にある王宮騎士団へ向かって歩き出す。
「王太子とデュラン、大丈夫かな」
先陣の二人が心配になる。
「大丈夫だよ。
二人とも強いし、きっと張り切っているだろうから」
張り切っている?
スタンリーの言葉にまたまた首を傾げる。
「えっと、反乱軍を潰す事に?」
「えっ!あ、ああ」
スタンリーがちょっと困った顔をして言い淀むと、エリオットが苦々しく言った。
「違うだろう、二人ともロージーに良いところを見せたくて張り切っているんだろ?」
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