65.自動昇降機
馬車が王宮の門に到着し、王宮内に入るが、王宮殿からは段々と離れて走っていく。
「あの北の高い塔が魔法院だ」
広い王宮の北部に聳え立つ塔。
「あそこが。
あれ魔法院って王宮殿の隣じゃなかった?」
「隣だよ。
あの森までは王宮殿管轄だから」
エリオットが手前の鬱蒼とした森を指差す。
確かに森は隣だけど、実際の建物からはかなり離れている。
これじゃ王宮敷地内の北の外れだ。
「対外的には王宮殿の隣としているが、あまり近くに魔法院があるといろいろ不都合もあるのでね」
アンバーの説明に納得する。
魔法院なんて、闇魔法やら何やらと誰かに知られたら拙い事、山程有りそうだよね。
やがて馬車は塔の前に到着した。
クレア・ギッテンス公爵令嬢はアンバーの魔法で
言われたままに塔内へ入って行く。
ヴィー嬢はまたエリオットがお姫さま抱っこをしている。
う、羨ましい。
「プッ、ロージー・ブルックス。
また涎が」
「えっ!」
急いで口元を拭うと何も無い。
またアンバーに揶揄われた。
ぶつぶつ言いながらアンバーたちの後を追いかけると、入り口奥に前世の記憶に有るエレベーターの様な扉があった。
「あれ?」
首を傾げるわたしにアンバーが説明する。
「これは魔法陣と魔石で動かす自動昇降機だ」
やはりエレベーター!
こんな物まであるんだ、凄い。
「この塔は20階まであるからな。
これが無いと上層階の職員や魔法師が無駄に疲弊する」
確かに!
階段も数階までならどうにか昇り降り出来るけど、それ以上は大変だし、ましてや何度も昇り降りしたら死ぬよね。
アンバーが自動昇降機の扉に嵌め込まれている青い魔石に手を翳すと扉がスゥーっと横に開いた。
全員が中に入りまたスゥーと扉が閉まると、扉には小さな魔石がパネルの様に幾つも嵌め込まれていた。
其の内のひとつにまたアンバーが手を翳すと、自動昇降機はゆっくりと上昇していくのがわかった。
これは正しくエレベーター!
嬉しくてハイテンションになるのを抑えつつ、ふと疑問に思った事を聞いてみる。
「魔法院には受付とか警備員とかいないのですか?」
だって、魔法院に着いてから誰一人見掛けていないのだ。
機密事項も多い魔法院にしては警備が甘過ぎる様な。
「ん?
それは問題無い。
警備室で院内の監視をしている。
許可のない者が院内に侵入すれば、直ちに拘束される。
大体にして塔の結界を突破するのはかなり上級の魔法師で無ければ無理だから、院内に侵入なんてここ何年も無いよ」
結界?
全く気が付かなかった。
やはりわたしの魔法力欠陥だらけ、かな。
ワタワタするわたしをアンバーが横目で見て笑う。
「先程私達が入った時は一旦一部解除したから、
結界には気が付かないだろう」
良かった。
これ以上ポンコツだと、皆んなに合わせる顔が無い。
自動昇降機はスゥーっと止まり、また扉が開き、わたしたちが順番に出て行くと、其処はかなり広いスペースの執務室の様な場所だった。
窓際に大きな机と椅子。
そして中央にかなりの人数が座れそうな大きな長椅子が向かい合わせに置いてあり、その間にこれまた大きい卓がある。
会議用スペース?
「ここが私の執務室だ。
その椅子に座ってくれ。
ああ、ヴィー・パターソンは救護室へ運ぼう。
まだ具合が悪そうだ」
そう言ってアンバーは机の上の何かを操作して話し出した。
「ウォルター、ヴィー・パターソンを救護室に運んでくれ」
「了解しました」
どうやら、自動昇降機のパネルの様な物が机にも有り、それで会話も出来るみたいだ。
凄いな、魔法院。
最新鋭だ。
自動昇降機の扉がまた開き、中から黒髪の可愛らしい少年が顔を覗かせた。
「アンバーさん、どの人ですかー?」
エリオットが急いでお姫様抱っこしていたヴィー嬢を自動昇降機の側へ運んで行く。
あの少年ではお姫様抱っこは無理そうだから、エリオットがこのままお姫様抱っこで連れて行くんだろうな。
うーん、なんかモヤモヤする。
ところがエリオットは少年にお姫様抱っこしていたヴィー嬢を渡そうとしていた。
「えっ?」
少年は右手から緑色の光を放つと、ヴィー嬢の体がフワリと浮く。
「じゃあ、連れて行きますね。
回復魔法かけておきますから、うん、少しすれば、尋問も出来るかな。じゃあ、また声掛けてくださいねー」
そう言うと、少年は自動昇降機の扉を閉めた。
「未だ若いのに凄いですね」
呆気に取られて呟くとアンバーが笑い出す。
「ウォルターはああ見えてもう25歳だよ。
確かに若く見えるが、あれは魔力の影響だ。
どうも多大な魔力が身体の成長を遅らせている様でね。今研究中なんだ。
そう言うわけで若く見えるが私の右腕だ」
ええっ?
どう見ても12歳位にしか見えなかった。
でも凄い魔力だったのはわかった。
「ウォルターもこの件には物凄く興味を持っているから、取り調べには参加するのでよろしく頼む」
頷くとアンバーの目がキラリと光る。
「勿論、私共々、ロージー・ブルックスの聖魔法に一番興味を持っているから、其処もよろしく」
あれ?
何だかわたし研究材料扱いの様な。
大丈夫かな?
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