60.負のオーラ
感じたのは負のオーラ。
これと同じものを感じた事がある。
マーフィー伯爵、そして人型魔物。
まさか、ヴィー嬢は既に魔物化されている?
マジマジとヴィー嬢を眺めてみても、その瞳は暗く焦点も合っていない。
精神的にダメージがあるってこういう事?
戸惑っていると、アンバーがヴィー嬢に質問を始める。
「ヴィー・パターソン、具合はどうですか」
「具合、は、悪い、です」
虚ろな目をしたヴィー嬢は口だけ動かして答える。
「どんな風に悪いですか」
「私を、虐めた、あの義母と、義妹が、憎い、憎くて、どうしようも、ない」
淡々と答えているのに、負のオーラは強くなっている。
これ危険なんじゃ?
思わずエリオットの方に振り向くと、エリオットは片手を上げてわたしを制止する。
このまま、見ていろと言う事かしら。
「憎い人たちをどうしたいですか」
えっ?そんな煽るような事言っていいの?
「私と、同じ、目に、あわせたい」
すると、ヴィー嬢の目から涙が一筋溢れ落ち、負のオーラが消えた。
「負のオーラが消えた」
思わず呟くと、エリオットとアンバーが此方を見ていた。
「ロージー・ブルックス、やはり貴女にはわかるみたいね」
わたしが頷くと、アンバーはヴィー嬢の病状経過を説明してくれる。
其れによると、ヴィー嬢は最初の1ヶ月は意識不明の重体状態で、魔法院の回復魔法師より回復魔法を毎日施されていたらしい。
幼い頃からの虐待により、一気に回復させる事が危険だったため、毎日少しずつ回復させていたのだそう。
ロージー・ブルックスの聖魔法が有ればあっという間に治癒出来たかもしれない、とアンバーに言われたけれど、そのときにはまだ力は封印されていたし、大体にして聖魔法で治癒とか回復とかした事が無いので出来るかどうかわからない。
体が回復し、意識が戻り始めたヴィー嬢だったが、痛めつけられた精神的ダメージが強すぎる上に負のオーラが感じられた為に、アンバーとエリオットが極秘で対応する事となったらしい。
それからのひと月で大分受け応えをするようになったが、負のオーラが強くなったり、消えたりと安定しなかったため、アンバーとエリオットで容態を見ていたらしい。
「ロージー・ブルックス、聖魔法でこの負のオーラを浄化出来るか?」
わたしはゆっくり頷く。
「出来る、と思います」
言ってから、ハッと気付いたけれど、ヴィー嬢の負のオーラを浄化して、元のヴィー嬢に戻ったら、それこそヒロイン補正が働いてエリオットと。
そこまで考えて、心底自分に呆れてしまう。
目の前で苦しんでいるヴィー嬢をこのままにしておくなんて、人としてダメだ。
それでエリオットがヴィー嬢を選ぶならそれはそれ。
「やってみます」
わたしはヴィー嬢の額に手を翳す。
「浄化」
眩い光が手から放たれヴィー嬢に降り注ぐと、ヴィー嬢は苦しそうに呻き出す。
「ぁあーあぁあーぁ」
ヴィー嬢の体から黒い靄が湧き出て、光のなかに消えて行く。
全ての黒い靄が消え去ると、ヴィー嬢の顔には安らぎが戻り、スーっと寝息を立てて眠り始めたので、アンバーがヴィー嬢の体を寝台に横たえる。
「初めて見たけれど、凄いわね、聖魔法」
アンバーに褒められちょっとびっくりする。
「凄いわ、今度是非、魔法院で詳しく調べさせて欲しいわ」
「えっ、そ、それは」
「アンバー、それはまだ許可出来ないな」
突然エリオットが介入して来るので、思わず振り向くとエリオットが射抜くようにわたしを見ていた。
思い出した。
わたしはまた壮大な勘違いでエリオットを責めてしまった。
どうしよう。
これじゃ、エリオット様まわりに登場する女性たちに片っ端から嫉妬して勘違いするアホアホな子ども。
うん、認める。
「あの、ごめんなさい、エリオット」
「あら、ロージー・ブルックスは協力してくれるの?」
「あっ、ごめんなさい。その件ではなくて別件で、そのエリオットに謝らないと」
エリオットは溜息を吐く。
「ロージー、その話は帰ってからだ。
それより、これからが本題だ」
「本題?」
「そう、本題だ。今ここで闇魔法の気配は感じられるか?」
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