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56.依頼

 

 涙に暮れた夜から半月。

 わたしは何も無かったかのように過ごしていた。


 相次ぐ事件の為、心と体を休めると言う大義名分のもと、公爵邸に引き籠もっている。


 エリオットと言えば、最近は事後処理等で忙しいと、朝食時に顔を合わせるだけだ。

 気付きたく無かったけれど、以前の様にわたしを揶揄う事も皆無となった。

 魂が共鳴する相手に出会ったのだから、もう妹のようなわたしに構う暇も気持ちも無くなったのかもしれない。


 寂しい。


 また落ち込みそうだったけれど、朝しかエリオットには会えないのだから、笑顔でいなければ。


 家族が朝食を摂る食堂へ赴くと、今朝は全員集合だった。

 シモンズの叔母さまは封印解除が終わったので数日滞在後シモンズ領に帰られた。


 故に、ジェンキンス公爵夫妻とエリオット、スタンリーにデュランとわたしの6人だ。

 ロイくんとルーちゃんは子供部屋で食事を摂る。

 因みにミリーちゃんとジェシカちゃんは魔法の才を見込まれて魔法院傘下の育成所に所属する事になり、数日前に公爵邸から育成所に居を移した。

 一緒にロイくんとルーちゃんも、と言う話になったけれど、ロイくんはわたしの騎士だから離れないと言うし、ルーちゃんはロイくんと離れないと言うので、二人は公爵家の魔法師となるべく公爵家で教育を行う事になった。

 因みに、公爵家には騎士団があるが、魔法師団もあるので其方の魔法師の方々に教えをこうらしい。

 ルーちゃんはわからないけれど、ロイくんに関してはあれだけ凄いチカラを発揮していたのだから

 将来が楽しみだ。


 そんな事をぼんやり考えながらパンを齧っていると、エリオットが珍しく声をかけて来た。

 最近はあまり無かったので少し嬉しい。


「ロージー、昨日入った情報だが、ブルックス侯爵家の次女マチルダがドローワ男爵の後妻に出されるらしい」


 マチルダの縁談?

 でも今後妻って言っていたような。


「ドローワ男爵か。

 確かに悪い人間では無いが年が離れ過ぎていないか?」


 ジェンキンス公爵が首を振りながら尋ねる。


「でも、マチルダ嬢ではその辺の若輩者では振り回されるだけでしょうから、ある意味お似合いでは?」

 いつも社交界で傍若無人な振舞いをしていたマチルダにジェンキンスのおばさまは辛口だ。


「アンバーか」

「アンバーだな」


 従兄弟ふたりが声を揃える。


「アンバー?」


 意味が分からず問い返すとデュランが遠い目で答える。


「アンバー、あの従姉妹殿はああ見えてキレ物だからな。

 魔法の腕も確かで魔法院の出世頭だよ。

 ただ、ずっと魔法院にかかりきりでブルックス侯爵家を顧みる時間が無かったんだろう。

 急に没落と言う話になり、慌てて本腰を入れ始めたってところかな」

「アンバーも自らが継ぐ魔法の名門ブルックス侯爵家をみすみす潰す訳にはいかないだろうからな」


 スタンリーもうんうんと、同意している。


「恐らくドローワ男爵が多額の支度金を用意してくれたのだろう。

 男爵は鉱石で一儲けし、その後多角経営で儲けを何倍にも増やしたやり手だからね」


「お金で売られるの?」

 幾らマチルダでもそれは可哀想な気がする。


「そもそもブルックス侯爵家は領地経営も比較的安定している筈だし、こんなに逼迫したのは侯爵夫人とマチルダの散財がほぼ全ての原因だと思うぞ。

 それなら原因のマチルダに返済して貰おうと、アンバーなら考えるだろう」

「アンバーならそうだな」


 従兄弟たちの意見は一致している。


「アンバーの事、よく知っているんだね」


 何時会ったのだろうか?

 わたしの疑問に答えるようにデュランが言う。

「アンバーは魔法院でも気鋭の魔法師だからね。

 いろいろ絡みもあるんだ」


「俺はロージーの事もあって何度か会っている」


 そうなんだ。

 わたしは先日一家全員来襲の時が初めてだったし、あれきり会っていないから。

 本当にわたし、何にも知らないんだな。


「会っていると言えば、エリオット、お前まだ毎日ヴィー・パターソン男爵令嬢に会いに行っているんだろう?

 彼女、もういい加減体調戻ったんじゃないのか?」


 デュランの言葉は心臓にナイフを突きつけられたみたいにわたしの心に突き刺さった。


 毎日会いに行っているんだ。

 わたしとはずっと朝食時に会うだけなのに。

 覚悟していたけれど現実を突きつけられると辛い。


「ああ、もう体はほぼ回復したよ。

 ただ精神的にはまだダメージを受けているようなので様子を見ている」


 エリオットはスープに手を付けながらこちらも見ないで答えている。

 その態度にジェンキンス公爵夫妻と従兄弟たちが顔を見合わせる。


「お、おい、エリオット。

 お前まさか」

「…まさか、とは?」

「お前はロージーの婚約者だろう!

 まさか、忘れてないだろうな!」


 デュランが強く言い返すとエリオットは徐にスプーンを置きわたしを見た。


「そうだ、ロージー。

 一度ヴィー・パターソン男爵令嬢に会ってみてくれないか?」






お読みいただきありがとうございます。

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