55.気付き
王宮でのお泊まりの翌日、やっと公爵家に帰って来ると、事件を聞き及んだジェンキンス公爵夫妻やシモンズの叔母さまが心配して待っていてくれた。
ルーちゃんも帰らないロイくんをかなり心配していたみたいだ。
「落ち着いたらヴィー・パターソン男爵令嬢に会ってみないか?」
お茶で一息ついていたところにエリオットから衝撃の一言。
「えっ?でもわたしヴィー嬢とは一面識も無いし、療養中でしょう?」
「そうなんだが。
彼女どちらかと言うと精神的に滅入っているのでね。
いつ行っても元気が無いから、同年代のロージーを連れて行けば話も弾むのではないかと思ってね」
エリオットの言葉にイヤな予感がした。
彼女?
いつ行っても元気が無い?
あれほど忙しかったのに、もしかしてヴィー嬢のところへ何度も通っている?
「永遠の星の下で」のヒロイン、ヴィー・パターソンはわたしが殺される馬車襲撃事件を目撃し、エリオットと協力して犯人を追い詰めていくうちに恋に落ちるのだ。
馬車襲撃事件でわたしが命を落とさなかったから、小説の内容からはかなり乖離しているけれど、ヒーローとヒロインが出会ってしまった?
もしかしてふたりは惹かれあっている?
急に胸が苦しくなった。
エリオットはわたしを大切に思ってくれているのは分かっている。
愛しい、と言ってくれた。
口づけも交わした。
でも、本物のヒロインが現れてしまったら?
わたしの事を想うより、もっと強い情熱が湧き上がってしまったら?
浮気とかそう言う軽いものではなく、たましいが共鳴する本物に出逢ってしまったなら……
わたしに出る幕は無い………………………
ガタガタと震える体でゆっくり立ち上がる。
「ごめんなさい、体調が優れないので部屋で休みます」
投げつける様に言い放つと急いで居間から駆け出した。
自室に戻り寝台に体を投げ出すと、涙がとめどなく流れた。
いつもくだらないやきもちを妬いて来た。
エリオットはモテるから。
クレア・ギッテンス公爵令嬢も然り。
でもそれは自分に自信が無かったから。
血の繋がった家族に捨てられた負い目は思ったより深くわたしの中に巣食っていた。
やっと克服したのに。
わたしを愛してくれる大切な人たちを信じる事が出来たのに。
枕に顔を埋めた。
「ロージー!
具合が悪いのか?
医師を呼ばなくては!
アンナ、急いで先生を呼んでくれ」
スタンリーが叫んでいる。
部屋に突然数人が押し入って来てわたしの心配をし始めた。
本当にわたしを愛してくれている…
「大丈夫、やっぱりちょっと疲れが出たみたい。
少し休めば治るから」
枕に顔を埋めたまま、くぐもった声で答える。
だってこんな泣き顔は見せられない。
「…本当に大丈夫、か?」
うん、と頷くとスタンリーは顔を枕に埋めたままのわたしの後ろ髪を優しく撫でた。
「わかった。
ゆっくり休んで。
でも、これだけは忘れないで。
俺はいつでもロージーの味方だから」
そう言ってスタンリーは部屋に乱入して来た数人と共にそっと部屋から出ていった。
他に誰が居たかもよくわからないけれど、わたしが癇癪を起こしたと思ってくれていたらいいな。
失恋の予感に打ちひしがれているなんて、知られたく無い。
何れはバレちゃう事だけど。
そう思うと、また涙がとめどなく流れた。
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