53.王宮の一夜
結局、本物のヴィーがどんな女性なのか訊きそびれてしまったまま、もう夜半と言う事で王宮に泊まることになった。
いろいろな事件があった事もあり、わたしの部屋は何故か貴賓室になってしまった。
普段は他国の要人用なので、中央の応接室の他に寝室が5つも有る。
そう、寝室が5つ。
要人の家族とか侍従とか侍女とかも纏めて泊まれる小さな御屋敷みたいなもの。
そう、寝室が5つと聞いてわたしは察した。
そして、それは現実となった。
だって応接室に其々の着替えが綺麗な箱に入れられて置いてあったのだ。
箱の上には名前が書かれた紙が挟んであるし。
「俺は1番奥の部屋にするよ」
そうですか、スタンリー。
「ロージーはもちろん、メインの寝室でおやすみ。独りで淋しいなら左隣に居るからいつでも呼んでくれて構わない」
呼ぶわけないでしょ、エリオット。
「俺はメイン右横の部屋にしよっと」
デュランは右隣の部屋ですか。
「私はどの部屋が空いているのかな?」
王太子ーーー!
貴方は自分のお部屋があるでしょう!
ふと気付くと用意されていた着替えを抱えたロイくんが悲しそうな顔をして俯いている。
「オレ、どこでねたらいいの」
きゅん、です。
お姉さん、きゅん、です。
もう、いい大人達が我先に部屋を取って!
そもそも王宮なのに、どうして侍従も侍女もいないのか。
かろうじて、貴賓室前に護衛騎士が配置されているだけなんて、可笑しいでしょ!
「わかった、ロイくんはお姉さんと寝ようね」
でもその時、ロイくんが黒い笑みを浮かべた様な気がしたのは、気のせい、だよね。
うん、気のせい、かな。
「ロイ、狡いぞ」
「俺と代われ」
などの怒号が行き交う中、わたしはサッサとロイくんを連れてメインの寝室に入ったのだった。
ロイくんはトコトコと天蓋付きの寝台へ歩いて行くと、ちょこんと座る。
「ロージーさま、おふろおさきにどうぞ」
小さいのに、なんて紳士なの!
きゅん。
「ありがとう、でもロイくんも疲れたでしょう?
わたしを助けてくれたんだもの。
だから、ロイくん、お先にどうぞ」
「ううん、じょせいがさき」
ああ、きっとロイくんは妹のルーちゃんもこんな風に大切にしてるのね、と密かに感動する。
「それじゃ、遠慮なく先に入らせて貰うね」
着替えの箱を持ち、浴室に向かい、素早く湯浴みを済ませた。
夜着に着替えて寝室に戻るとロイくんがニコニコして待っていてくれた。
「お待たせ、ロイくん」
「じゃあ、オレもはいります。まっててよかった、すごいやくとく」
ん?やくとく?って聞こえた気がしたけど、8歳の子がそんな言葉知る訳無いから、気のせい、だよね。
「さすがにいっしょにはいるのはまだはやいからねー」
浴室の扉を閉めてから呟いた大人びたロイくんの言葉は小さく響いただけだった。
翌朝、気付くとお腹の辺りにロイくんがぎゅっと絡まっていた。
二人とも疲れていた為か、あっという間に眠ってしまったようだ。
ロイくんのサラサラの赤髪をそっと撫でてみる。
「ふふ」
思わず微笑んでしまうと、ロイくんがわたしをじっと見つめていた。
「ロイくん、起きたの?」
「ハイ!」
ニコニコと笑うロイくんが今日も可愛い。
「だってせっかくロージーとどうきんできたのに、ねてたらもったいないよね」
ロイくんが小さくモゴモゴ言っているがよく聞き取れない。
まだ、寝惚けているのかな、可愛い。
ロイくんはニコニコとまた笑った。
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