52.パターソン男爵家の顛末
魔物化し消え去ったのは義妹のミアで、ヒロインのヴィーはギル達によって保護されていた。
衝撃の事実に愕然としていると、ロイくんが心配そうに膝から見上げる。
「ロージーさま、だいじょうぶ?」
うん、と頷き頭の中を整理する。
「それじゃ、ミアはヴィーと名乗って行動していたと言う事?」
「ああ、随分前からヴィーを名乗っていたらしい。ミアは身分的には男爵家の連れ子に過ぎず、元は平民と言われる事が我慢ならなかったようだ。
庶子とはいえ男爵の実子なのに、ましてや顔がそっくりのヴィーが生粋の貴族令嬢と言われている事が妬ましいと妬んでいたそうだ。
それで義母と共謀して部屋に監禁し日々虐待し、挙句自らがヴィーと名乗り世間を渡り歩いていた」
「パターソン男爵はヴィーを助けなかったのですか!」
「男爵は長年の愛人だったその義母の言いなりだったそうだ」
「そんな」
「パターソン男爵夫妻は長女の虐待で拘束してあるし、マーフィー伯爵との繋がりもあったので、これから重い処罰が下されるだろう。
良くて鉱山労働、悪ければ極刑だ。
爵位は剥奪し、一旦国で預かり、いずれヴィー嬢が結婚したらその配偶者となる者に叙爵されるだろう」
「ヴィーには罪が及ばないと言う事ですね」
ホッとする。
「まぁ、ヴィー嬢の亡くなられた母親はギッテンス公爵家に連なる子爵家出身だし、彼女自身には何の咎も無いから」
ギッテンス公爵家。
王太子の婚約者のクレア様の実家。
「ギッテンス公爵はパターソン男爵家でのヴィーに対する虐待に気付いていなかったのですか?仮にも親戚なのですよね?」
「パターソン男爵家自体はただギッテンス公爵家の派閥であるだけだが、ヴィー嬢に付いては従姉妹の娘、つまりはクレアとヴィーははとこにあたるけれど、ヴィー嬢の母親が亡くなってからは疎遠だったようだ」
親戚で大貴族のギッテンス公爵ならヴィーを助ける事も出来たであろうに。
「ヴィーの具合はどうなのですか?」
「幸い回復してきているよ。
ロージーは会った事もないヴィーにやたら御執心だが、彼女が回復したら一度会ってみるかい?」
王太子の言葉にギクっとする。
そうだった、わたしは「永遠の星の下に」を読みヴィーの事を知っていたけれど、この世界で会った事は一度も無かった。
会ったのは、見かけたのは義妹ミアだったのだから。
「会った事は無いのだけれど、実家に虐待とか、
他人事とは思えなくて」
「そうか、そうだな。
悪い事を聞いてしまった。
配慮出来ずにすまない」
王太子が頭を下げるので慌てて言葉を繋ぐ。
「大丈夫です。
気にしてませんから。
それより、ヴィー嬢はどんな方なのですか?」
無意識にヴィーと呼び捨てにしていたので修正しながら話すと、王太子がガックリと項垂れている。
「どうしたの?」
王太子はパッと顔を上げ懇願するようにわたしの両手を握った。
膝上のロイくんが握られたわたしの両手をガン見している。
「ロージー、何でさっきから敬語なんだ?
淋しいじゃないか!
距離を感じるだろうが」
イヤイヤイヤ、幾ら仲間とは言え、貴方王太子ですから、タメ語は拙いでしょうに。
「もっとフランクに話してくれていたのに」
エッ?そうでしたっけ?
………あれ、可笑しいな、そうだっけ?
今にも泣き出しそうなギルを見かねてスタンリーが助け船を出す。
「ロージー、今は仲間内だからフランクにしてさしあげたらどうかな」
「は、はい」
それを聞いたギルは燦然と輝く王子スマイルで立ち直ったのだった。
が、ロイくんがわたしの手をいつまでも握りしめているギルの手を無理矢理離そうとすると、何をする、と怒り出した。
「やっとロージーと触れ合えたのに、邪魔をするのか?」
王太子の威圧に8歳の子を晒さないでください。
とは言えロイくんは威圧もなんのその、ギルの両手を外す事に成功し、ニコリと笑ったのだった。
つ、強い……。
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