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45.忍び寄る影

 

 聖魔法が無事封印解除された事は陛下や王太子(ギル)にも直様伝達用の魔鳥で報告された。

 魔鳥は緊急時のみ王族が使える魔法鳥での伝達方法だ。


「これからはますます身辺に気を付けなくてはいけない」

 ジェンキンスのおじさまにきつく申し渡される。


「そうよ。

 ロージーに何か有れば国家の危機ですからね」

 ジェンキンスのおばさままで。


「国家の危機なんて大袈裟ですよ。

 ただ聖魔法が使えるようになっただけですよ」


 その言葉に居合わせた皆が顔を顰めた。


「ロージー、聖魔法の使い手が現れるのは100年ぶりだ。

 そして聖魔法の使い手、即ち聖女が現れる時、この王国には多大なる加護が与えられると言われている」

「多大なる加護?」


 ジェンキンスのおじさまはゆっくり頷く。


「国中に知られている事だが、ただこの言い伝えは正確ではない」

「正確ではない?」

「そうだ。

 王家に伝わる書物にはハッキリ記されている。

 王国の安寧は聖女にかかっていると」


 わたしは愕然とした。

 王国の安寧、即ち多くの民達の安寧がわたしにかかっているなんて、そんな大それた。

 とても背負えるものではない。


「そんな。

 無理です。

 わたしにはそんな大役はこなせない」


 どうしたらいいのか困惑し、無意識にエリオットの方を見る。


「大丈夫だよ、ロージー。

 大それた事が必要な訳じゃない」


 エリオットはにっこり笑う。


「ロージーが幸せである事、安寧の条件はそれだけだ。君が不幸せなら国は荒れると言うことだ」





 ☆☆☆


 その頃、王都の中心街から少し奥に入ったある貴族の屋敷では何人かの貴族たちが密談していた。


「ロージー・ブルックスの聖女認定は間も無くだろう」

「聖女認定されたらおいそれと手出し出来なくなる」

「ふん。今までも手出し出来ていないだろうが」


 貴族たちはお互いを罵り合っている。


「どんな事をしてもロージー・ブルックスを我々の傀儡にしなくてはなりませんわ。

 それでなければ我々の大望が頓挫します」

「だが、御令嬢、失敗続きで今や手立てが有りません」

「まだ使える駒は沢山あります。

 駒を上手く使いあの娘を手に入れるのです」


 御令嬢と呼ばれる女は貴族たちに細かな指示を出し、貴族たちは深々と礼をしてその場を辞去していく。


 最後に残った1人の貴族が問いかけた。


「あの御方はさぞかしご立腹でしょうな。

 計画が悉く潰されて」

「相手は王太子やジェンキンス卿です。

 そう簡単ではないのはご理解されています。

 しかし、もう残された猶予も少ないのが事実。

 もう、失敗は許されませんよ」

「わかっております、御令嬢」


 最後まで残っていた貴族が姿を消すと、御令嬢と呼ばれる女がひとりごちた。


「どんな手を使ってもあの娘を始末しなくては!

 折角こんな美味しいポジションに転生した意味が無くなるわ」


 クックッと忍び笑いをする女の声が夕闇に不気味に響いていた。






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