32.廃屋の攻防
獣道を突き進んで、やっと廃屋に着くと、そこには何人かの騎士たちが廃屋を包囲していた。
少なくとも20人程の騎士が廃屋の周りを包囲してくれているのは頼もしい。
デュランが右側を指差した。
「彼処が正面入り口だ。
一階の窓は全て目貼りがしてあった。
連中がやったのだろう」
「何処から突入する?」
「4、5人ずつに分かれて四方から突入する。何処に子どもたちが囚われているかもわからないし、兵力は分散されるが、この騎士たちは王宮騎士団の精鋭部隊だ。
破落戸にやられる事は無い」
「俺たちは正面から突入する」
デュランを先頭に正面入り口へ向かう。
メンバーはデュラン、わたし、エリオットと護衛騎士のジョンさん、ブラッドさん。
正面入り口に着くとデュランはわたしを見つめた。
「ロージー、大丈夫か?」
緊張で手先が震えているが頷く。
「よし!派手に行くぞ」
そう言ってデュランは合図の号砲を鳴らす。
朝ぼらけの空に大きな氷の柱が浮かび上がり
バーンと言う音と共に砕け散った。
号砲と共に一斉に剣や魔法の大きな音が鳴り響いた。
ズダーーーーーーーンとエリオットが雷魔法で正面入り口を破壊する。
濛々と上がる煙の中へデュラン、ジョンさんブラッドさんが突入して行く。
「ロージー、俺から離れるなよ!」
エリオットの声に頷き、デュランたちの後を追う。
廃屋の中では既に白兵戦が繰り広げられていた。
カンカンカキーン。
剣戟が激しくなる。
エリオットも参戦する。
わたしを護りながら戦うのは厳しいだろうに
微塵もそんな素振りは見せない。
わたしがこの危険な最前線に居るのは、馬車にひとりで取り残すのはかえって危険であるとエリオットたちが譲らなかった事と、わたし自身子供たちが心配だったから。
必死に目を凝らし子どもたちを探すけれど、この玄関ホールでは見当たらない。
「子どもたちは何処?」
玄関ホールの破落戸は7人ほどであっという間に打ち負かされ捕縛された。
ジョンさんとブラッドさんが手足を縄で縛り猿轡をはめ床に転がす。
デュランは屈んで破落戸たちの顔を眺めると溜息を吐いた。
「コイツら、あの馬車襲撃犯の一味だ」
一度見た顔を忘れないのはデュランの特技。
「今度こそキチンと処罰するからな!」
「その通り」
エリオットも冷気を纏い頷く。
怖い。
彼方此方から足音が聞こえ、気付くと他の騎士たちも玄関ホールに集まって来て、彼らが捕縛して来た破落戸を床に転がす。
破落戸の数は倍になった。
「一階は制圧しましたが、この階に子どもたちは見当たりません!」
「やだーーーーーーーーー」
その時階下から子どもの泣き叫ぶ声が響いた。
「地下だ!」
慌てて地下への階段を探すが見当たらない。
「何処かに隠し階段がある筈だ!
手分けして探せ!」
マントルピースや柱の陰を隈なく調べるが、
階段は見当たらない。
声は地下から聞こえた。
では何処から聞こえた?
……この入り口の右手奥。
わたしはふらふらと右手奥へ向かう。
エリオットが慌てて追ってくる。
右手奥は厨房で2人の騎士が調べていた。
グルリと厨房を見回すと、破落戸どもが飲み食いしたものが散らばりかなり汚らしい。
そして、なんだろう、この違和感。
わたしは口に手を当て暫し考える。
そう言えば偶にシモンズの叔母さまと料理をしたっけ。
『料理も掃除も食材調達も知らなくても良い事では無いのよ。自身で経験してみれば、仕えてくれる人たちの気持ちが少しはわかるかもしれないし、その人の立場を慮る事も出来るでしょう?」
確かにお湯ひとつ沸かす事すら最初は大変だった。
叔母さまは貴族として使う者の立場や苦労を思いやる事を教えてくれた。
だからこそ、感じる違和感。
そうだ、調理台と水場があまりにも離れているのだ。
効率的な配置が必要なのに、それを考えずにこの厨房を造ったのだとしたら、酷い設計士だ。こんな調理場だったらストレスが溜まりそう。
わたしは首を傾げながら、調理台に向かう。屈んで調理台や脚の部分を触りながら調べる。
4本目の脚に触れた時少し窪みのある部分に気付く。
「エリオット!」
横でわたしの様子を眺めていたエリオットが頷く。
「デュラン!来てくれ!」
玄関ホールにいるデュランを呼ぶと、数人の騎士たちと共に駆けつけた。
「ここに怪しい窪みがあるので押してみます。おそらく水場方向に動くと思うので、そこは空けておいてください」
調理台と水場の間に立っていた騎士にどいてもらう。
「じゃあ、押します」
ぐっと人差し指に力をいれて窪みを押す。
ゴゴゴゴゴ
鈍い音と共に調理台がゆっくり水場方向へ移動し、そこには地下への階段が現れた。
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