27.八つ当たり
「大嫌い!」
わたしの叫びにエリオットは一瞬怯んだ様だったが直ぐに悲しげな表情になった。
こんな表情は今まで見た事がないけれど、もう知った事ではない。
この世でたったひとりになってしまった様な孤独感。
転生したと知った時すらこんなに辛くは無かった。
殺されないようにと小説の筋書きを変えてしまったから、バチが当たったのかもしれない。
「ロージー」
エリオットがまた呼びかける。
わたしはエリオットを思い切り睨みつける。
前世でも今世でもこんなに何かを睨みつけるのは初めてだ。
「嘘吐き!
ずっとわたしを騙して楽しかった?
バカな子がその気になって浮かれているのを見ておかしかった?」
どうせエリオットはそんな事を思うほど、わたしに関心はない、のでしょう?
ただ聖魔法の使い手として見てるだけ。
わかっている。
これはただの八つ当たり。
ずっと信じてた愚かなわたしのやるせ無い気持ちをぶつけただけ。
だけど、止まらない。
「婚約なんてしなくて良かったのに。
陛下に命令でもされた?
聖魔法の使い手を囲い込めって」
涙が溢れて止まらない。
今夜は泣いてばかりだ。
一生分泣いたかもしれない。
「誰にも命令も指示もされていない。
俺が自分で決めた」
「…もうどうでもいい。
婚約は解消する。
こんな事ならマーフィー伯爵の愛人になった方がまだ幸せだった」
「ロージー。
混乱するのはわかる、だが後から悔やむような事を言うのはやめた方がいい」
「………」
「騙されたと思っているかもしれないが、それは違う。
誰しもが、ロージーを思って選んだ事だ」
「実の親を騙して連れて行く事が?」
「そのままブルックス侯爵家で育ったら幸せになれたと?
本当にそう思っているのか?
俺はそうは思わない。
ブルックス侯爵の見栄と名誉の為に食い物にされてボロボロになっていただろう。
自分でもわかっているんだろう?」
「………」
「シモンズ子爵夫人だって悩んだんだ。
この子の人生を大きく変えてしまっていいのか、と。
魔力が無くてもブルックス侯爵家で育てる、と言われていたら、夫人もそのまま君をあの家に置いて来ただろう。
夫人は言っていたよ、仮令魔力が無くても、私はロージーを引き取り育てていた、と」
涙がまた溢れ出す。
「シモンズ子爵夫妻からあれほどの愛情を受けて育てられて、一体何が信じられない?
16年積み重ねてきた全てを何故否定する」
「わ、わたしには自信が無いから。
親に捨てられた負い目があるから。
だから本当に愛されているのかわからなくなった」
エリオットはわたしの頭を優しく撫で、ゆっくりと抱きしめた。
「いいか?
ロージーに大嫌いと言われても、俺はロージーを離さない。
何故だかわかるか?
聖魔法の使い手だからじゃ無い。
ロージー・ブルックスと言う可愛いけれどちょっと拗らせている女の子を心の底から愛おしく思っているからだ」
「うん」
エリオットはこんな大事な事で嘘を吐いたりしない。
「そうか。
それならシモンズ子爵夫人の愛情を疑った事も反省しないとな。
夫人が聞いたら泣いて寝込むぞ」
「あとでごめんなさいって謝る。
エリオットにも謝る。
八つ当たりしてごめんなさい。
心がぐちゃぐちゃになって、止まらなくなったの」
エリオットはまたわたしの頭を撫でて笑う。
「素直でよろしい。
いいか?
俺もシモンズ子爵夫妻も俺の両親も、スタンリーやデュランもギルも、みんなロージーの幸せを祈っている。
ロージーを大切に思い、深い愛情を持っている。
これだけは疑うな」
「はい」
エリオットは嬉しそうに笑い、またわたしの頭を撫でた。
「子ども扱い」
「子どもみたいに泣き喚くから」
「むっ」
本当にまたいつものふたりに戻れて良かった。
「そしてロージー、今1番考えなければいけないのは君が狙われている事だ」
「それは聖魔法の使い手だから?」
「聖魔法の使い手は滅多に現れない。記録では100年ほど前に最後の使い手が亡くなって以来現れていない」
「そんなに?」
「だから聖魔法の使い手は聖女と呼ばれ崇められてきた」
「せ、聖女」
本格的に不味い方向に向かっているみたいだ。
「永遠の星の下に」の何処に聖女が出てくると言うのか。
あれ、今何かモヤッとしたけど。
「あの人型魔物、思い出しただろう?
実はあの魔物、元は人間だ」
「えっ?」
恐ろしい事を言われた。
「まさか人間を魔物化したと言うの?」
「そうだ。
魔物化されたのは皆、10年以上前から起きている婦女拐かし事件の被害者だ」
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