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28.ゴーレイ子爵邸

感想、ブクマ、評価、いいねをありがとうございます。

とても励みになります。

これからもよろしくお願い致します。

 

「それなら、ルーちゃんが危ない!」


 自分の事に囚われて今何処にいるのかわからないルーちゃんの事を忘れていた。

 ごめんなさい。

 早く助けなければ。


「間も無くゴーレイ子爵家に到着する。

 恐らくゴーレイ子爵夫妻は何も知らないだろう。存外人柄の良い方たちだから」

「それじゃ、拐かしの話を聞いたらショックを受けるよね」


「ヘルミナの罪は重い。

 しかしヘルミナに指図し子どもたちを連れ出させた者はもっと悪い。そいつはマーフィー伯爵だ」


 意外な人物に目を見開く。


「女垂らしだけじゃなく、拐かしまでやっていたの?」

「違うよ。

 女垂らしに擬態して拐かしをしているんだ。

 放蕩者なら屋敷に何人もの女性が出入りしても怪しまれないからな」


 驚きに泣き腫らした瞳をかつて無いほど見開くとちょっと目が乾く。

「それじゃ、わたしを愛人にするつもりは無かったの」

「愛人ではなく魔物にするつもりだっただろうし、それこそまだ諦めていないだろう」


 魔物!


「マーフィー伯爵が人を魔物化しているの?」


 エリオットが頷く。


「マーフィーは闇魔法使いだ。

 闇魔法自体は悪用しなければ素晴らしい魔法だが、奴は人体を魔物化する魔法を編み出した」


 人体を魔物化!

 神をも恐れぬ所業。


 そもそも魔法自体に罪はない。

 どんな魔法も使い手が善意で使えば薬にもなるが、悪意を持てば凶器になる。

 ナイフだって物を切ったりするのに使えば便利だが、人に向ければ凶器と化す。


「マーフィー伯爵が黒幕なのね」


 思わず呟くとエリオットはかぶりを振った。


「いや、黒幕は別にいる。

 まだ確たる証拠が掴めずにいるが、ある高位貴族だと俺たちは踏んでいる」


「だ、誰?」

 思わず体を乗り出したわたしをエリオットが片手で制する。


「未だ教える事は出来ない。

 国家機密だ」


「わたし自身の事も隠していたくせに!」

 ふん、とそっぽを向くと、エリオットが困った顔をしているのが、目端に見える。


 ふふん、困ってる、困ってる。


 エリオットを揶揄うのは存外楽しい。


「ロージー、俺を揶揄うのが楽しそうだな?」


 へ?気付かれた?


「くちもとがにやけてるぞ。

 顔に出やすいのだから、もっと気を付けろ」


 何?何でお説教になっちゃうの?

 解せぬ。


「でもそれならマーフィー伯爵の屋敷へ踏み込んだ方が早くない?」

「囚われた婦女はマーフィー伯爵邸ではない場所へ送られる。

 流石にあの伯爵もそこまで愚かではない」


 愚かだったら話が早かったのに。


「兎も角ヘルミナを問い詰めよう」


 その言葉が合図の様に馬車がとまる。


「行くぞ」


 エリオットにエスコートされながら、わたしは馬車を降り眼前の屋敷を見やる。

 暗くてあまり見えないがこじんまりしていてよく手入れの行き届いた庭のようだ。


 門の鈴を鳴らすと、少ししてから慌てて着替えた風の家令らしき者が出て来た。


「夜分に失礼する。

 私はエリオット・ジェンキンスだ。

 幼女連続拐かし事件の容疑者として、ヘルミナ・ゴーレイ子爵令嬢と話がしたい。

 この件は陛下と王太子殿下の勅命である」


 家令はエリオットの顔と馬車の紋章を確認して飛び上がる。

「ジェンキンス卿!

 少々お待ちください。

 今ご案内いたします」


 家令に案内され、応接室に通された。

 深夜で少しひんやりする。


「今、旦那様を呼んでまいります」


「それより至急ヘルミナ嬢を呼んでくれ」


 家令らしき人はまた慌てふためく。

「じ、実はヘルミナ様はまだお戻りになられておりません」

「何だと!

 夜半過ぎだと言うのにまだ戻っていないと言うのか?」


 エリオットの氷のような口調に家令が怯えている。


「はい、最近はたまに明け方にお帰りになる事もありまして」


 令嬢にあるまじき醜聞だが家令は慣れているようだ。

 そこへバタバタと小柄で小太りの人の良さそうな男性が入って来た。


「ジェンキンス卿、お待たせしました。

 申し訳ありません、ヘルミナはまだ帰っておりません」

 そう言ってゴーレイ子爵は深々と頭を下げた。


「ヘルミナがとんでもない事をしでかしたようで、本当に申し訳ありません」

「ご不在なのはわかりました。

 ヘルミナ嬢は恐らく今拐かした少女を何処かに連れて行っている筈です。

 何か思い当たる事はありませんか?」


 ゴーレイ子爵は小さな体をますます丸めて

 涙ぐんでいる。


「この一週間、急に夜明けに帰って来る日がありました。

 クタクタに疲れて帰って来るのです。

 私どもには、孤児院の手伝いで養子先まで子どもを連れて行って来たと言うのでそれを信じておりました」


「御者に何処まで行って来たか確認していただけませんか」

「それが、孤児院で用意した馬車を使うと言っていまして」


 八方塞がりだ。

「あの、夜明けに帰って来た時に何か気付いた事はありませんか?

 どんな小さな事でもいいので。

 小さな女の子の命に関わる事なので」


 思わず口を出してしまう。


 小さな女の子、というワードに家令らしき人が反応する。

「あ、あの。

 関係あるかはわからないのですが」

「どんな小さな事でも構いません!」

「3日前、明け方帰られた時にドレスに草がたくさん付着していました。

 粘着する草です」

「えっ!」

「変わった草でしたので、まだ捨てずに部屋に置いておりますが、ご覧になりますか?」


「頼みます」


 エリオットとわたしは顔を見合わせる。

「エリオット、その草って」

「ああ、恐らく」


 家令らしき人が急ぎ戻ってわたしたちにその草を渡してくれる。


「間違いない、張り付き草だ」








お読みいただきありがとうございます。

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