17.スタンリー
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「何だか凄い女だったね」
「…ああいう女は嫌と言うほどいる」
「ああ…」
エリオットはああいった押しの強い令嬢に散々追いかけられてきたから、推して知るべし。
「エリオット、お疲れ様」
ヴィーが去った客間の長椅子に何故か隣り合って座っているエリオットとわたし。
エリオットはわたしの肩に頭を凭せかけて
「本当に疲れた」と小さく呟く。
「あの女、ロージーが話してくれた通り、ヴィー・パターソン男爵令嬢だったが、人物像が全く違っていたぞ」
「虐待されている気配は微塵も無かったよね。普通に馬車を使って出歩いているみたいだし。
でも、わたしが死んだと思っていたよ」
「ロージーが俺の婚約者だと知らなかったな。犯人一味と関わりがあるなら、ロージーが無事だと知っていてもおかしくないが」
原作通りの部分と全く異なる部分、これをわたしが生き残った為の補正と見て良いのか。
「ヴィー・パターソンについては詳しく調べてみよう」
それがいいと頷いていると、何やらドタバタとこの客間に近づいて来る足音が聞こえる。
「ヴィーが戻って来た?」
ヴィーならわたしは隠れた方がいい、しかしこの客間何処にも隠れようが無い。
「大丈夫、あの女じゃない」
バターンと扉が開かれ、客間に飛び込んで来たのは。
「スタンリー!」
スタンリーは一気にわたしに詰め寄り、ぎゅうぎゅうと強く抱きしめる。
「ロージー、ロージー。
良かった、無事で。
心配で心配で気が狂いそうだった」
普段温厚なスタンリーが珍しく慌てている。
抱きしめられて至近距離となったキレイな顔を見るとすっかりやつれていて、透き通る榛色の瞳には薄ら涙が浮かんでいた。
後ろから追いかけて来たデュランが呆れたようにため息を吐く。
「ごめん、ロージー。
先日の襲撃事件を知らせたら慌てて飛んで来ちまった」
そうか。
心配かけちゃったんだ。
「心配かけてごめんね、スタンリー」
ぎゅうぎゅうと抱きしめるスタンリーをぎゅっと抱きしめ返す。
「…ちょっと妬けるな」
エリオットの一声に思わず飛び退いてスタンリーから離れた。
「あ、ロージーごめん。
心配し過ぎてタガが外れた」
「外れ過ぎ!羨ましい!」
デュランまでご乱心だ。
「スタンリー、領地の仕事は大丈夫なのか?」
スタンリーはエリオットをしっかりと見据え宣言した。
「領地の仕事は父さんに任せ、俺は王都での仕事を統括する事になった」
「シモンズ子爵や夫人もロージーを心配されていると言う事か」
「いや、エリオット、お前を信頼していないわけじゃない。だが、もう心配で心配で、居ても立っても居られなかった」
シモンズ子爵家の家族がみんな心配してくれているのが嬉しくて心がホワンと温かくなる。
「ありがとう、スタンリー」
結局スタンリーはおばさまの計らいで、シモンズ子爵家のタウンハウスでは無く、ジェンキンス公爵家に留まることとなった。
「よく考えてご覧なさい。
四六時中シモンズ子爵家からスタンリーが訪問して来るより、この邸に滞在していた方が時間的にも心情的にも理に適っているわ。
それに腕利きの剣士がひとり増えるのよ」
苦笑いして恐縮するスタンリーにおばさまはにっこりと笑いかける。
「スタンリーもデュランも私の息子同然なのだから遠慮する事はないわ」
おばさまにはみんな可愛い子どもになってしまうのだ。
スタンリーは主に王都の商会支部の仕事をしながら公爵家に滞在することになった。
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