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12.消えた襲撃犯

ブクマ、評価、いいねをありがとうございます。

とても励みになります。

これからもよろしくお願い致します。

「えっ!待って。

 どういう事?

 賊が一人残らず消えたって」


 翌朝、疲れた様相で帰宅したエリオットとデュランが衝撃的な事を言った。


「俺たちが王宮に戻った時には、賊は一人残らず地下牢から消えていた」

「こっちの配下が地下牢へは間違いなくぶち込んだらしいがそのあとの僅かな時間で一人残らず消えていた」

「だって王宮の地下牢でしょう?

 見張りとかいなかったの?」


 エリオットとデュランは苦い顔だ。

「敵の手の者が何人も見張りに入り込んでいたようだ」


 苦い顔も当然だ。

 地下牢を管轄する王宮騎士団憲兵隊には身元がしっかりした者しか入隊出来ない。

 犯罪歴なんかもしっかり調べられる。

 もちろん、王族を守る近衛騎士はもっと厳しい審査があるけど、だからと言って王宮憲兵隊に敵が何人もというのは余りにもお粗末だ。


「憲兵隊長の首は飛ぶな」

 デュランの不穏な予言はやがて現実となる。


「兎も角、今まで以上に危険になったという事だが、これからは俺とデュランが交代でお前を守るから心配要らない。

 ただ当分は事件の後処理などがあるからデュランに任せる事になる」


 大事になってしまった。

 公爵嫡男と新進気鋭の近衛騎士の二人が護衛って。

 何処のお姫様ですか。


「そんな迷惑かけられないよ」

 涙目で訴えるとエリオットが凍えるような口調で言い捨てた。

  「命には代えられないだろう」






 わたし達の婚約が知れ渡ったために、翌日からはありとあらゆるお誘いや来客が来るようになった。


 幸いな事に百戦錬磨のジェンキンス家の執事長や侍女頭がキレイに捌いてくれるので、わたしに被害が及ぶ事はない。

 執事長さんと侍女頭さんには、余計な仕事を増やして本当に申し訳ない。

 後で何か御礼をしないと。


 そしてあれからエリオットは事件の後処理や本来の仕事である王太子様の側近として忙しいようで、何日も王宮から戻って来ない。


 そもそも、王太子様の側近という王政の中枢にあり超多忙なエリオットにわたしというお荷物が増えてしまったのだ。

 申し訳なさすぎる。

 本当に大きな借りが出来てしまった。


 しかしながら、わたしとしては、この擬装婚約が整って周知されたし、夕べは死亡フラグも回避したのだから、さっさとシモンズ領へ帰るつもりだった、のだけど。


「社交シーズン中に婚約したての令嬢が領地に帰ってしまったら不仲や擬装を疑われてしまうだろうな」

 あの事件の帰り道で、馬車の真向かいに座ったエリオットはわたしの目を覗き込んでさり気なく呟いたのだ。


 な、何故考えている事がわかるの。

 もしかして声が出ていた?

 焦るわたしにエリオットは氷の微笑で囁いた。


「まさか、領地に帰ろうなんて思ってないよね」


 冷や汗が背中を伝う。

「や、やだなぁ、そんな事考えてないよ。

 今帰ったらエリオットの虫除けにならないもの(でも命の危険が〜)」


 必死に目を泳がせながら弁明するわたしをエリオットは生温かい目で見ていた。




 事件は公にされず秘密裏に調査が進められている。

 犯人一味が捕縛されていないため、わたしはデュランと共に、事件から2週間ほど公爵家で引きこもって過ごした。


 公爵家の広いお庭の一角にある鍛錬場でデュラン相手に剣の稽古をしたり、ジェンキンスのおばさまとお茶を楽しんだり。

 あの事件が嘘のように穏やかな日々を満喫していた。

 デュランは久しぶりにゆっくり出来るとご満悦だ。

 エリオットは馬車馬のように働いていたらしいけど。



「ロージー、そろそろ出かけましょう」


 そんな訳で王都長期滞在が決定し2週間が経ったわたしに、ジェンキンスのおばさまが提案してくれた。


「おばさま、いつもありがとうございます」

「まぁまぁ、改まってどうしたの。

 ロージーはもうわたしの義娘(むすめ)なのだから、遠慮なんてしなくていいの。

 エリオットが今は重大な任務でお相手出来ないのだもの。

 代わりにわたしがお付き合いするのは当たり前でしょ」


 優しいおばさまにはいつも癒されて感謝しかない。

「おばさま、大好き」


 おばさまは感激してわたしをそっと抱きしめる。

「あら、でもロージー、

 もうおばさまはやめてね。

 おかあさまと呼んでちょうだいね」


 聖母スマイルで言われたら抵抗出来ない。

 反則です、おばさま。

 いや、おかあさま、、

 ものすごい泥沼にハマっていっているような

 このイヤな予感は何だろう。


「お、おかあさま」

 聖母スマイルの圧力に負け呟いたその瞬間背後から美声が聞こえた。


「もう、おかあさまと呼んでいるんだ。

 いいね、嫁姑の仲が良くて。

 これは式も急がなくてはならないな」


「エリオット、い、いつからそこに」

 久々の生エリオット。

 居間の扉に背を預け腕組みをして立っている。

 というか、いつから居た?

 王家の影並みに気配を消していた?


「少し前から居たよ。

 ねぇ、母上」


 おばさまはニコニコと頷く。

 気付いていたなら教えてくださいよ。

 何だかまた深みにハマった気がする。

 いや、外濠がガンガン埋めたてられてるような。


「これからどちらに?」

「うちがお世話している孤児院へ顔合わせに連れて行こうかと思っていたの。

 でもエリオット、貴方時間があるならふたりで行ってらっしゃいな。

 なかなかふたりきりになれないのだもの。

 おかあさまは気を利かせましょう」


 いやいや、そんな気遣いは不要ですって。

 それにデュランもいるからふたりきりじゃないし。


「孤児院ですか」

 何やらエリオットは難しい顔をしている。

 あれ?子ども好きだよね?

 シモンズ領では近所の農夫の子どもたちとか

 使用人の子たちを可愛がっていたよね?


「他に予定があるなら無理しなくても」

「いや、行く。行こう」

 わたしの言葉を遮り、急に腕を取り歩き出す。


「エリオットは孤児院の院長とは何度か顔合わせしているから大丈夫よ。

 行ってらっしゃい」

 おばさまは満面の笑みで見送ってくれる。

 そしてデュランは屋敷で待機らしい、なぜ。


「は、はい。

 行って来ます」


 ジェンキンス家の立派な双頭の鷲の家紋入り馬車で孤児院への道を揺られながらうつらうつらしているとエリオットが突然声をかけてきた。


「ロージー、くれぐれも俺から離れないように」

「へっ?」

 びっくりして飛び起きる。


「俺たち婚約したてだからね」

 あー、そうですね。

 世間を欺くためですよね。

 知ってた。



お読みいただきありがとうございます。

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