13.孤児院
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王都の西にある孤児院はジェンキンス公爵家が長く援助しており、孤児院の運営や慰問は公爵夫人の大切な役割のひとつだと、おばさまから教えられた。
いや、わたし公爵夫人にはならないですけど。
エリオットと共に馬車から降り立つと、孤児院の前で数人の関係者が迎えてくれた。
「ジェンキンス卿、良くいらっしゃいました。いつもありがとうございます」
壮年の男性が頭を下げる。
この人が院長だろうか。
「こちらこそ出迎えありがとう。
こちらはわたしの婚約者のブルックス侯爵令嬢だ。これからこの院の運営にも携わるので
挨拶がてら連れて来た」
「婚約者」と聞いて一同が固まっている。
中でもひとり妙齢の女性は明らかに青ざめている。
このひともエリオットに憧れていたのかしら。なかなかの美人だし。
あまり見たことのない黒と言うより紺に近い髪色だ。
「ロージー・ブルックスと申します。
よろしくお願い致します」
孤児院の皆さんは気を取り直したようで、慌てて頭を下げている。
院長が先導してくれて、孤児院内を案内してくれた。
院長室にて、帳簿を見せて貰うとジェンキンス公爵家からの資金の流れもおばさまに聞いていた通りで、よく運営されているようだ。
「よく管理されていて感心いたしました。
素人のわたしがお手伝い出来る事は限られますが、よろしくお願いいたします」
運営の確認等を終えると、最後は孤児院の子ども達との面会だ。
シモンズ領では領内の子ども達と仲良く過ごしていたので、とても楽しみにしていた。
孤児院の庭に案内されると30人ほどの子ども達が元気に駆け回っていた。
「元気だ」
思わず呟くとエリオットがクスリと笑う。
「ロージーとあまり変わらないと思うけど」
「なっ、何ですと、」
思わず吃り気味に答えていると、其処へ先程の紺色の髪の女性が近づいて来た。
「エリオット様、婚約者様を子ども達にご紹介いただけますか」
紺色の髪の女性はエリオットに媚びる様な視線を這わせてから、睨む様にわたしに視線を合わせた。
背筋に冷たいものを感じながら、視線を受け止めると紺色の髪の女性はフンっと鼻を鳴らし口元を歪めた。
『感じ悪いし、態度が露骨過ぎ』
そっとため息を飲み込む。
「婚約者のロージー・ブルックス侯爵令嬢だ。ロージー、彼女はこの孤児院で慈善活動をしてくれているヘルミナ・ゴーレイ子爵令嬢だ。ゴーレイ子爵令嬢、これからは実質的にロージーが孤児院の運営を行っていく事になるから宜しく頼む」
ゴーレイ子爵令嬢はエリオットに満面の笑みでお任せください、などと言っているが、どうも底意地悪そうで不安が募る。
ゴーレイ子爵令嬢はまたわたしに冷たい視線をよこしながら、子ども達を呼んだ。
「みんな、こちらにいらっしゃい」
遊んでいた子ども達はその声にビクッとして
そそくさとわたし達の前に整列した。
「みんな、エリオット様がいらしてくれたわよ。あと、此方はブルックス侯爵令嬢。これからこの孤児院の運営をされるそうなので失礼のないようにね」
何とも奥歯に物が挟まったような言いようではあるが、ぐっと堪えて笑顔を作る。
「こんにちは、ロージー・ブルックスです。
これから皆さんと仲良くなりたいです。どうぞよろしくお願いします」
「・・・」
明るく挨拶してみたが、子ども達は無表情のまま黙り込んでいるし、最前列にいる赤毛の少年が物凄い形相で睨んでいた。
これは、初見から嫌われた?
見かねたのかエリオットがスッと一歩前に出て子ども達に話しかける。
「ロージーはわたしの婚約者で、野山を駆け回って育ったから、みんなの良い遊び仲間に
なるぞ」
エリオットの言葉に子ども達は顔を見合わせ
渋々頷いた。
赤毛の少年は隣にいるやはり赤毛の少女の手をギュッと握り締めてまだわたしを睨んでいた。
何だかここも前途多難の予感。
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