11.ヒロインへの疑惑
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頭の中がカオスだ。
まさか主人公がいきなりダークサイド。
小説と違いすぎてカオス。
いや、最早いろいろ回避し過ぎて小説とは別ものになってしまった?
それに本当にあれはヴィーだったのだろうか?
顔が映し出されたのは一瞬だったし。
でもそっくり、いやそのものだった。
あの可愛らしい主人公顔。
そもそも、小説「永遠の星の下に」のヴィーはどうしてあの場所にいたんだっけ?
えーと、何だっけ。
ヴィーは貧乏男爵家の長女で、男爵夫人だった母親は幼い時に亡くなり、その後愛人だった娼婦上がりの後妻とその娘でひとつ違いの異母妹がやって来てからは、下女扱いで納屋暮らし。
毎日、後妻と異母妹に虐め抜かれ、挙句に娼館に売られそうになり夜逃げしたところで、この事件に遭遇したのよね。
結構、ハードな人生と言うか、よくある異世界ものの王道パターンだ。
偽の呼び出しに気付いたエリオットが現場に駆けつけたところを物陰から見ていて、後から恐る恐るジェンキンス公爵家を訪ねるのよね。
唯一の目撃者という事で、ヴィーは国の保護下に入り、ある貴族の傍系宅に預けられ、エリオットと共に真相究明していく。
そんなヴィーが刺客を手引きした?
待って、その前にあの美貌令嬢はどうなったんだっけ?
あれ?思い出せない。
カオスな頭で悩んでいると、デュランたちが戻って来た。
走ってきたのか息が荒い。
「あの女、煙のように消え去った」
「顔は見たのか」
「合図した時に一瞬だけ見たが、見た事の無い顔だったな」
「お前が見た事の無い女なら世の中に出て来ない、訳ありの可能性が高いな」
「お、おい、エリオット!
ロージーが誤解するからそんな事言うのはやめてくれ」
デュランがエリオットをポカポカ叩く。
そうだよね、わかる。
「デュランは人の顔覚えるの得意だものね。
でも、そんなにいろんな女の人と知り合いなんだ。すごいね」
流石モテ男と褒めると、デュランは膝から崩折れた。
「ロージーに、ロージーに誤解された。
嗚呼、もう生きていけない」
エリオットが哀れなものを見るような目をすると、デュランは更に喚いた。
「エリオット、お前はいいよ!
ロージーと婚約したし。
だが、俺だってロージーには良く思っていて欲しいんだ!」
これはわたしに悪く思われたと誤解したみたいだ。
「大丈夫、デュランが沢山の女の人を知っていても、わたしはデュランが大好きだから心配しないで」
「嗚呼ーーーーーーーーーーーーー」
デュランの断末魔の様な叫びが深夜のお屋敷街に響き渡った。
この後、ジェンキンス公爵邸にわたしを送ったエリオットとデュランは王宮へ蜻蛉返りした。
もちろん、捕縛した賊の取り調べだ。
取り敢えず賊は捕縛されたから一安心。
「大変な目にあったわね。
大丈夫なの、ロージー」
エリオットに事件を知らされたジェンキンスのおばさまは心配そうだ。
「エリオットとデュランが守ってくれたので傷ひとつありません。
ご心配をおかけしてすみません」
「貴女は被害者なのだから謝る必要なんてないのよ。
それより怖い思いをしたのだから今夜眠れないかもしれないわね。
そうね。昔みたいに私と一緒に休む?」
「おばさま、ありがとうございます。
でもひとりで大丈夫です。
お気持ちだけ」
「あら、残念ね。
また、ロージーを抱きしめて眠れるかと思ったのに」
おばさまがシモンズ領に滞在中はよくおばさまのベッドに潜り込んだものだ。
シモンズの叔母さまのお部屋には叔父さまがいらっしゃるので子どもながら遠慮していたけど、ジェンキンスのおばさまはエリオットとふたりでいらっしゃるのでいつもお部屋に潜り込んでいた。
なんだかんだ言って、やはり寂しかったのだと今なら認められる。
優しく包み込んでくれていたおばさまには感謝しかない。
おばさまの優しさに包まれてほんわかしていたその頃、王宮では大変な事が起きていた。
お読みいただきありがとうございます。




