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とても現実  作者: 皿日八目
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 もちろん、世の大多数の人々にとってこの話は関係がない。その関係がない話のなかでさらに関係のない話をしようというのだから、もはや十八族といってよい。というのも、しばらくぶりに文章を書くので、感覚を取り戻す必要があるのだ。


 それから一時間が経った。

 よし取り戻したぞ。最後の一つは大変だったな。ただの除雪車だと思ったら火を吹くんだもの。せめて雪を吐き出し給えよ。

 それでは改めて……


 合計すれば一万文字を超えた。千万文字の千分の一。百万文字の百分の一。これと並べると十万文字の十分の一というのも、あら、全然大したことのないように思えて気が楽になる(いわゆる遠近法)。ま、気は楽になっても作業が楽になるわけでもなし。私はまだまだ文字を書かなくてはならない。つらい。慰めに醤油を一滴。あらゆるものを糧とする雑食の我らヒト科なら、自らも自身の栄養素を補う一存在として扱う心構えが必須ではなかろうか? それはつまり、この舌、自分の舌をほどよい調味料によって差し出がましくはない味に調え、致命には至らぬ程度に噛みしだくことを意味する。ほらやってみよ。馬鹿。誰が自分の舌でやれと言った。え、私? 一行前の私は既に私ではないので。細胞の話とも受け取れるこの逸話、しかし私の専門外(専門のものなんて何もない!)なので、打ち切り御免。


 何でも書いてよいと言われると、何も書けなくなってしまう。ありがちな現象であり、詳しい原理の究明が待たれるところだ。その要求はかなり切実である(特に私にとっては)。あぁあ。どうしてこんな形式(これもやはり非存在)で始めてしまったのだろう。やりづらくて仕方がない。思いつくまま書き殴ってみるけれど、全く筆(私にとってはQWERTY配列のキーボードを意味する)が、筆が、進まない。こうやって単語を繰り返してみれば、その遅延具合もおわかりいただけるだろうか? ま、とにかくそれくらい苦労しているのだ。賢い読者(賢くないと自認する者も胸を張れ。私よりは賢いであろうことをわたしが保証する)はもう、私がこうやって弱音をゲーしていることそれ自体が十万へ近づくための禁じ手に近いショートカットであることを見抜いているかも知れない。だけど私は恥知らずなので、なおこの行為を続けるぞ。辟易する覚悟を決めページを降らせよ。


 適当な物語をでっち上げておけば良かったかな。ファンタジーとか。ラブ・ストーリーとか。明確な目標があるなら、それに向って適度なまわり道やら何やらを繰り返し、あっという間に十万をぶち破ることが出来たろうに。私は阿呆。阿呆。とんま。まぬけ。馬鹿。愚者。ぐしゃぐしゃ。


 後悔したって仕方ない。もう後戻りはきかないのだ。今さらファンタジーを始めったって、ねえ? 意味不明な文章と同居させてしまっては、初見の人を甚だしくドン引きさせ、またここまでの一万文字あまりを読み下した好色の人らにも、求めていない展開が繰り広げられる様に見切りをつけられてしまうだろう。止めておいたほうがいいんだろうな……

 まあ、やるけど。


 幻想の幻想的な翼(新時代の五万色)は、天使から人へと贈られたものだった。

 おおむね大聖堂のステンドグラスのようなこの翼。天使のそれを象っているが、羽毛の一つ一つが無限に光を取り込み反射させる天上界のガラスで作られており、わずかにでも光がある場所、つまりこの世のどんな場所にあっても堂々と照り輝いた。まともな美的感覚を備えたあらゆる知的生命体は、その絢爛を一目見ただけで失神した。脳が発狂の危機を感じるほどの美しさであったのだ。しかしこの翼の真価は、博物館のケースに入れて眺めるばかりでは発揮されない。多くの宝物がそうであるように、実際に使用してこそ価値があるのだ。


 人知には窺い知ることすらできぬ原理により、この翼は想像力をエネルギーとして、脳裏に浮かべた空想へと飛翔することができる。外ではなく内に飛ぶ羽なのだ。そしてそれは、どれほど心躍る体験だろう! 文字にも、音楽にも、絵にも、決して表すことの叶わぬ領域。かすかに意識を掠めるばかりで、残像としてしか映らぬ感覚。いつ見たのか、いつ聞いたのか、虚実すら明らかでない記憶と妄想のはざま。果てしない懐かしさ、むなしさ、無性に胸をさざめかす印象。それらすべてを、実在するがごとく、いや現実以上のものとして感じることができるのだ。これ以上の幸福があろうか――

 申し訳ないがここまで


 私のちんけな想像力では、これ以上実りある発想も何も思いつかない。やはり私はわけのわからないことをわけのわからないように書くことしかできない。しかもこれ、本当にわけがわからないわけではないのが悪いところだ。けっきょく私は、わたしにわけのわかるような文章しか書けないのだ(「わけ」は何回使われたのか? 数えてみよう! 最後に答え合わせはしない!)。今だ佯狂の域を出ず。出ないほうがいい気もするけど。


 なんてところで、まだ半分! もう一回叫びたい気分ですが、命が惜しいので止めておきます。そこまで向こう見ずでもないのです。この文章の向こうは見えないが。それと最近、本を読んだ。筆舌に尽くしがたい筆舌だった。みなさんがそれと出会う幸運を祈っております。ほい(五円玉を賽銭箱へ)。パンパン(手はランダムに叩く)。ジャラジャラ(ここで存在しない順序が違うことに気がつく)。ドタドタ(羞恥を打ち消そうと慌てて逃走を試みる)。そんな顛末の帰結として願われた幸運。どうか大切にしてくれ給え。お礼の手紙は私の現住所たるポルシェジア島まで。五万の切手を貼ってよろしく。


 いろいろな表現があるけれど、やはりそれを書くのは難しい。それ一つで印象はまるで変ってしまうので、もちろん無関心ではいられない。でも難しんだって。ああいうものがすらすら出てくる人の頭、かっさばいて見てみたい(法律は度外視)。多分中心から外側に向って比喩が七色の輝きを見せていることだろう。赤はイチゴ味、緑はキャベツ味だな。きっと。でもニンジン味もあり得るぞ。まいったな。ニンジンは苦手なんだ。昔々、ニンジンが宇宙で青春を謳歌していたころ(いわゆる青野菜時代。社会科の教科書の十三ページに載っているため、その時間夢を見ていたもの以外には常識)、宇宙の夜明けが発生し、生焼けだった彼らはウエルダンとなり、今は直売所で余生を送っている。それが私の苦手とどう関係しているのかって? そりゃ、私が訊きたい。私のことを私に教えてくれ。雪原の時計台の一と五の間に私の顔が貼ってあることは知っているか? 剥がしてよこしてくれ。あれは写りが悪すぎるし、特にできものが多かった頃なんだ。顔表面の面積に対し、密度〇.八だぞ。どうなってんだほんとに。


 今はこれを書いているから、当然読み返すという行為はしていない。しかし書き終えたときには読み返すから、その時には様々な加筆修正が加えられることだろう。まずいものは一つでも二つでもどっちにせよまずいから量を増やしてもいいのだ。おら食え。食えおら(中々食えない倒置法)。口直しには仮想の消しゴムを食え。本物じゃないぞ。仮想だぞ。その行為について私は一切の責任を取りません。多分誰も取りません。接着剤に覆われた責任。けっこう埃も付くかしら? あっ。これ私のことね。もちろん。十年前を思い出したもんで。いや、あの牛乳こぼしたのは絶対容器の形状のデザインのせいだった(動揺を示す文体)。許せ父母、我が血縁。似ているのは髪型だけ!


 そろそろ飽きてきた? 私はとっくに飽きているぞ! 十万はとうてい続けられそうにもない。そもそも、何だ十万って。どうして十万文字を目指していたのか。それを越えるといいことがあるのか。私の利益になるのか。キーボード上の反復横跳びに見合う褒美なのか。こういった問いかけは一話目でもうやったことで、このまま回帰してもう一度ここまでを繰り返し二倍の文字数を得ようとしたけれども、いよいよつまらないので中止する。成層圏の不安定な挙動の報告。右へ左へ雲を連れ立ち、それ誘拐? と問えばいよいよ嵐。涙涙のストーリー。続きは製品版にて(来々春発売)。その発売日より確実な延期の日。演繹する延期と帰納する昨日。うん。やっぱりやめておこう。


 ワン・パターン! この文章を的確に表すこの言葉。しかし、どうしようもないのだ。私が自分で自分の意識を変えようとしない限り。そして今私は特に自分の意識を変えようとは思っていないから、やはりどうしようもない。だがそれでも変えないと。十万文字の念願が叶う日に降る恵みが不確定なのだから、せめて確実なものとして読者の存在を感じていたい。それくらいの意識は持っています。腐れる脳の最後の一部分(発酵済み)。そこが読まれることを声高に願うのです。いやそれはもしかして、その脳が発した信号ではなく、そこに住み着く酵母の願い? 発酵食品たる味噌が脳味噌へ変化する時があるのか? 錬金術ではないか。その日こそ、全国各地の工房がブレーンとなるのだ。号令は一つ。国土を全部大豆畑にしろ。畑の肉の酒池肉林。酒はもちろん大豆酒。流れる川はもやし川。気を良くした回転舌が一句。寂し ナツメヤシ もやし。大賞確実。賞金醤油。海はこれから醤油味。醤油味の塩。味覚の混乱。しょっぱさの消える日。二重に重ねりゃ相殺されると、五歳児が夢で実物を見る日々。

 なにこれ、キモい。


 全編が前の段落のようになっても良いのか(もうなっている)? かなりきついと思うなそれは。全くの混沌は見るに堪えない気がする。一見ぐちゃぐちゃ(この文は実際ぐちゃぐちゃ)に見えるとしても、ある程度秩序立っているものなのだ。目玉焼きで例えるなら、ハートとか、まあ、星とか、名前とか、何でもいいけど、ケチャップ(墨汁でも可)で絵を描くだろう? それは良いのだ。ほどよい味わいだし、もうちょっとべつの形で出会いたかったかもしれない(具体的にはオムレツ)卵とトマトのカタストロフィがちょっぴりほろ苦くもある。だが、塗りつぶすようにケチャップをかけてみるとどうだろう。笑顔の食卓が途端に三角コーナーへ変わり果てるのだ。朝食の変死体。そんなものを誰が望む? 誰も望まないし、ついでに言うととっくに四千字を越えているのでここまで。落ちは各自で探してくれ。どっかの文節の引き出しの中にあるはずだ。たぶん。



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