10:最強の1人ダーリン
ランキングに入りたい。初動的にもう無理。
俺達は東の町ラバータウンに着いた。この近くには海のステージがあり、港となっているためセントラルとまではいかないががなり栄えているところである。
「この家にダーリンさんがいる」
ダーリンの家は町の中心部であるところに建っていた。
「この家、他の家に対して大きすぎると思っていたがプレイヤーが住めるものだったのか」
その家は貴族の家とも言えるようなサイズ感で、外観は東京駅のようなイメージだ。
俺は玄関の両開きの扉に触ろうとしたが触る前に透明な壁のようなものに阻まれた。突き指したかのような感覚に襲われた。
「フレンドしか入れないんだよ」
トゥルースが扉を開けた。
このゲームは扉を開けてしまえば、誰でも入れるようになるらしい。
「実は俺、行くって言ってないんだよね。チャットに既読ついてなくて」
「え?」
声が部屋の奥から聞こえてくる。
「次、帰ってくるのいつ?ダーリン」
「来週には帰れるよ。ハニー」
「約束よ……ダーリン」
黒い髪の男と茶色い髪の女がソファの上で抱きしめあっている光景を目撃してしまった。
俺達は話した。できる限り小さな声で。
「おいトゥルース、マジでアポ取ってなかったのか?私は冗談かと」
「ごめん。予想できてなくて……」
他人が部屋に入ってきた時は専用の通知が鳴るのだろう。速攻でバレた。
「誰だ!!」
俺達は部屋の中に順番に入っていった。その緊張した雰囲気は知人が教室で怒鳴りつけられているような緊迫した空気だった。
「なんだ……トゥルースじゃないか」
彼はメールフォルダを開く。
「すまん。メールを見るのを忘れていた。紹介したい人がいるのだな」
男は抱きしめてあっていた体勢を中断して、何もなかったかのように話した。
「座ってくれ」
応接室に案内されて俺達は上座に3人座らされた。
「まずは、シルバ•バンドレッドさんから自己紹介をどうぞ」
(シルバー・バンドレッド視点)
あまりにもこの男、平然すぎる!!さっき女性と抱き合っていたことを見られてもそれが当たり前かのように振る舞っている。あの女の人も平然と彼の横に座っている………いや、変なこと考えている場合じゃない。私はハルを止めようとするプレイヤーだ。そして、私がアカウントの売買をしたことなども言わない。もしも、会話が運営に筒抜けならばゲームアカウント全てがBANされてしまっても不思議じゃない。
「私はシルバです。私はハルを止める方法を実行するべく、ここに来ました」
「要件は分かりました。その話は後々聞かせてもらいます。ハニー、紅茶を出してやってくれないか?」
「はーい」
ハニーと呼ばれていた人物は席を外した。
「次は、Kaede868さん」
(Kaede視点)
やばいどうしよう!!この男の人ちょっと怖い。この状況から見て。俺はシルバに話を合わせるのがいい。あと、敬語で喋った方がいいだろう。
「私も同様にシルバと同じ目的でここに来ました」
「分かりました。」
紅茶がテーブルの上に置かれる。
「ありがとう、ハニー」
そう言って彼は紅茶に口をつける。それに応じて、来客3人も紅茶に口をつける。飲んだ感じはしないが、味と風味だけ感じる。
「それで、僕に何を頼みに来たんですか?」
「呪殺の札の出品を止めていただきたいです」
「しない方が良いんですよ」
「理由を聞いても良いですか?」
何故だ?この人が出品を取り消さない理由は。メリットなんてないだろ。
「分かりました。僕が呪殺の札を取り消さない理由は2つあります。1つめはハルを含む髑髏会の資金を減らすこと。2つめはシンプルに、儲かるからです」
「1つめについてもう少しお話をお聞かせいただけないでしょうか」
シルバは冷静に言葉を選び、質問する。
「ハルを含めた髑髏会は喉から手が出るほど呪殺の札を求めています。僕が出品するともちろん彼らは入金してきます。そうなれば、髑髏会に呪殺の札を与えたくない他のプレイヤーも入金してくるわけです……でも、彼らは落札するまで入金を続ける。このゲームは金さえあれば一級品の装備を揃えることできるので、彼らの資金を削ぐことは大きなダメージになる」
「その髑髏会に買わせたくないプレイヤーとは?」
「最強の3人のうちの1人がリーダーを務める大規模チーム『白銀連合』などの人々だ」
「白銀連合……」
思わず声に出してしまう。
「私たちに呪殺の札を何枚か頂けないでしょうか?」
「君達のレベルはあまりにも低すぎる。レベル280を超えていると言われているハルに勝つにはレベル2桁の初心者では話しにならない」
「私はハルにリスキルされたプレイヤーなんです」
「……つまり、壊滅的被害を受けてまた1からサブアカウントでプレイし直しているということか」
サブアカウント?リスキル?何だそれ?でも、彼は納得しているように見える。
「なるほど、トゥルースも言っていた。あの2人は強いと。少しわかった」
(プレイヤー ダーリンからフレンド申請が来ました)
2人同時にフレンド申請!!俺達は迷わずYESをした。
「とりあえず、髑髏会の者じゃなさそうだね。僕の家に入ることを許可しよう」
彼は疲れを取るかのように、ため息をした。
「ゲームで敬語は慣れないな」
「そうね」
俺は隣の女性の人がどうしても気になった。
「その女性は一体ダーリンさんの何なんですか?」
「現実世界での妻だ」
つまり、ゲームでもラブラブしてんのかこの人達は。
「今僕は単身赴任中だから家に帰れなくてね。ゲームで会っているんだ」
「本当にいいゲームを見つけたわ」
ゲームってそんな楽しみ方もあるのか。
「じゃあ、僕に頼み事をして欲しかったらレジェンドランクのアイテムをそれぞれ1つ取ってきてくれないか?」
レジェンドランク?何だその階級。でも、隣のシルバがすごい嫌そうな顔をしている。
「これでも、トゥルース君の紹介あっての条件だ。……僕がリーダーのチーム『エデン商会』のうち半分の15人がやられてしまっている。条件を達成してくれたら、出品は取り消すし資金援助もする」
「質問してもいいですか?」
話してるうちに俺にはどうしても聞きたいことがあった。
「どうしてトゥルースと知り合ったんですか?」
「僕のハニーが武器の強化をするときにアイテムが足りなかったんだ。そんなときに必要な強化鉱石を持ってきてくれてね」
「僕のハニーだなんて……」
ゲーム内だとしても彼女が顔を赤くしているのはすぐにわかった。
(プレイヤーチェック ハニーレベル120所属チームエデン商会 )
アマチュアプレイヤーじゃないじゃん
「じゃあ、期待しておくよ」
俺達は屋敷を出た。
「よし!!やったぞ!!コンタクトが取れた」
「いや、無理難題でしょ」
トゥルースが哀れみのある顔と声で話しかけてくる。
「そうだな。このゲームのレジェンドクラスのアイテムは片手で数えるほどしか同時に存在しない」
スムーズに計画を進めてきた俺達にとってそれを入手するために多大な時間をかけることになるのだった。
小ネタ ラバータウン
海のステージにつながる大きな都市。最初は発展していなかったが、アップデートにより海ステージが開放されたと同時に大きく発展したと言うサプライズがあった。発展する前からもダーリンが住んでいたのではないかと言われている。




