7話 次は、君の物語
( ´∀`)
はじまり、はじまり
気が付けば、一つ目の物語は終わっていた。
「もう終わり?」ヨナは少しだけ残念そうに呟く。
最後のページには、こう書かれていた。
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彼との旅はここで終わった。
けれど、あの日交わした約束は、今でも私の宝物だ。
ーーーーー
「いい話だったなぁ……」
小さな火の精霊は、最後まで口が悪かった。
それでも、契約者が危険な目に遭えば真っ先に飛び出し、最後まで隣で笑っていた。
まるで家族のような二人だった。
ヨナは自然と笑みを浮かべる。
「次はどんな精霊なんだろう」
ページをめくる。二つ目の物語。
主人公は若い女性の魔術師。
隣には、水でできた小さな精霊がいた。「今度は水か」
その精霊は泣き虫で、少し臆病だった。
雨の日になると嬉しそうにはしゃぎ、契約者が落ち込むと、そっと肩へ寄り添う。
二人は各地を旅しながら、多くの人を助けていた。
「この子もかわいいな」
またページをめくる。三つ目。
今度は白い鳥へ姿を変える風の精霊。
四つ目。
大柄で無口な岩の精霊。
五つ目。
花の姿をした小さな精霊。
どの物語も主人公は違う。
精霊も違う。
旅の形も違う。
それなのに、不思議と最後には胸が温かくなった。
笑い合う者もいた。
喧嘩ばかりする者もいた。
別れに涙する者もいた。
けれど、誰一人として精霊との出会いを後悔した者はいなかった。
「いいなぁ……」
ヨナは本を閉じることなく、小さく呟く。
「僕も、こんな精霊に会ってみたい」
その一言は、誰に聞かせるでもない、本音だった。
そしてヨナは、何の迷いもなく次のページをめくった。ページをめくる手が止まらない。
気が付けば、部屋はすっかり静まり返っていた。
窓の外では街灯が灯り始め、部屋の中も薄暗くなっている。
「もう夜か……」ヨナは小さく呟いた。
時間を忘れるほど夢中になっていたらしい。
それでも本を閉じようとは思わなかった。
次の物語。
その次の物語。
一人の魔術師と、一体の精霊。
出会い方は違う。
旅の目的も違う。
けれど、どの物語にも一つだけ共通していることがあった。
精霊は、ただ命令に従うだけの存在ではなかった。
笑い、
怒り、
拗ねて、
心配して、
時には契約者を叱り飛ばす。
人間と変わらない感情を持ち、ともに旅をしていた。
「精霊って、こんななんだ……」
ヨナが知っている精霊の知識は、世間一般に知られている程度のものだった。
魔術で召喚される存在。
契約者に力を貸す存在。
その程度の認識しかない。
だが、この本に描かれている精霊たちは違った。
誰もが個性的で、誰もがかけがえのない相棒だった。
ヨナは自然と頬を緩める。
「もし僕が召喚するとしたら、どんな精霊が来るんだろう」
火の精霊だろうか。
水の精霊だろうか。
それとも全く想像もつかない精霊だろうか。
そんなことを考えながらページをめくる。
やがて、本の厚みが少なくなっていることに気が付いた。
「もう終わり……?」
少し寂しくなり、残りのページを指先で数える。
あと数枚しかない。
ヨナは名残惜しそうに息をつくと、最後の物語へと目を向けた。
最後の物語を読み終えた時、ヨナは静かに本を閉じた。
「終わっちゃったか……」
どの物語も、それぞれ違う出会いがあった。
笑って、喧嘩して、助け合って。
最後には必ず別れが訪れる。
それでも誰も、その出会いを後悔していなかった。
ヨナは表紙をそっと撫でる。「僕も……」
そこまで呟いて、言葉が止まった。
もし自分にも、こんな出会いがあったら。
そんなことを考えてしまう。
その時だった。
パラリ。
閉じたはずの魔導書が、ひとりでに開いた。
「え?」
風は吹いていない。
窓も閉まっている。
それなのに、本はまるで誰かにページをめくられたように、ゆっくりと最後の一枚を開いた。
「……」ヨナは息を呑む。
そこには、さっきまでなかった文字が浮かび上がっていた。
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物語は、まだ終わっていない。
次は、君の物語だ。
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「僕の……?」思わず声が漏れる。
その下には、円形の術式が精密な線で描かれていた。
見たこともない複雑な術式。
その周囲を囲むように、小さな文字がびっしりと並んでいる。
ヨナは恐る恐る読み進める。
そこに書かれていたのは、物語の続きではなかった。
精霊召喚術式。
そして、その下には短い注意書きが添えられていた。
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旅の始まりを選べないように、出会う精霊もまた選ぶことはできない。
どんな出会いが待っているかは、その時まで誰にも分からない。
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「選べない……?」ヨナは首を傾げる。
さらに読み進める。
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出会いとは、いつだって偶然から始まる。
その一歩を踏み出す勇気さえあれば。
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ヨナは思わず小さく笑った。
「本当に、この本らしいな」
旅の始まりも。精霊との出会いも。
全部、偶然。
だからこそ面白い。
「…できるわけ、ないよね…」
ヨナは術式をじっと見つめた。
最後まで読んでくださりありがとうございます。




