7話 嘘つき夏
葬式の日が来てしまった。
ずっと、ずっと夢の中だと、悪夢の中だと信じたかった。
それでも棺桶の中で花を添えられ、目を閉じた彼の姿を見ると。
やっぱり現実だと分かってしまい、涙が止まないほど溢れてくる。
骨になった彼を、数ヶ月後に墓へ納骨した。
葬式も納骨も、心人君の家族とともに行った。
墓に納め、線香を上げて手を合わせる。
心人君の母は語る。
「葬式の時は来てくれてありがとね」
「いえいえ、わたしこそ、心人君には……その、お世話になりましたから」
どう言えばいいか分からないこの気持ちを見ないよう、あえてわたしはそう返す。
心人君の母は俯いた。
沈黙を浮かべた後、しばらくして口を開く。
「心人が行ってたのよ」
「え?」
「『病気でいつ死んでしまうか分からなくて怖かった。でもそんな時、光をくれたのは桜さんだ。あの人が居ると僕も笑顔になれる』ってね。それから毎日のようにあなたとの思い出を語ってたわ」
「そうなんですか?」
「えぇ、そうよ。耳にタコができるかと思うくらいね。でもほれほど、あの子にとって、桜さんは本当に支えになっていたんだと思う」
「……………………でも、わたしは何もできなかった。彼の病気のことを知っていたら、もっと、もっと何か、できたんじゃないかな?」
声が震える。
苦し紛れに、わたしは悔しさと己への自責の念にポロポロと涙を落とす。
自分のせいだと、そう思わずにはいられなかった。
「心人の、心人の嘘つき! なんでよ、どうして…………」
わたしに、心人君の母はその涙を拭った。
「あなたは何も悪くない、あの子も悪くない。誰のせいでもない。だからね、そんな顔をしないで」
「でも、でも。だって、だって! 心人君は、心人君はっ! もっと長生きしたかったって、さ! 言ってたのよ! わたしも、わたしにももっとできることがっ、あったんじゃないかなぁ! ねぇ、ほんとに、なんでこんなことになったの。前まで、前まで隣で笑ってくれていたじゃん!」
心人君の優しく、眩しい笑顔がフラッシュバックする。
胸が痛み、悲しみの感情がさらに溢れる。
「大丈夫、落ち着いて。きっと、きっとあの子も、それでっ、それで幸せだったから……………………」
心人君の母も表情を曇らせた。
二人とも泣き出してしまう。
「心人! 心人!」
名前を読んでも、返事なんて返ってこない。
わたしは彼の墓に寄りすがるように訊ねる。
「たった一つ、たった一つを教えて。君の嘘は、果たして優しい嘘だったの!? 答えて、答えてよ! 心人君!」
どんなに投げかけても、ただもう何も返ってこない。
蝉の声、赤い陽射しが包む青。
寂しげな静寂だけが、そこに残った。




