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8話 終わり
心人君が居ない世界は静かだった。
まだあの青が、あの輝いた恋が。
大人になったわたしの心にいつまでも残り続けた。
嘘つきだったんだ。
わたしも、心人君も。
それでももし、心人君が正直に話してくれたら。
もし、わたしが病気のことを訊き出せていたら、こんな結末にはならなかったのかな。
分かんないけどさ、それでも今でも言える。
「ありがとう、心人君」
そんな思いを込めて、墓の前でわたしは手を合わせる。
「十年経った今でもさ、心人君の事、忘れないし、愛してるし。前向きに生きてみようと思ってる。ありがとう」
言葉をそうこぼして、わたしは踵を返す。
すると
「ありがとう」
彼の声が聴こえた。
ピタリとわたしの足が止まる。
「心人君……?」
振り向くと、誰も居ない。
でもなんだか、彼が微笑んでいる気がした。
なんとなくそんな気がするんだ。
わたしも微笑み返して、また歩き出す。
もう一度だけ、あの夏に戻りたい。
あの夏の音が蘇る。
嘘つきの夏が、初めての恋が。
幕を閉じた。




