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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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槍の舞

 官兵衛は慌てて、


「清正、正則はまだか?」


「合流するように伝えております。そろそろのはずだが」


「敵がそっちにも行っているとしたら?」


 あり得る話だ。というより現状を見れば何があっても不思議ではない。官兵衛は続けた。


「そもそも将軍が自ら大阪の近くにくるというのは備えがあるという事だ。殿下はそれを見越した上で将軍を攻めている。だが信勝がそれ以上だとしたら?」


「殿下の読みが甘いとでも?」


「そうは言っておらん。だが今の殿下には軍師がおらん。すまん、今それを言っても仕方のない事であった。周囲の敵を蹴散らし進むしかあるまい」


「いかにも」


 清正、官兵衛の兵が山に入って行き戦闘になっている。前方にいる島津の兵も山へ入っている。あちこちで声が上がり戦闘になっている。山の中では陣形は取れない。鉄砲も意味がないし個々の力量が勝負だ。清正の兵と内藤の兵が、島津の兵と秋山の兵が戦っている。飛騨と上野の山で訓練された兵と寄せ集めの兵の力の差が大きく、本来数が多い方が有利なはずがそうなっていない。戦闘は二晩続いた。清正、官兵衛、島津合わせて三千を残し残りの兵が山の戦闘に参加していた。


 内藤と秋山は山中でばったり会った。二人ともボロボロだが元気だ。


「ここで会うとはだいぶ前の方に来たという事か。久しぶりでござる」


「こちらも前に進んで来た。元気そうではないか」


「お屋形様が引き合わせてくれたのかもしれんな」


「ああ」


「兵も殆どがやられてしまった。おつやとも離れてしもうた」


「つや殿も連れてきたのか?そうか。こっちも殆どやられたわ。だがだいぶ削ったぞ。これなら勝ったも同じ」


 お互いが頷いた。元々生きて戻る気はない2人だ。一人が三人倒す訓練をやってきた。平地なら勝ち目はないが山間なら勝負になる。一万の兵で三万は倒したであろう。


「そういえば跡部はきておるのか?」


「わからんがどこかで戦っておろう」


 そこに桃影が現れた。桃影は飛騨の忍びで秋山の配下だ。


「跡部様は2里後方で福島正則を抑えております。足留めをしておられますが戦力差が大きく戦になれば長くは持たないと言っておられました」


「そうか。桃影、お前は信平様のところへ。死ぬには早い。信平様のところへは上泉が向かっている。今後は上泉に従え」


「承知いたしました」


 桃影は一礼をしてから去っていった。内藤は、


「ではぼちぼち行くか」


 と言って刀を掴み直した。後方は跡部が抑えている、つまりはここの敵に集中すればいい状況を作ってくれていたという事だ。跡部もなかなかやるではないか、などと話しながら襲ってくる敵を斬りながら斜面を降り始めた。降りて行くと敵の将らしき者達が集まっているのが見えた。


「あそこが敵の中心。ここからでは何もできんな」


「いきなり突っ込むのはどうだ?」


 丁度2人とも山中で槍を拾っていた。山中では槍は振り回せないので途中で捨ててきたのだが2人とも槍の方が得意だ。


「ここまで戦えばお屋形様も褒めてくれるだろう。行くか?」


「おう!」


 2人は槍を担いで歩いて行く。敵兵がそれに気付いて騒ぎ出す。清正も2人に気付いた。2人は向かってくる兵を槍でなぎ倒しながらゆっくりと進んでいる。その場にいる全員がその2人を見ている。そのくらい人を惹きつける何かがそこにあった。清正まで50mまで近づいたところで2人は敵兵に囲まれた。その様子を反対側の山中からおつやが見ていた。


「殿!」


 おつやは走りだし、おつやに付いていた10名の生き残り兵も後に続く。内藤と秋山に注目が集まっていておつやの側は手薄になっていた。そこにおつやは最後の力を振り絞り槍を振るう。それは見事な舞だった。敵もずっと警戒していたのだが内藤と秋山のオーラに魅入られていてその隙を突かれた。おつやは黒田官兵衛に槍をぶつけて倒した。そして首を跳ねようとしたときに護衛兵に阻まれ、官兵衛の太ももを槍で刺したところで生き絶えた。他の兵も奮戦したが力尽きてしまう。その様子は秋山のところからは見えなかったが、おつやが駆け込んでくるところは見えていた。


 将の周りの警戒が厚くなる。山中にいた内藤達の兵の生き残りが山から駆け出してくる。内藤と秋山を囲う兵に外から襲いかかる。敵が乱れる。その隙を見逃す内藤ではない。一気に前にいる敵を倒して前に進む。それを秋山が援護する。内藤が大声を出した。


「加藤清正はどいつだ?」


 官兵衛の足を見ていた清正は立ち上がり内藤の前に出た。こんな年寄りが我らをここまで追い込んだのか。どこの者だ。


「わしだ。お前は誰だ?」


「おい、虎。名乗れとよ」


 秋山はそこでおつやの屍を見た。よくやったぞ、俺もすぐに行くからな、と心で話してから


「そうか。俺は武田信玄公の家臣で秋山と申す。で、こっちは内藤だ」


「武田二十四将がここに。そうか、手強いわけだ。死にに来たのか」


『いかにも』


 2人が同時に嬉しそうに答える。そして2人は槍を振り回しながら清正へ詰め寄ろうとする。清正も槍を手に取った。

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