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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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武田旧臣

 物見が戻ってきた。福島正則と思わしき敵は陣形が取れるところまで引いていくという。


「戦上手と聞くがそのようだ。しぶとく生き残っている奴はそれなりに手強いな」


 戦国が長く続き名だたる武将は滅んでいった。今川、六角、毛利、天下を取ってもおかしくなかった大名はすでに無い。ここに現れたのは跡部重政だった。跡部は勝頼の守役だった家臣で、信平の守役も勤めていた。信平が結城家に行ってからは諏訪の領地でのんびりと余生を過ごしていたのだが、山県昌景から突然文が届いた。動けるなら動け!それだけ書かれていた。


「全く人使いの荒い爺いだ。昔散々世話になったし、恩は返さねば。最後を飾るには丁度いい。信平様もいるのならどの位立派になられたかお会いしたいしな」


 余生をと言っても情報だけは取っていた。諏訪といっても高遠に近くすぐ隣には勝頼が作った硝石を作る村もあるし、豚の養育場もある。武田を陰で支える拠点を守るのが表向きのお役目だ。旧知の輩や引退した忍びも跡部の所へ出入りするので信平の活躍は耳に入ってはいた。跡部には私兵がいないので今回は諏訪と上田、そう真田から兵を借りてここにきている。上田には真田家の長男、真田信綱が先祖代々の土地を守っている。弟達は戦場に近くて戦働きが多いが、信綱はしばらく戦に参加していない。兵の訓練を兼ねてという表向きの理由で兵を貸した。当然戻ってくるとは思っていない。真田の兵は良く訓練されていた。あの真田幸隆を思い出させる動きをする。内藤、秋山、跡部、この3人が死に場所を求めて参戦する戦だ。信綱が子供の頃には活躍していた人達、信玄公の遺産の戦いにふさわしい兵を出してきた。


 諏訪にも兵を頼んだら三千もの兵が出てきた。おいおい全部じゃねえか、と思ったがどうやら有事に備えて鍛えて育てた兵がいるらしい。そういえば勝頼様が昔そんな事を指示していた気がする。遠慮なく借り受けた、というか今使わなければいつ使うという事だ。


 跡部は兵を止めた。敵は山道を抜けた平地に陣を敷いている。そこにヒョコヒョコ出て行くわけにはいかない。とはいえこちらも下がるとなると上杉の陣にかなり近づく。上杉は砦を築いていて丸馬出しまでできていた。あれは内藤様の入れ知恵だろうが上杉が素直に作っているのに驚いた。跡部は上杉謙信には勝頼のお供で会った事はあるがどこまで武田を信用しているのかはわからないと思っていた。だいぶ時代に遅れてしまっている。


 跡部は上杉を頼るのではここまで出て来た意味がないと考えた。内藤様も秋山様も上杉の手は借りていない。武田旧臣には旧臣のやり方があるという事だ。


 跡部は兵を山中で休ませることにした。ここまでは強行日程だから兵も疲れている。何も焦る事はない、物見によると敵は秀吉子飼いの福島正則、足止めしておくだけでも意味はある。跡部は遅れて来たので状況が掴めていなかった。まずは信平様だ、と情報収集に忍びを走らせた。跡部がこの道を選んだのは偶然だ。道一本違えば秋山に後ろから合流していたのだ。結果的に福島正則が秋山の背後を襲うのを防いだ事になっている。


 今の戦況は福島正則は跡部と、島津は秋山と内藤によって動けなくされている。だがその膠着状態は長くは続かなかった。黒田官兵衛が加藤清正に合流したのだ。


「黒田様、ご無事で。海に沈んだと聞いておりました」


「酷い目にあった。拾った命、戦で使う事にした。大将はそなただ。指示に従うぞ」


 黒田官兵衛の兵もだいぶ減っている。それに兵糧も乏しい。敵の襲撃により失ってしまっている。それは清正のところも同じだった。秋山に兵糧を奪われたのだ。秋山はその兵糧を上杉のところへ運ばせている。秋山自身は死ぬ気なので食糧はいらないのだが、敵に奪い返されるのも面白くない。実際に秋山も内藤も跡部も食糧に余裕は持っていない。最初から死ぬ気だからだ。なので奪われる心配がない。土地の者は武田に味方しているので武田側はなんとかなるのだ。


 加藤清正は新たに現れた敵以外は攻撃をしてくる余裕がないと考えた。官兵衛を襲った敵、結城信平は逃げた。もう官兵衛が来た方へ進む意味はない。全軍を再び亀山へ向かって進め始めた。その動きを内藤が見ている。


「罠だな」


 内藤はそう言った。それを聞いて答えたのは上泉秀胤だ。いつのまにか城を出て内藤の横にいる。


「そうでしょう。殿、それでも行くのですね」


 罠、内藤は支城を奪い返した。そして敵はその城を遠目に囲んでいたが、引いていった。支城は放っておいて亀山へ向かうようだ。つまりは後を追ってこいと言っている。


「このままでは虎が大軍とぶつかる事になる。一気にやられはしないだろうが見殺しにはできん」


「信平様はどうされます?」


 内藤は信平の事は考えてなかった。が、それを聞いて閃いた。


「お主、三十ほど連れて行ってくれんか。お主はまだ死なすには惜しい」


「殿、そういう意味で言ったのではありませぬ」


「わかっておる。だが、決めた」


 そして上泉秀胤は仕方なく八上城の方へ向かった。父が世話になったお人の最期に供ができないのは気が引けるが命令ならば仕方がない。内藤修理は、寄居に向かって、


「動如雷霆: 動くこと雷霆の如し、敵に悟られるなよ」


 と言って準備にかかった。





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