4-0 嵐の前の静けさ
ラビットは、アリアーデとの鍛錬が終わり、修練場の控え室へと入った。
すでにハンスが控え室の椅子に座っており、足を組んで窓の外を眺めていた。
「見ておられたのなら、直接指導してあげてはいかがですか?」
「ラビット君。蕾のうちに手折ってしまっては、咲くものも咲かないでしょう? それに……強すぎる肥料は根を腐らせる」
「あなたの言うことはよくわかりません……」
「わからなくとも良いですよ。君は壊し甲斐がありませんし。今回は失敗したくありませんから」
「そうですか……」
ラビットは自室に戻って、アリアーデとの戦闘を思い出す。
療養が明けてからのアリアーデの強さは一段上がっていた。
この調子なら、すぐに私など軽く凌駕するだろう。
それでこそ、私の神になられるお方。
ハンスは私の事をつまらないと吐き捨てましたが、姫君は私の願いを叶えてくださるでしょうか……?
「待っていてください、母上、父上、レオナ。罪深い私は、神に裁かれなくてはいけないのです」
♢♢♢
リーンは、ラビットさんが最推しらしい。
レイがいない間、リーンは私のそばにずっといるので、うざいぐらい語ってくる。
特に今、勉強の息抜きに執務室で書き物をしている私にとっては、うるさくて仕方ない。
「ラビット様は家族を守れなかったんです! それで、ずっと塞ぎ込んでて……」
「はいはい、わかったからちょっと黙って」
それよりも、新しい魔法を開発できないか構想を練らないと。
魔力さえあれば、イメージでなんでも出来るこの世界で、私は前世の知識というアドバンテージがある。
時を止めるのは無理だけど、チートっぽい魔法は作れるはず。
紙に思いついた魔法を箇条書きで書いていく。
「もう……バトルのことばっかりじゃないですかぁ!」
「私が最強になれば、リーンも安心でしょ?」
ネックレススタンドにかかっている魔昌石を眺める。
まだ、ハンスからもらった虹色の魔昌石は解放できない。
「それ、どうしたんですか?」
「え? ストーリーじゃないの?」
このネックレスって、ハンスから貰えるイベントストーリーっぽいけど。
「……誰からですか?」
リーンは真顔で聞いてきた。
「誰だと思う?」
ちょっと面白くて、ニヤニヤしてしまう。
リーンは、口に手を当てて目を見開いた。
「いや、まさかそんな……虹色の魔昌石に魔法が込められるのは、ハンスしかいないですよね……?」
「まあ、そうだね」
ゲームでは存在しないネックレス、か……。
「なんのフラグなんですかぁ! それぇ!」
泣きそうになっているリーンが、私を揺さぶる。
「リーンが知らなかったら、私も知らないよ……」
どのみち、倒せなかったらゲームオーバーなんだし、考えててもしょうがないよ。
「よし、休憩終わり! 勉強するよ!」
焦っちゃだめ。
私なら、出来るんだから!




