表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/177

1-2 尾行しよう!

 皇族にはそれぞれ専用の館がある。

 ここ、アリアーデの館は三階建になっていて、レイたち使用人が暮らしているのは一階だ。


 そして、私たちは二階の遊戯室に移動する。

 ビリヤードや麻雀卓などが置いてあるこの部屋の壁には、ダーツの的が掛かっている。


 レイはダーツの矢を箱から三本出した。

 私は腕を組んで見守る。


 そして、的から離れた位置で、レイは一本ずつ投げた。

 ――的の中心に、全てのダーツの矢が刺さっていた。

 そんな……バカな。


「嘘だ……。もしや、世界記録保持者か何かか?」


 思わず心の声が漏れてしまった。 

 彼のフォームは無駄なく綺麗で、これはちょっとやそっとじゃ身につかないレベルだ。


 私も矢を受け取って投げてみる。

 当たりはするけど、さすがにレイほどは無理だ。

 勝負はもはや決まったも同然だった。


「では、お約束通り、一週間は館でお過ごしください」

 

 な……。

 矢を回収して片付けを始めたレイは、清々しいほどにいつも通りだった。

 もう少し勝ち誇ってはどうだろうか!?


 それに、なんで今まで実力を隠していたんだ!?

 いや、むしろなぜ今になって本気を出してきたか……。


 一週間もお出かけできないなんて、回遊魚を水槽に閉じ込める暴挙!!


「わかりました。よーくわかりました!」


 私を甘くみるんじゃない!

 とうとうこの優秀な執事の裏側を知る時が来たようだな……!

 レイの秘密を知るために、いざアマゾンの奥地へ……じゃなくて尾行すべきだね。

 人を知ればその心を知れる。

 心を知れば、ゲームに勝てる!!


 ――翌日。

 

 私は朝起きると共に寝室のバルコニーから抜け出して、レイの様子を伺おうと三階から一階へと飛び降りた。

 ふわっと魔法で着地する。

 階段なんて使っていたら見つかるからね。


 するとその直後、裏口からレイが出てきた。


「姫様、侍女が探しております」


 バレるの早っ!

 いや、さっき起きたばかりなのに探すも何もないでしょ。

 身支度すら整えてないよ。


「ちょっと館の周りを散歩するだけだよ……」


 靴も履いていないんだけどね。


「……朝食を食べてからにしてください」


 ごもっとも。


 ――朝食後。

 

 レイの後ろを物陰に隠れながら追っていく。

 レイは侍女に仕事を振りながら、業者に備品発注をしている。


 ……普通だ。

 時折耳のピアスに手を当てる時以外は普通すぎる。


 次にレイは、裏口で人と話し込んでいた。

 あれは……お父様の側近だ。


「お披露目会は大成功でしたね。陛下も喜んでおられました。レガリウス卿の選考会も人員が決まりましたので、一週間後に出立いたしますよ」


 ……一週間?

 つまりそれって、ハンスに会わせないために私を館に閉じ込めたってこと?

 え、なんで?

 私が遠征について行きそうだから?

 

「そうでしたか。姫様も興味を持たれていましたから、止めるのに一苦労いたしました」


「アリアーデ様は、レガリウス卿のようなお強い方に惹かれそうですよね」


 お父様の側近は笑顔でそう言った。


「…………何を、仰っているのですか?」


 空気が凍った。

 惹かれるって、何に?


「あっ……私は用事があるのを思い出しました……ははは!」


 お父様の側近との話が終わったレイは、踵を返した。

 急いで隠れる場所を変える。

 が、後ろから声をかけられた。


「姫様、そちらは今通ってはいけません」

 

 尾行がバレた!?


「な、何も見てないよ!」


「こちらへ」


 レイに手を引かれ、空き部屋に入った。

 レイはしきりに外を気にしている。


「どうしたの?」


「いえ、危険人物がおりましたので……」


 なんで私の館に危険人物がいるんだよ……。

 というか、もしかして尾行バレてなかった?


「姫様。ご用があるならおっしゃって下さい」


 ……バレてた。


「えっと……得意な魔法教えて欲しいなぁ?」


 タダでは転ばないぞ!

 ライバルの情報は重要なのだ。


 レイは少し間を空けて返事をした。

 

「……わかりました。」


 嫌そうだな……。

 やはり私に情報を渡すのは、例え主従関係であっても嫌なのかな……?


 それから館の中庭に移動して、早速レイから教えを受ける。

 

「私は物を強化する魔法が得意です。例えば……」


 そう言って、レイは近くにあった子供用スコップを持って魔力を込めた。

 スコップがキラキラと光っている。


「これをあの木に刺してみてください」


 スコップを渡された私は、恐る恐る木に刺してみた。


「え、やわらかい!!」


 まるでプリン……とまではいかないけど、包丁でキャベツを切るぐらいの感覚ではある。

 強化魔法すごすぎでは?


「あ、固くなっちゃった」


 スコップが抜けなくなってしまった。

 しばらくすると魔法が消えるみたいだった。


「この魔法の欠点は、魔力を注ぎ続けないと持続力がないことですね」


 私もスコップに魔力を込めてみる。

 キラキラと光が溢れたところで、そのまま木から引っこ抜いてみる。


「折れちゃった……」


 スコップは抜けずに、木に刺さった部分から柄が折れてしまった。


「スコップの耐久性の問題と魔力を込めすぎたのが原因ですね。物に魔力を込める時は、その物の許容量を見極める必要があります」


「なるほど!!」


 なかなかに奥が深そうだ!


 それから夕暮れまでずっと魔力を込める練習をしていたら、途中で止められた。


「魔力が枯渇すると命に関わります。今日はそれまでにしましょう」


 この世界では、魔力という自分の中にあるリソースが全てだ。魔力が無くなったら、どんな偉大な魔法使いだって動けなくなる。


「うん、わかった」


 レイは魔眼で、いつも私の魔力量のギリギリを見極めてくれていた。

 魔眼と言えば、たしか……レガリウスの一族が持っているんだっけ。

 ……あ、ハンスもレガリウスじゃん。


「レイもレガリウスの一族なの?」

「傍系です。血が薄いので、このように……片目だけ遺伝しました」

「いいなぁ……」


 オッドアイかっこいいし、魔力が見れたらかなり戦闘で有利を取れそう。

 

「私は……いえ、なんでもありません」


 レイの声色は震えていた。

 こう言う時はそっとしておく方がいいよね。

 人の事情に立ち入りすぎると友情崩壊するのはオンラインゲームで散々経験してきた。

 私は詳しいんだ。


「ハンスを倒したら、レイも元気になるかな……?」


 レイを悩ませる原因がハンスなら、強くなればそれでいいんじゃ?

 レイをちらっと見ると、固まっていた。


「そう、きましたか……」


 レイは顎に指をあてて考えている。


「姫様が、まず私を越えることができるのであれば……」


 ふむ?

 レイの戦うところ見たことないけど……。

 でも、レイを倒せないようじゃ、ハンスには届かないからね!


「じゃあ、レイと戦いたい!」


「では、訓練をいたしましょう」


 レイの声色がいつも通りに戻った。

 

 そしてレイは、流れるように懐からナイフを取り出して、こちらに渡してきた。

 まさかの近接戦闘!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ