間話 レイ・クレバンスの日記の一部
クレバンス伯爵家では、主人に仕えるために幼少期から特殊な訓練を受ける。
主人の趣味趣向を把握し、主人の望む結果を導く。
それがクレバンス伯爵家の家訓であり、誉である。
選考会で見た姫様の表情が、私を酷く苛んでいる。
ずっと姫様は戦いを求めていた。
それを知りながら、私は今日まで姫様を違う道へ導こうとしていた。
――クレバンス伯爵家一番の出来損ない。魔眼がなければ、姫様の執事になどなれなかった。(二重線で訂正してある)
強さを求めるということは、やがてレガリウスへと繋がってしまう。
彼が大陸最強であり続ける限り、それは変わらないでしょう。
時間稼ぎは、もう出来ないところまで来てしまいました。
ああ、私の技術は暗部から来ているというのに、姫様に教えてしまっても良いのでしょうか?
ですがそうする他、姫様を止める手段はありません。
なぜ……。
姫様の行動原理は、普通ではない。
私が仕えるようになった一歳の頃から、姫様はすでに自我を持ち、知識を得るために必死だった。
何かに飢え、満たされていないことはすぐにわかってしまった。
なぜ、よりにもよってレガリウスなのですか?
あれは一番ダメなものでしょう。
魔眼で見る姫様の魂は、今日も白く美しく輝いている。
このような魂は、未だかつて見たことがありません。
姫様は特別で、そして――無防備です。
ですから、私が姫様を守らなければ。
黒く、穢されないように。
……本日、皇帝より姫様宛に届いた晩餐会の招待状は、どう扱うべきでしょうか。
皇帝に選ばれた数名だけが参加を許される晩餐会。
皇位継承順位第二位、ハンス・レガリウスは必ず出席するはずです。
よりにもよって、今ですか……。




