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13-5 悩み相談

 登山が始まった。

 私、ドミニク、ルヴィア、グラン、タイニー。

 秘湯を目指して歩いている愉快な仲間たちは、私を含めて五名。

 まだ雪の残る山は気温が低い。


「ねぇ、まだ登るの……? ペグロックに乗っていい?」


 最初に脱落しそうなのは、ドミニクだった。

 そりゃそうだ。

 引きこもりに登山はきつい。


「ダメダメ、汗をかいてから入るのがいいんだよ?」


 ルヴィアが通な入り方をレクチャーしてくれている。


「グラン、ここの秘湯知ってたか?」


「いや、全く知らなかったぜ? 俺の情報網にかからないとは、なかなかやるな!」


 何気にグランは友達が多いし、いろんな情報を仕入れている。

 そんなグランに言われて、ルヴィアは得意げな顔をしていた。


「リンルードの人間は、まずその土地に温泉があるかどうかを気にするんだよねー」


 私はさっさと歩いていってしまう三人と、ドミニクを見比べる。


「ドミニク……おんぶしよっか?」


「それだけはやめて。僕にも一応プライドが……ちょっと魔力ちょうだい」


「はいはい」


 契約魔具から魔力が流れていく。

 身体強化魔法の魔具に、そのまま私の魔力が流用されている。

 

「なかなかの絶景だねぇ」


 街並みが遠くに見える。

 夕陽が落ちてきて、街がオレンジ色に染まっている。


「そんな余裕、ないんだけど……」


 ドミニクはちらっと振り返って景色を見ただけだった。


「引きこもりすぎだよ。たまには運動しないと」


「うるさいなぁ。今さら運動とか……」


 そういえば、前回リンルードで登山したときはドラゴンがいたなぁ。

 あの時はハンスが待ち伏せ……。

 いやいや、今回はいるわけないよ。


「ハンスがいたら面白いのになぁ……」


 あの人、遊ぶのは嫌いじゃないはず。いや、遊び方が独特というか……。

 むしろ、こういう時こそ現れるべきなのに。


「面白いって思うのはアリアだけだと思うけど……」


 うーん、おかしい。

 みんなで騒いで、楽しくすれば……この気持ちがなくなると思ったのに。

 ハンスの城で見つけてしまった私の孤独。

 これは私が解決しないといけないのに。

 

「どうしたら……盛り上がると思う?」


「そのテンションで聞くこと? 悩み相談なら乗るよ」


 あーもう、私らしくないな!


「走るよ!」


「え、ちょ……!」


 ドミニクを置いて走り出した私は、前の三人を追い抜かしていく。


「抜け駆けはさせねぇ!!」


 グランが追いかけてきた。


「ふははは! 一番風呂は私のものだ!!」


 一人称俺はもうやめだ!

 別に元から私は男っぽいんだから、言葉から入らなくても大丈夫だよ。


「おいおい、転ぶなよー」


「えー、俺も一番風呂入りたいんだけど」


 ルヴィアがしれっと針を飛ばしてきた。


「そんな攻撃に引っかかる私ではない! 最強とは私のこと!」


 契約魔具から出したナイフで針を弾いていく。


「あ、グランずるい!」


 ルヴィアと戦っているうちに抜かされた。


「ハハハ! 見えてきたぜ!」


 硫黄の匂いが立ち込めて、天然の岩肌に、湯気が立ち上っている。

 脱衣所や屋根なんかなく、広い岩場に温泉が沸いていた。


 グランは走りながら服を脱いで、飛び込もうとしている。


「ルヴィア、停戦! 入られるよ!」


「お湯の温度さぁ、熱いんだよねー」


 グランがジャンプして大きな水飛沫を上げながら温泉に入った。


「あっちぃ! 死ぬだろこれ!!」


 グランが魔法で水球を作り、お湯の中に沈めた。

 温泉から這い出て、火傷したっぽい体を治療魔法で治している。


「あはは! 飛び込んで入るやつが悪いよ?」


 ルヴィアは絶対確信犯だ。

 私も危なかった……。

 いや、マナー的に飛び込んでは入らないよ。

 ちゃんと掛け湯するから!


「はぁ、グランのやつ……。あいつ熱い湯苦手なんだよ」


 タイニーはやれやれと言いながら、手を入れてお湯の温度を確認している。


「奥の方に川の水と混ざった温度の低い湯があるから、手前のは温度下げすぎないでよねー」


 私も手を入れて温度を確認する。

 少し熱いぐらいで、ちょうど良さそう。


 パチンと指を鳴らしてタオル一枚になる。


「ねぇ、羞恥心とかないの?」


 目を細めたルヴィアが聞いてくる。


「チッチッチ。甘いね。私ともなれば、こういう状況に備えて新しい魔法を生み出してるんだよ」


 腰のタオルをばさっと取り、肩にひっかける。


「超健全空間、モヤモヤ魔法!!」


 局部をモヤモヤしたもので隠す魔法!!


「スゲェ!! 俺にもしてくれ!!」


 復活したグランが立ち上がった。


「実はみんなにもうかけてある」


 ふふんと胸を張る。


「俺はもう驚かねぇよ。ハンナ先生の相方なら、もうそうだよなぁ……」


 タイニーは自分のモヤモヤを見ながら、頷いている。


「あーあ、からかおうと思ったのにー」


 ルヴィアがため息をつきながら、服を脱ぎ始めた。


 ♢


 お湯に浸かっていると、ドミニクが遅れてやってきた。

 辺りはもう薄暗くなっていたので、魔法で明るく照らしてある。


「おつかれー」


「はぁ、もう、無理……」


 ドミニクは服を脱ぎ捨てて、温泉の中に入った。


「はー、生き返る……」


「ドミニク、俺が言った通りでしょ?」


 ルヴィアがドヤ顔で聞いている。


「確かに気持ちいいけど、もう二度とやらない。絶対明日に影響するから」


 ドミニクは目を閉じてお湯に浸かっている。


「アリアはいつその状態やめるのー?」


 ルヴィアが聞いてきた。


「いや、やめられたらやめるけど……」


 試しにパチンと指を鳴らしてみる。


「バカなの? 普通今試そうとする?」


「まだ満足してないのかな……アプローチの方法が間違ってる……?」


 戻る必要性がないのが問題なのかな。

 ……結婚するまでそういうことしないなら、女である必要がない?

 いや、そもそもハンナちゃんがいる時点で、私が女である必要すらない。


「あのさぁ……。ちゃんと恋愛しなよ」


 ドミニクが目を閉じたまま、呆れたように呟いた。


「恋バナする? といっても、これといって楽しい話はない気がする……」


「あいつ、まだ手を出してないわけ? どうなってんの?」


 ルヴィアまで呆れだした。


「うーん、大事にされてる?」


 それは多分いいことだと思う。


「はぁ。大事にされた結果アリアが男になったのなら、それはハンスのせいじゃない?」


「……考えてみればルヴィアも僕も、最初からアリアが男だったとしても、今の関係になれたと思うんだよね」


 ハンスとは……。

 もしかしたら、違うのかもしれない。


「少なくともハンスとは……どっちかが死ぬまで戦ってたと思う。それ以上の関係にはなれないかな」


「……だとしたら、今のアリアの悩みは恋愛だけじゃなさそうだね」


 さすがドミニク。

 分析にかけては一流だね。

 最初から相談すればよかった……?


「今までずっと前だけ見て走ってれば良かったからなぁ……」


「それこそ、ハンスに相談すればいいんじゃないのー?」


 ルヴィアはいつだって軽く言ってくる。

 なんて言えばいいのかな……。

 一緒に遊ぼうって?


「いやいや、絶対無理! 断られるよ!」


「……はぁ。僕はアリアのせいだと思うな」


「おーい! クランツェフト組ー、グランが限界だ。帰るぞー」


 温度の低い温泉の方にいた、グランとタイニーが帰ってきた。

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