13-3 レッツパーリータイム!!
男体化したまま学院生活を始めて数日。
最初こそ周囲もざわついていたが、私はもうすっかり楽しんでいた。
「みんなおはよう!」
キラキラのスマイルを振り撒きながら、学院の廊下を歩く。
女子生徒たちが私を見てカッコイイ! と指差している。
学院の制服を着た私は、お坊ちゃんから学院のカリスマへと正統進化を遂げていた。
これだよ! これこれ!
「かっこいい、頼り甲斐がある、強そう。これこそが男の三種の神器」
「……リア。最後の二つは誰も言っていませんよ」
ハンナちゃんが後ろをついてくる。
「ハンナ先生がいると、やり辛いんですけど……」
「何がですか?」
「いや……その……」
パーティしたい。タイニーとグランと馬鹿騒ぎしたい。
学食早食い競争とか、喧嘩とか、女の子のままじゃ絶対やりにくいこと。
……ハンスがいたら怒られるし、なんかはしゃいでるの見られるのは嫌だし。
「恥ずかしい……?」
「はぁ。男風呂には入れるのに、なぜ学院での振る舞いが恥ずかしいのですか……」
「え? だってハンナ先生には昔、わた……俺の体見られてるし、お風呂の時は寂し……じゃなくて、仲間はずれだった!」
レイとハンス、仲良くなってるし……。
というか、私の知らない間にハンスはみんなと仲良くなってるんだもん!!
「リアの羞恥心のズレは、今に始まったことではありませんでしたね……」
「あ、あんな魔法戦を私にしたのは、ハンナ先生だぁー!」
ハンスが私に記憶を戻してくれたおかげで、魔法戦の記憶が最近のことのように思い出せてしまう。
最初からおかしかったのかもしれないけど、あの頃から私の羞恥心は明らかにおかしくなったの!!
「それは戦闘のためであって……待ちなさい!」
私は走り出して、教室の中に入って扉を閉めた。
「おう、アリアーデ! こっちだぜ!」
「グランおはよ!」
私はグランの隣の席に座って腕を組む。
「またハンナ先生と喧嘩したのか? まぁ、お前が男になって、むしろ今の方がしっくりくるけどな」
タイニーが笑っている。
なるほど?
じゃあ、このままでも問題ないのかも。
「なぁ、今日は夜に肝試ししようぜ!」
「冬に肝試し……季節おかしくない?」
グランはいつも突拍子もないことを言ってくるけど、提案自体は面白そうなんだよなぁ。
「学院の七不思議のやつか? まー、たしかに見に行く価値はありそうだな」
「七不思議?」
何それ……。
「俺が知ってるのは、深夜に旧校舎の廊下を歩くと、名前を呼ばれるらしいぞ!? しかも答えると神隠しに遭うらしい!」
グランはドヤ顔で教えてくれた。
「え、こわ……」
「お前、もしかしてビビリか?」
タイニーがニヤリとしている。
「はぁ? ……転移系のトラップか、精神系の魔法でしょ?」
「お前……夢がないぞ! 頭が良いやつはこれだからダメなんだよ!」
グランがバカにしてきた。
「グランが馬鹿すぎなんだよ! 死霊系の魔物は人がいる街には出ないから!」
「……しかしなぁ。俺はもう七不思議の一つを体験してるんだよなぁ……」
タイニーが遠い目で語り出した。
「え、つまりこの話も信憑性があるって言いたいわけ?」
「可能性はある。そうだろ?」
……もしそうだとしたら、大事件でしょ。
過去のデータを調べて……。
「ああ。だから俺たちが調べに行くんだぜ!」
グランが気合いを入れている。
いや、本当に行くの……?
「お前ら、黙れー。ホームルーム始めるぞー」
いつのまにかトニー先生が疲れた顔でこちらを見ていた。
♢
ドミニクの授業が終わった後、ドミニクとルヴィアに昼食に誘われた。
「そういえばさ、ルヴィアの変身ってどうなってるの?」
食堂の席に座って、パスタを巻きながら尋ねる。
「え、俺のは体格と顔と声だけだから、アリアみたいに性別から変わってないよ?」
「性別変わろうなんて思うのは、アリアとハンスだけで十分でしょ……」
ドミニクが呆れてる。
「う、うるさいなぁ。……ハンスみたいに変わりたかったんだよ」
女の子のままじゃ、私はすぐハンスに甘えてしまう。
ハンスと同じ場所に立つなら、まずは意識から変わらないと。
「ねー、俺たち友達だよね?」
ルヴィアがニヤニヤしながら問いかけてきた。
「うん、まさしく友達。むしろ真の友達になれてる」
男女の友情は成立するかって聞かれたら、私は成立するって答えてた。
けど多分……そうは言い切れない時もあるんだと、今までの経験でわかった。
だから、男になった今なら胸を張って友達って言える。
「じゃあさー、みんなでこの島の秘湯に入りに行こー?」
「いいよ?」
この島に秘湯なんてあったとはね。
あー、ルヴィアはリンルード出身だから、温泉通なのかもしれない。
ルヴィアのニヤケ顔が凍りついた。
「え……」
「もうハンスとレイと入ったことあるしね」
まさかレガリウス城に、リンルードから温泉を運んできてたとは思わなかったけど……。
すると、ドミニクが突然笑い出した。
「ぶっあははは!! 待ってよ、その状況、僕も見たかったんだけど!」
よほどツボに入ったのか、ひーひー言ってる。
そんなに面白いかな?
「はぁー、アリアってば本当にわかってないなぁー」
ルヴィアは頬を膨らませて、少し怒っている。
「僕を笑い殺すつもりでしょ……。アリアの記憶がなくなった時のハンスも面白かったけど」
とても楽しそうにドミニクはニヤニヤしている。
「あ、ゲームの主人公してたハンスのこと教えてよ! 誰も教えてくれないんだけど!」
「誰もまだ死にたくないからね……」
ドミニクの勢いが収まった。
やっぱり本人から直接聞き出したほうがいいか……。
でもなぁ、対価がいるからなぁ……。
「じゃあ今日は、秘湯に入ったあとに肝試しかな」
「アリアさぁ、どこからそんな面白いイベント仕入れてくるの?」
ルヴィアがジト目で見てくる。
ふふん、いいだろう!
「アリアと友達で良かったよ。恋人だったら絶対死ぬ自信あるね」
ちらっとドミニクが遠くの席を見た。
ハンナちゃんが優雅に足を組んで座りながら、頭を押さえている。
まるで貧血の令嬢だ。
……心配かけてごめん、ハンス。
でも、ここでハンスに頼ってしまえば……結局私は……。
「ふふふ……将来のクランツェフトの皇帝ともなれば、面白イベントの一つや二つ仕入れることなど容易い……」
「ねぇ、俺たちこの人の下に入るんだよね? 下剋上していい?」
しれっとルヴィアが叛逆の兆しを見せている。
「僕はどっちにつこうかなぁ……」
「えっ、まずは血の粛清から始まる!?」
困る。
私のカリスマ性が足りてない!
「アリアの場合本当にありそうで怖いんだよね……」
ドミニクが悩んでいる。
暴力での支配はやっぱり良くないか……。
「仲良くしようよ! 友達でしょ!?」
GW連休で執筆ペースが狂っております!
もし今日投稿ないなぁって思われましたら、執筆中だと思っていただければ!!
この章、アリアの深層心理の深掘りなので、ちょっと書くのに時間かかってます……。
もう少し感情の架け橋を作りたい気持ちは、完結後の修正に託して今は走ります……!




