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13-1 ハンスの孤独の城

 レガリウス城一階にある温泉浴場にて、二人の男が話し合っていた。


「レイ。そろそろリアに対する領分を明らかにしておきましょうか」


「ハンス様。私は姫様の事ならば貴方様より知り尽くしております。今後もそれは変わることはありません」


 このお湯の源泉は、リンルード火山の温泉地からハンスが運んで来ているため、泉質は保証されている。


「リアの過去に介入する権限は、あなたにありませんよ」


「……姫様の行動原理の源泉を知らずして、従者は務まりません」


 ハンスが湯船の中で足を組む。

 レイは湯船の中で腕を組む。


「そもそも、私とリアが結ばれるのなら、私にもあなたに命令する権利が生まれると思いませんか?」


「いいえ。私への命令権は姫様にしかございません」


 ハンスはため息をついた。


「これからも無益な探り合いをする必要はないと思いますが……」


「でしたら、もう少しこちらを信用していただけますと助かります」


 今回の件でレイは、ハンスもアリアーデと同じくらい不器用なのだと知ってしまった。

 誰かが客観的に見ていないと、必ず暴走するのは明らかだった。


「……誠意は見せているつもりですよ」


「でしたら録画水晶をお返しください」


「嫌です」


 沈黙が流れる。

 張り詰めた空気が、場を支配する。

 お湯が流れる音と共に、引き戸が開けられる音がした。


 今この城には、三人の人間しかいないはずだった。


「名前、どうしようかな……まぁいっか」


 湯気の中から、知っているようで知らない低い声がした。


「まさか……」


「最悪ですね……」


 レイとハンスは、同時に頭を抱えた。


「ふはは! わた……俺の名前はアリアーデだ! 男体化に成功したぞ!」


 腰にタオルを巻いた男体化アリアーデが現れた。


「これでわた……俺もみんなの仲間入り!」


 そのまま湯船に勢いよく入ろうとしたアリアーデは、ピタっと止まった。

 それから踵を返し、体を洗い始めた。

 

「律儀ですね……」


「姫様は……変わりませんね」


 濁り湯のため、下半身を隠す必要はない。

 いや、問題はそこではないかもしれない。


「はい、おしまい」


 体を洗い終えたアリアーデが戻ってきた。

 アリアーデが湯船に入る時、二人ともなんとなく他所を向いた。


「何の話で盛り上がってたか、当ててみよう! ……え、お通夜テンション?」


 アリアーデが二人を見比べている。

 湯船の真ん中を陣取っていたハンス。

 端にいたレイ。

 その中間に位置するアリアーデは、考え込んだ。


「……なぜ男性になれたのですか? あなたの知識では不可能でしょう」


 ハンスは覚悟を決めてアリアーデの方を向いた。


「あー……えっと……」


 アリアーデはあからさまに動揺している。

 ハンスは目を細めた。


「もしかして、私の未発表の論文を読みましたか?」


 びくっと肩を跳ねたアリアーデは、あからさまに笑った。


「あはは! そ、そんなわけ! ……ハンスの文字綺麗だったなぁ」


 ぶくぶくとアリアーデは沈んでいった。


「ハンス様、危険な論文なのですか?」


「私の研究は、魔法をどう通すかに重きを置いています。リア、聞いているのでしょう? レイに説明してください」


 顔を出したアリアーデが、渋々話し出した。


「魔法は想像が全てだけど、実際には祈りと願いも関係してて……普通なら通らないけど、ちょっと色々工夫して無理やり通すやり方がありまして……」


 アリアーデはちらっとハンスの表情を確認した。

 そしてまた沈んでいったかに見せかけて、ざばっと顔を出した。


「いや、すごいんだよ!? ここまで思慮深い考察と、この世界に対する熱意と探究心が詰まってて、ページをめくる手が止まらないの! 興奮して夜も眠れないぐらい!」


「姫様、それは……良かったですね」


 レイは遠い目をしている。


「それで、どうして男体化に辿り着くのですか……」


 呆れながらも、ハンスはアリアーデに近づいて体を調べ始めた。


「だって、私も一緒にお風呂入りたかったし、遊びたかったし、男同士のあの馬鹿騒ぎを体験したかったし……わっ」


「レイ、筋肉量はやはりリアのものだと思いますか? 少し細いので不完全かもしれませんね」


 ハンスはアリアーデの腕を持ち上げて二の腕を摘んだ。


「見たところ、元の姫様と変わりありません。おそらく体重もそれほど変わらないかと」


「く、くすぐったいから!」


「これは……身体機能に違和感はありますか?」


 問われたアリアーデは、何のことかわかっていない。


「違和感……?」


「……下半身の構造が変化しているか、確認しましたか?」


 アリアーデは目を見開いて、今思い出したかのように声を上げた。

 

「あ! たしかに!!」


「……たしかに? 何が……」


 ハンスが聞く前に、アリアーデはその瞬間、湯船の中に手を入れて確認し始めた。


「ある!!」


 レイは顔に手を当てて、長くため息をついている。


「……形だけ補完されたのか、それとも機能面まで整合が取れているのかで、この世界の原理が見えてきますが……」


 ハンスは真面目な顔をして考察し始めた。


「ハンス様それだけはどうか……やめてください」


 レイは、ハンスからアリアーデを守るように腕を伸ばした。


「まぁいいです。あとで反省文と共に身体機能の状態を報告してください」


 ハンスはそう言って立ち上がった。


「長湯しすぎましたね」


「ひゃあ!!」


 アリアーデが叫んだ。


「姫様!」

 

 レイがアリアーデの目元を覆うより先に、ハンスが立ち上がってしまったのだ。


「ああ……失念していました」


 ハンスはタオルを腰に巻く。

 そしてアリアーデを見て、ハッとした。


「……いや、待ってください。リアの男体化が解けていないのはどういうことですか? いつものリアなら、その心理状態では姿を維持できないでしょう」


 ハンスは明らかに動揺しているアリアーデを見て、事態の深刻さを理解し始めていた。


「ハンス様、それは……どういうことですか?」


「リア、変身を解けますか?」


 レイがタオルをアリアーデにかけた。


「あれ……?」


 アリアーデは目を閉じて、いつものように指をパチンと鳴らした。


「え? 戻らないんだけど……」


はい。アリアーデ突然のTS新章始まりました!

ナンデ!?

……みなさんはどんな予感がしていますか?

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