【後編】第九十六話 継承者の拳
ミルフィーは瞬時にバンの目の前に現れ鋭い一撃を入れる。
「うぐ……!」
バンの表情が険しくなり苦しそうに歯を食いしばる。
「かなりの力だな。だが……!」
バンは、すぐさま反撃の一撃を繰り出すがミルフィーはそれをかわした。
「私の力は、こんなもんじゃないわ」
ミルフィーは瞬時に反撃する。
「惜しいな」
バンはミルフィーの一撃を受け止め反撃した。
その一撃がミルフィーのみぞおちに直撃する。
「……!」
ミルフィーは無表情無言のまま回し蹴りを放ち、バンの側頭を強打した。
「やる……な……!」
バンが滑るように後方へ押し出されながら声を絞り出す。
「さっきの一撃、少しは痛かったけど……ほとんどノーダメージね」
ミルフィーが見下すように言った。
「それは、こちらとて同じ事。どうやらお互いほとんど本気を出していないようだ」
バンが構えを変えると禍々しい漆黒のオーラが全身から溢れ出す。
「お互い、少しは本気を出そうじゃないか」
「お姉ちゃん……怖いよ……」
その光景を離れた場所で見ているミルキィが泣きながら呟いた。
「心配いらないわ。こんな時どうするか――私の中のスターナイツの記憶が教えてくれる」
ミルフィーも構えを変えると紫色のオーラを全身に纏う。
やがて、オーラはリボンのような形となり彼女の周りを漂い始めた。
「私のリボンのオーラは宇宙の闇を払い消滅させるわ」
「ほぼ互角といったところか」
バンは動じる事なくミルフィー目掛けて鋭い拳を放つ。
「速いわね……!」
ミルフィーは少し驚きながらも、その一撃をかわす。だが、すぐさま二発目が襲いかかった。
「……!」
ミルフィーは、それを間一髪でかわしリボンオーラを操りバンの体を締め付けた。
そのまま別のリボンオーラを操作しバンを強打する。
「ぐ……!厄介な技だ!」
バンは苛立ちを滲ませミルフィーを睨みつけた。
なおもミルフィーのリボンオーラによる攻撃は続き、バンを強打し続ける。
「調子に乗るのも、そこまでだ!」
バンが叫ぶと漆黒のオーラは濃さを増し、リボンの拘束を振り払い目にも止まらぬ速さでミルフィーの腹部に蹴りを入れ、勢いよく吹き飛ばした。
「く……流石ね……!」
ミルフィーは腹部を押さえながら構え直す。
だが背後からもう一撃食らってしまう。瞬時にバンが背後に回り込んでいたのだ。
「凄いスピードだわ」
ミルフィーは歯を食いしばりながら体勢を立て直す。しかし既に目の前にバンが迫っていた。
ミルフィーは、すぐさまバンの拳を振り払いカウンターを入れるが受け止められてしまう。
だが、
「惜しかったわね」
ミルフィーが口元を緩ませ、受け止められた拳から高濃度のエネルギーが凝縮された光弾を放ち、至近距離でバンに命中させ吹き飛ばす。
「……!!」
バンは、すぐさま体勢を立て直し――
「どうやら、お前の力は我の予想を超えているようだ。だが我はまだ一段階の力を残している」
「奇遇ね。私もよ」
ミルフィーは動じる事なく答えた。
「やはりそうか、お互い隠さず本気の戦いをしようではないか」
バンがそう言うと、漆黒のオーラが彼を包み、正確な実体など存在しないかのような、輪郭の無いおぞましい影のような存在へと変貌した。
「凄まじい力ね……」
ミルフィーは少し圧倒されながらも、同じくリボンのオーラを、より強く濃く練り上げた。
――瞬間、二人の姿は消え激しい衝撃が巻き起こる。
「うわあ! お姉ちゃーーーん!!」
星の残骸に隠れていたミルキィが泣き叫ぶ。
衝撃が消えると、ユラユラと浮かぶバンの姿と片腕を押さえるミルフィーの姿があった。
「力なら負けてない……だけど、実体のない相手に攻撃が通用しない……!」
ミルフィーはバンに攻撃を直撃させていた。
だが、まるで実体がないかのようなバンの体には、ダメージが入っていなかった。
「我は不死身。お前が、いかに絶大な力を持とうが我は倒せん」
バンの声が静かに響いた。
その刹那――
バンは光すら追い抜くかのような速度でミルフィーに一撃を叩き込む。
「……うっ!」
ミルフィーが苦しそうに呻きを上げた。
超大質量ブラックホールの力、そして継いだ記憶と経験による絶大な力と、宇宙の意志になろうとする絶望の力がぶつかりあう。




