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【前編】第九十五話 継がれる心

「ああ……。スター……ナイツ……」

 離れて見ていたミルフィーが不安そうに呼びかける。


「安心してよ。君達は必ず俺達が守るから」

ウルヴァがミルフィーに語りかけた。


「だから安全な所へ逃げてくれ……! 君達も宇宙も必ず守ろう!」

ヴァーラがよろけながらも笑顔でミルフィーに語る。


「うう……スターナイツ、死なないで……!」

幼い姿のミルフィーが涙ぐみながら二人を見つめていた。


「ぐああああ!!」

その直後、二人を巨大な光弾が襲った。


「お前らに宇宙は守れない。勝つのは我だからだ」

バンが二人を掴み持ち上げる。


直後、強烈な一撃が入り叫び声をあげる事もなく二人はその場に倒れた。


(まずい……バンが、これほどまでとは……これでは手も足も出ない……このままでは宇宙の未来が……)


薄れる意識の中、二人は消えない闘志を滲ませていた。


「消えろ、目障りなスターナイツよ」

バンの掌に高濃度のエネルギーが凝縮された玉が形成される。


「がはっ……! スターナイツを……なめるなぁ!!」

声を振り絞ると、二人は必死に立ち上がり構えを取った。


「悪あがきはやめろ、終わりだ!」

バンの一撃が放たれる。


(ここまでなのか……!?)

迫る光弾を二人は静かに睨みつけた。


その時――目の前に一人の少女が立ちふさがった。



「二人を……いじめないで!!」


 バシン!!


勢いよく音を立てて光弾をかき消したのは

――幼いミルフィーだった。


「貴様、なんだ、その力は?」

バンが興味深そうに問う。


「う……凄く痛い……!」

ミルフィーは痺れる手を見つめて苦しそうに呟いた。


「す、凄い力だ……これがブラックホールの戦士なのか!」

ウルヴァが驚く。


「だが……あの子の力は、まだ目覚めていない。戦闘経験も知識もない。今の一撃が精一杯だ……!」

ヴァーラが冷や汗をかきながら心配そうに呟いた。


「せめて……あと数年だけ時間があったら、ミルフィーが俺達を遥かに超える戦士になれたのに……そうすればバンだって……!」

震える拳を握りしめウルヴァが呟く。


「そうか、ブラックホールの力の権化か。厄介だな」

バンの顔がミルフィーに向く。そしてミルフィー目掛けて光弾を放った。


「危ない!」

飛び出したヴァーラが、突き飛ばすようにミルフィーの小さな体を庇った直後――鼓膜を破るかのような轟音と共に閃光が炸裂した。


「あ、ああ……。スターナイツ……!?」

もうもうと立ち込める煙の中、ミルフィーが震える声で呼びかける。


「大丈夫。何があっても守るから、ね? だから安心してよ」

煙が晴れると、優しく微笑むヴァーラの姿があった。だが何かがおかしい。彼の体に明らかな異変が起きていた。


「スターナイツの腕が……!?」

ミルフィーの瞳から大粒の涙が溢れ出した。


ヴァーラの左腕――肩から先が先程の光弾で真っ黒に変色し、チリチリと火花を散らしていたのだ。


「こんなのなんて事ない。必ず守るから安心して……」

ヴァーラが喋り終わるより前に追撃の光弾が直撃する。


ズボッ!!


「ぐっ……!!」

更に追撃の光弾がヴァーラを貫く。


「ヴァーラ!!」

ウルヴァが悲痛な叫びを上げて飛び出した。


渾身の力を込めた拳をバンに叩き込む。

だがバンはその拳はかわし、掌をウルヴァの腹部へ向ける。


ドゴオオオン!!


ゼロ距離からの光弾。


「……ぅぐ!」

 声にならない呻きを上げ倒れ伏すウルヴァ。


「ちきしょう……宇宙を守護する最強の戦士が……こんな……」

ウルヴァは薄れる意識の中、必死に体勢を立て直そうと立ち上がる。


「まだ……だ……!」

虚ろな表情のままバンに向き直った。


「お前達は終わりだ。楽になれ」

バンが冷徹に言い放つ。


「お姉ちゃん……」

幼いミルキィが、ミルフィーの服を引っ張って泣いている。


「そんな……」

ミルフィーも涙を流す。


「君達が生まれて初めて見るものが、こんな光景なんて……あんまりだよね……」

ヴァーラは今にも事切れそうになりながらも、笑顔を絶やさずミルフィーに語りかけた。


「ごめんね……でも……スターナイツは必ず君達を守るよ……」


その後ろでは同じく今にも倒れそうなウルヴァが、バンの攻撃を必死に耐えていた。


だがその姿は時間の問題だった。


「スターナイツはね……心で戦うんだ……肉体は消えても、その意思は消えない……」

ヴァーラが苦しそうに語る。


「俺達を超える戦士を育てる方法が一つだけある。スターナイツの最後の秘技を使う!」

ウルヴァが叫んだ。


「僕達の記憶も、経験も……。心も……。全て、君に託そう……。」


二人は精一杯の笑顔で語る。


「そうすれば君は僕らを超える最強の戦士になる……その力で……宇宙と……君の妹を……」


その言葉を涙を流しながらミルフィーが聞いている。


「こんな託すような事をして申し訳ない……。だが僕らは君の心の中で、君の力の一部として守り続ける」

ウルヴァとヴァーラから淡い光が溢れ出す。


「不甲斐なく思うだろ……ごめんね……でも……これでアイツを……怖い奴を消せるから……」

二人は淡い光の玉となりミルフィーに吸収されていく。


その瞬間ミルフィーを中心に、激しい光が迸る。


「なにをしたのだ」

バンが光を睨む。


やがて光が収まると、そこには見た目十八歳ほどの黒髪の少女が立っていた。


「……あなた達の意思、全て理解したわ」

ミルフィーは目を伏せながら呟いた。


その心に様々な情景、想いの全てが流れ込み、彼女は瞬時にそれを理解していた。


それはスターナイツ二人の心


 俺が皆を守る!

 良かった。この星が無事で。

 銀河の平和を乱す者は倒した。

 皆、無事か!?

 はは、俺達スターナイツは君等を見捨てない。

 く……手強い相手だ……。

 なあ、面白い星を見つけたんだ。

 お、おいしっかりしろ!

 くそ……この銀河を守れなかったのか……。

 この銀河には手出しさせない!


時には笑い、時には守り、そして時には守りきれなかったスターナイツの記憶。


そのどれもが温かな心の記憶だった。


そして同時に二人のスターナイツの知識、経験の全てをも受け継いでいた。


「余裕そうだな」

バンの光弾がミルフィーに放たれる。


その光弾を、ミルフィーは目を伏せたまま片手で払い、消し飛ばした。


「貴様……流石はブラックホールの力の権化といったところか」


「いえ、私は、そんなものではないわ」

ミルフィーは目を開けると、自分の手を見つめながら語る。


「宇宙最強の二人の意思を継いだ――たった一人の存在」

ミルフィーは、スッと構えを取る。


「ほう……」

バンも構えを取った。


「超戦士スターナイツよ」

静かに語るミルフィーの鋭い瞳がバンを貫いた。

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